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健太の家にココアはない。
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JR駅前は再開発の真っ只中で、至るところで道路の拡張や解体工事、新築工事が行われている。そのせいで、夜は特に県都中心にもかかわらず街灯の少ない寂れた風景に見える。少し離れた場所に私鉄の駅があり、利用客はそちらの方が多い。家路を急ぐ人影も少なかった。再開発エリアを抜けた住宅地内に川上奈々美のマンションはあった。
「着替えて来るんで、ちょっと待ってて下さい。」
青山健太にそう告げると、奈々美はオートロックを解除してエントランスに入って行った。
「ずっと1人でアイツ寂しくないんかな。」
車外でタバコを燻らせながら、健太はぽつりと呟いた。地方出身の奈々美は大学進学で都会に出て、地元に戻ることなく社会人生活を始めた。もちろん帰省はするのだろうが、親元を離れて7年になるはずた。
ここ2年、新卒が続かないため今も奈々美が一番下だ。気配りができて、笑顔も絶やさない。抱えてる闇はないのだろうか。健太はマンションを見上げながら、そんなことを考えていた。
「お待たせしました。」
奈々美がマンションからラフな格好で戻ってきた。手には両手で持つほどの大きさのバッグ。
「何持ってきたの?」
「女の子は色々必要なんですよ。」
後部座席に奈々美のバッグを置いて、車は走り出した。ここから健太のマンションまでは30分ほどの距離がある。途中、夕食を済ませて家に着く頃には10時を回っていた。
「マンションなんてどこも似たようなもんだろ。適当に座ってて。」
きょろきょろと部屋中を見回す奈々美に健太が声を掛ける。
「結構綺麗にしてるんですね。」
「来るって言うから片付けたんだよ。コーヒーでいいか。」
コーヒーメーカーをセットしながら、キッチンから声をかける。
「ココアがいい。」
「ないよ。」
ローテーブルにカップとソーサーを置いて、ノートパソコンを立ち上げる。窓際に設置した防犯カメラは健太の読み通り、照度に問題はなくはっきりと向かいのビルを捉えていた。
「録画、見てみる?カーソル合わせてドラッグすると、ほら。早送り。」
健太はマウスを奈々美に渡し、ソファに座る奈々美の後ろから画面を見る。やはり日中は人も車輌も出入りはない。ところが、昨晩の11時25分まで進んだところで、1台の車輌がシャッターの中に消えた。奈々美が一時停止して振り返る。健太はマウスを受け取って少し巻き戻し、車輌の側面が映るシーンで画面を拡大した。
大型トラックの車体のどこにも社名は入っていなかった。
「ね、言ったとおりでしょ。」
奈々美が得意げに言う。事故を起こした大型車もここが目的地だったのか。健太は頷くほかなかった。さらに時間を進めていくと、2時間後にトラックが出て行き、深夜3時を過ぎて通用口から人が出てきた。この建物への出入りが確認できた最初の人間だ。スーツを纏ったサラリーマン風の男は駅方面へ歩いて画面から消えた。
「あんな時間に何してたのかな。」
奈々美がもっともな疑問を口にする。この男は出た時と同じように手ぶらで30分ほどでビルに戻ってきた。これ以降、今に至るまでビルに出入りした者は3人。いずれも深夜でトラックの出入りはなかった。画面をライブ映像に戻し、健太はイスに座った。
「いよいよこれは怪しいな。」
「みんな夜中に出たり入ったりって、中に住んでるんですかね?」
「ビルに生活設備が整っているとしたら、暮らせるよな。で、トラックは資材だけじゃなく食料も運んでるとか。」
健太は思いついたことを口にした。
「ネットに出てた人体実験とか。」
「真顔で言うなよ、オレそういうの苦手なんだよ。」
奈々美はさも良いこと聞いた、とでも言わんばかりに、へー。と言う。
いつの間にか日付が変わろうとしている。健太は時計を目をやってから言った。
「そろそろ送ろう。」
「ねぇ、青山さん...。」
さっきまでと違って怯えるような声で奈々美が呼んだ。
「これ。。」
