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忍び寄る悪意
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「くそ、しまった。ハードは家に置いとくべきだった。」
青山健太は目の前で起こった出来事に歯ぎしりした。HDDが持ち去られたことで、犯人の顔も2人の記憶にしか残らない。ダンボールの中のカメラには気がつかなかったようだが、すでに録画は出来ずライブ映像のみだ。
「川上、今の奴の顔覚えたか。向かいのビルにの人間に違いない。」
川上奈々美はこくん、と頷いたが言葉はなかった。衝撃を受けたのだろう。胸に手を当て、一つ深呼吸すると、ようやく落ち着いたらしい。
「あー、びっくりしましたね。カメラのことばれてたんですかね。」
「そうなんだろうな。ウチのビルには遮熱ガラスなんてないし、カタログの間に置いてるのが向かいから見えたのかもしれない。」
「でも。」
と奈々美が切り出す。
「どうやってウチの支店に入ってきたんでしょうか。」
健太もはっと気付く。支店の正面は夜9時に自動的にシャッターゲートが下りる。従業員入口にはカードキーシステムがあるため、カードを持つ社員しか入れないはずなのだ。
何らかの方法で侵入したか、誰かが手引きしたか。
「侵入はないと思いますよ。警備会社の防犯カメラがあるし、ほら、このカメラの映像にも異常なさそうでしょ。」
「じゃあウチの社員の誰かが招き入れたってこになるぞ。」
「そうなりますよね。」
嫌な気配がじわりじわりと足元に忍び寄ってくる。
興奮と怒りが落ち着くと、途端に言いようのない不安が健太の頭に広がり出した。
「もし、社員が入れたとしたら。設置したのが俺だって、知られたかもな。」
奈々美の顔にも緊張が走る。
「やばい、ハードを解析されたらここにも辿り着く。川上、カメラは諦めよう。今すぐアンインストールするんだ。」
手遅れかもしれないが、このままアプリを入れっぱなしにしておくよりましだ。たった2日でカメラを失ってしまったが仕方がない。
「遅くなったな、送ろう。」
健太が立ち上がろうとすると、奈々美にシャツを掴まれた。
「怖いんで、泊めてもらってもいいですか。」
奈々美は俯いたまま、そう言った。
「いや、それは...。」
と言いかけて止めた。社内に内通者がいるなら、奈々美も危険に晒される可能性がある。何より奴らが外で活動する時間帯だ。
「その方がいい。朝早くに送るよ。」
「良かった、ありがとうございます。」
健太は寝室からジャージを取り出してきて、奈々美に渡した。
「大っきいと思うけど。ちゃんと洗濯してるから心配すんな。」
「あ、大丈夫です。持ってきてるんで。」
そう言うと奈々美は自分のバッグを引っ張り出した。
「お部屋借りますね。」
まさか、最初からそのつもりだったのか?健太は首を捻った。
スウェット姿で出てきた奈々美に熱い柚茶を手渡す。
「これ飲んで寝よう。寝室使っていいよ。」
「すいません、わたしのせいで。」
柚茶に口をつけて奈々美が詫びた。
「何言ってんだよ。どっちが悪いとかないだろ。」
「ありがとう。」
「もう寝ろ。肌に悪いぞ。」
健太がそう言うと奈々美はくすっと笑って、寝室に入っていった。
ソファに横になって布団を被る。目を閉じると良からぬ想像が頭をもたげ、なかなか寝付けない。足元に纏わりついた嫌な気配が少しづつ体を侵食してくるような、そんな感覚に陥っていた。
青山健太は目の前で起こった出来事に歯ぎしりした。HDDが持ち去られたことで、犯人の顔も2人の記憶にしか残らない。ダンボールの中のカメラには気がつかなかったようだが、すでに録画は出来ずライブ映像のみだ。
「川上、今の奴の顔覚えたか。向かいのビルにの人間に違いない。」
川上奈々美はこくん、と頷いたが言葉はなかった。衝撃を受けたのだろう。胸に手を当て、一つ深呼吸すると、ようやく落ち着いたらしい。
「あー、びっくりしましたね。カメラのことばれてたんですかね。」
「そうなんだろうな。ウチのビルには遮熱ガラスなんてないし、カタログの間に置いてるのが向かいから見えたのかもしれない。」
「でも。」
と奈々美が切り出す。
「どうやってウチの支店に入ってきたんでしょうか。」
健太もはっと気付く。支店の正面は夜9時に自動的にシャッターゲートが下りる。従業員入口にはカードキーシステムがあるため、カードを持つ社員しか入れないはずなのだ。
何らかの方法で侵入したか、誰かが手引きしたか。
「侵入はないと思いますよ。警備会社の防犯カメラがあるし、ほら、このカメラの映像にも異常なさそうでしょ。」
「じゃあウチの社員の誰かが招き入れたってこになるぞ。」
「そうなりますよね。」
嫌な気配がじわりじわりと足元に忍び寄ってくる。
興奮と怒りが落ち着くと、途端に言いようのない不安が健太の頭に広がり出した。
「もし、社員が入れたとしたら。設置したのが俺だって、知られたかもな。」
奈々美の顔にも緊張が走る。
「やばい、ハードを解析されたらここにも辿り着く。川上、カメラは諦めよう。今すぐアンインストールするんだ。」
手遅れかもしれないが、このままアプリを入れっぱなしにしておくよりましだ。たった2日でカメラを失ってしまったが仕方がない。
「遅くなったな、送ろう。」
健太が立ち上がろうとすると、奈々美にシャツを掴まれた。
「怖いんで、泊めてもらってもいいですか。」
奈々美は俯いたまま、そう言った。
「いや、それは...。」
と言いかけて止めた。社内に内通者がいるなら、奈々美も危険に晒される可能性がある。何より奴らが外で活動する時間帯だ。
「その方がいい。朝早くに送るよ。」
「良かった、ありがとうございます。」
健太は寝室からジャージを取り出してきて、奈々美に渡した。
「大っきいと思うけど。ちゃんと洗濯してるから心配すんな。」
「あ、大丈夫です。持ってきてるんで。」
そう言うと奈々美は自分のバッグを引っ張り出した。
「お部屋借りますね。」
まさか、最初からそのつもりだったのか?健太は首を捻った。
スウェット姿で出てきた奈々美に熱い柚茶を手渡す。
「これ飲んで寝よう。寝室使っていいよ。」
「すいません、わたしのせいで。」
柚茶に口をつけて奈々美が詫びた。
「何言ってんだよ。どっちが悪いとかないだろ。」
「ありがとう。」
「もう寝ろ。肌に悪いぞ。」
健太がそう言うと奈々美はくすっと笑って、寝室に入っていった。
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