ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした

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第四章

団体戦決勝4

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「この……小娘が!」

 蹴り飛ばされたルビウスが怒って炎を飛ばす。
 レッドドラゴンあるルビウスは別にブレス以外でも炎の魔法が使える。

「赤いヒカリは過激だな」

 初めてルビウスを見るカエデには、ルビウスが赤いヒカリというぐらいに見えている。
 ほんわかとしたヒカリと違って、赤い姿のルビウスは割と激し目な感じがしていた。

「くらえ!」

 ルビウスが雨のように火球を降り注がせる。

「うおりゃー!」

 火球の間を縫うように飛んでヒカリがメイリンに迫る。
 魔力を込めて伸ばした爪でメイリンを狙う。

「ふおっ! そう何度もやられないのだ!」

 過去何度も頭を叩かれて撃墜されてきた。
 飛んでくる体勢やヒカリの体格の大きさの都合上、ヒカリの頭を狙うのは当然のことである。

 ヒカリも頭を狙われることを理解しているので、メイリンの剣をかわして飛び上がる。

「やーなのだー!」

 飛び上がったヒカリは尻尾で火球を掴んでメイリンに投げ飛ばす。
 少し予想外の攻撃。

 メイリンは驚きつつも剣でヒカリが投げ飛ばした火球を叩き落として、ルビウスが放った火球は回避する。

「はぁっ!」

 トモナリが炎をまとった剣を振り下ろす。
 炎が斬撃となって放たれてメイリンに襲いかかった。

「‘熱い攻撃だね’」

 メイリンは剣をクロスさせて炎の斬撃を防ぐ。
 トモナリ、ヒカリ、ルビウスがそれぞれ別方向から攻めてもメイリンは揺らがない。

 やはり今の状態で勝つのは厳しそうである。
 それでも魔法が近くを通ればアーティファクトの防御は勝手に発動して、ほんの少し魔力が削れるという効果があることをトモナリは知っている。

 たとえ倒せずとも今後の戦いを少しでも有利にしてやるつもりであった。

「‘なかなか面白いね。まだだけど……もっと強くなれば……うん。いいね’」

 メイリンは目を細めて笑う。

「‘ねえ、賭けをしない?’」

「‘なんだと?’」

 トモナリたちはメイリンを囲むようにして次の攻撃を狙っていた。
 メイリンはスッと剣を下ろすとトモナリたちにだけ聞こえるぐらいの声で話しかけてきた。

「‘次の一撃をあなたが受けきったら負けてあげる。その代わり……’」

「‘その代わり……?’」

「‘あとで私にちょっと付き合って’」

 メイリンは妖艶な笑みを浮かべる。

「‘俺が受けきれなかったら?’」

「‘私の方であとで付き合ってもらうよ’」

 どちらにせよ何か話があるようだ。
 このまま攻め続けても勝てる感じはなく、メイリンの気まぐれ一つで勝負は決まる。

 ならば賭けに乗っかってみるのも悪くないかもしれない。

「‘やってみようか’」

「‘うん、そういうところもいいね’」

「ヒカリ、ルビウス、こっち来い!」

「何をするのか……」

「むふー! やったるのだ!」

 トモナリはヒカリとルビウスを呼び寄せる。

「‘じゃあ……’」

 メイリンが剣から手を離す。
 けれども剣は落ちずに空中に浮いていた。

「‘いくよ?’」

「‘こい!’」

 メイリンが指を二本立てて剣を操る。

「……本当に勝たせてくれる気があるのか?」

 メイリンの魔力が込められて青い剣がうっすらと光る。
 魔力だけでなく、殺気も感じる。

 防ぎきれなきゃそのまま死んでしまいそうだ。

「‘えいっ’」

 メイリンがトモナリに指を向けると青い剣が撃ち出された。

「ヒカリ、ルビウス!」

「うむ!」

「ドラゴンのブレスをとくと見よ!」

 ヒカリとルビウスが同時にブレスを放つ。
 二つの火炎のブレスが渦を巻いて混ざり合い、青い剣と衝突する。

「全力でいくぞ!」

 トモナリはありったけの魔力を剣に込める。
 剣から炎が噴き出してトモナリはひりつくような熱に包まれる。

「ぶわっ!」

「くっ……やはりこのちんまりボディでは力が出きらんか!」

 青い剣がブレスを突き破る。

「おりゃああああああっ!」

 大きく体をねじって力を溜め、大きく一歩を踏み出しながら剣を振り上げる。
 炎が噴き出すルビウスと、メイリンの青い剣がぶつかり合う。

「ふっ……ぐぅ!」

 剣に込められた力の大きさにトモナリは顔を歪める。
 全力で剣を振り上げているのにわずかにトモナリの方が押されている。

 ルビウスもまた剣の中に戻ってトモナリの魔力の消費を軽減する。

「ここで僕なのだ!」

 トモナリがピンチ。
 ヒカリは一度距離を取って勢いをつけて青い剣に飛び蹴りをかました。

「どりゃあー!」

 トモナリの力に、ヒカリによる横からの衝撃が加わった。

「‘危ない!’」
 
 二人の攻撃に弾かれた青い剣はトモナリから逸れて観客席に飛んでいった。
 剣が飛んでいった先はアメリカの覚醒者たちが固まっているところだった。

 動いたのはトーマス・ルドン。
 観客席を飛び出して、青い剣に向かって拳を振るう。

 素手なのにまるで硬いもの同士がぶつかったような音がして、青い剣が勢いを失って押し返された。

「‘どうだ’」

「‘君の勝ち’」

 気づくとトモナリの目の前にメイリンがいた。

「‘あとでね。チュッ’」

 トモナリの胸ぐらを掴んで顔を寄せたメイリンは耳元でささやくと、そのままトモナリの頬にキスをした。
 そしてトモナリの剣を自分の脇腹に押し当てる。

 パリンとバリアが割れる音がして、メイリンはトモナリにウインクする。

「‘……しょ、勝者アイゼントモナリとヒカリ’」

 何が起きたのか誰も分からなかった。
 しかしメイリンのアーティファクトのバリアが割れてしまった。

 審判はひとまずトモナリの勝利を宣言する。
 軽く鼻歌を歌いながらメイリンはステージを降りる。

 中国チームの覚醒者たちがメイリンに向かって色々と言っているけれど、メイリンは何も気にしていないように水分補給をしている。

「……ぬおっ!」

「うおぅ!? ヒカリ! 何すんだ!」

「あいつトモナリにキスしたのだ! レロレロレロ!」

「なーめーるーなー!」

 遠目で見ると何をしていたのか分かりにくいが、ヒカリはメイリンが頬にキスをしたことをバッチリ見ていた。
 ヒカリは怒って、あんなもの打ち消してやるとトモナリの頬を舐める。

「トモナリは僕のだ!」

「別に頬にキスされたぐらいだって」

 多少ドキッとしたことは否めないが、海外に行けば挨拶がわりなんてところもある。
 ざらりとした舌で舐められて若干ヒリヒリする頬をトモナリは拭う。

「……勝った、のか?」

 ちょっとした物言いはついたものの、アーティファクトが効果を失った方が負けというルールである。
 トモナリのアーティファクトはまだ効果を保っていたので、そのままトモナリの勝利が決定したのであった。
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