奈々美のタブレットはダンボールからのライブ映像だ。
「誰だよ、これ。」
画面の中に見知らぬ男が現れ、おもむろに窓際に近づいたかと思うと、カメラの電源を抜いた。その瞬間、ノートパソコンにエラーの表示が出る。ブラインドを上げ、防犯カメラとHDDを持っていたボストンバックに入れ、戻って行く。振り返りざまに顔が見えたが、まったく知らない人物だった。
「着替えて来るんで、ちょっと待ってて下さい。」
青山健太にそう告げると、奈々美はオートロックを解除してエントランスに入って行った。
「ずっと1人でアイツ寂しくないんかな。」
車外でタバコを燻らせながら、健太はぽつりと呟いた。地方出身の奈々美は大学進学で都会に出て、地元に戻ることなく社会人生活を始めた。もちろん帰省はするのだろうが、親元を離れて7年になるはずた。
ここ2年、新卒が続かないため今も奈々美が一番下だ。気配りができて、笑顔も絶やさない。抱えてる闇はないのだろうか。健太はマンションを見上げながら、そんなことを考えていた。
「お待たせしました。」
奈々美がマンションからラフな格好で戻ってきた。手には両手で持つほどの大きさのバッグ。
「何持ってきたの?」
「女の子は色々必要なんですよ。」
後部座席に奈々美のバッグを置いて、車は走り出した。ここから健太のマンションまでは30分ほどの距離がある。途中、夕食を済ませて家に着く頃には10時を回っていた。
「マンションなんてどこも似たようなもんだろ。適当に座ってて。」
きょろきょろと部屋中を見回す奈々美に健太が声を掛ける。
「結構綺麗にしてるんですね。」
「来るって言うから片付けたんだよ。コーヒーでいいか。」
コーヒーメーカーをセットしながら、キッチンから声をかける。
「ココアがいい。」
「ないよ。」
ローテーブルにカップとソーサーを置いて、ノートパソコンを立ち上げる。窓際に設置した防犯カメラは健太の読み通り、照度に問題はなくはっきりと向かいのビルを捉えていた。
「録画、見てみる?カーソル合わせてドラッグすると、ほら。早送り。」
健太はマウスを奈々美に渡し、ソファに座る奈々美の後ろから画面を見る。やはり日中は人も車輌も出入りはない。ところが、昨晩の11時25分まで進んだところで、1台の車輌がシャッターの中に消えた。奈々美が一時停止して振り返る。健太はマウスを受け取って少し巻き戻し、車輌の側面が映るシーンで画面を拡大した。
大型トラックの車体のどこにも社名は入っていなかった。
「ね、言ったとおりでしょ。」
奈々美が得意げに言う。事故を起こした大型車もここが目的地だったのか。健太は頷くほかなかった。さらに時間を進めていくと、2時間後にトラックが出て行き、深夜3時を過ぎて通用口から人が出てきた。この建物への出入りが確認できた最初の人間だ。スーツを纏ったサラリーマン風の男は駅方面へ歩いて画面から消えた。
「あんな時間に何してたのかな。」
奈々美がもっともな疑問を口にする。この男は出た時と同じように手ぶらで30分ほどでビルに戻ってきた。これ以降、今に至るまでビルに出入りした者は3人。いずれも深夜でトラックの出入りはなかった。画面をライブ映像に戻し、健太はイスに座った。
「いよいよこれは怪しいな。」
「みんな夜中に出たり入ったりって、中に住んでるんですかね?」
「ビルに生活設備が整っているとしたら、暮らせるよな。で、トラックは資材だけじゃなく食料も運んでるとか。」
健太は思いついたことを口にした。
「ネットに出てた人体実験とか。」
「真顔で言うなよ、オレそういうの苦手なんだよ。」
奈々美はさも良いこと聞いた、とでも言わんばかりに、へー。と言う。
いつの間にか日付が変わろうとしている。健太は時計を目をやってから言った。
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「これ。。」
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「誰だよ、これ。」
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