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生き返らせる魔法
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何かアウルの様子がおかしい気がする、とジャスが思ったのは、帰りの汽車の中でだった。
何がおかしいのかはわからない。
相変わらずアウルはうっとりと汽車の窓から線路の音やらを堪能している。
「どうだった?大魔法使いの魔法は?」
クロウはアウルを邪魔しないように小声でジャスに話しかける。
「なんかわかんなかったけど、すごかった。てか、やっぱり、死者をも蘇らせる大魔法使いって、本当だよな?」
ジャスの言葉に、アウルは少し考えて答える。
「んー、まあ、結果はそうなっちゃってるけどね。あれは死者を蘇らせてるわけではないから」
「結果はそうなってる?って?」
「んー、例えば、魔法で水を出すとしたらね。アウルは魔力が強いから、魔力で無から水を作り出せる。でも俺なんかは魔力がそんな強くないから、無から何かを作り出せない。川から水を瞬間移動させたり、大気中の水蒸気を集めたりして水を出してる」
「わかるようなわからないような……」
「ま、つまりやり方が違うんだよ。生き返らせる魔法なんて誰も使えない。でもアウルは別の魔法がうまく使えるから、結果生き返らせる事ができてるんだ」
話が難しくなってきてジャスは頭を抱えた。
「えっと。つまり、アウルは何の魔法を……?」
「時間だ」
アウルが突然二人の会話に入ってきた。
「時間?え、もう着く時間?」
「違う。さっきの話だ。俺は時間を操るのが得意だ」
アウルはジャスに説明するように言った。クロウは尋ねる。
「あれ?もう車窓堪能はいいの?」
「勝手にテメェが俺の秘密を暴露してくれてるからな」
「別に秘密じゃないでしょ?」
「まあな。ベラベラ喋るもんでもねぇだろ」
「だって、これから長い付き合いになるんだから教えておかなきゃ」
「俺が自分で教えるつもりだったんだよ」
アウルは少し口を尖らす。
「あら、ごめんね。アウルはちゃんと説明しない子だからつい」
「うるせぇな」
「あの、続き教えてもらってもいい?時間を操るって?」
ジャスは催促する。ジャスの催促に少し機嫌良くなったようなアウルは自慢げな顔をして説明した。
「俺は時間を戻したり、逆に進めたりすることができる。これができる魔法使いはごく僅かだ」
「へえ」
素直にジャスは感心する。確かにそれはすごそうだということは、魔法に詳しくないジャスでもわかる。
「てことは、そうか、さっきの御神木も、雷に打たれる前に戻したのか!」
「ああ、そうだ。単に時間戻してるだけだから、あの木が雷に打たれる前から、病気だったり腐ってたりしてんなら断るつもりだった。雷前に戻したって、腐ってんのが治るわけじゃねぇからな。すぐまた腐って折れるんじゃ意味ねぇ」
「腐る前に戻すのは?」
「んなもん、何年前から腐ってんのか分からねぇものはやらねえ」
「それに付け加えるとね、」
クロウはアウルの説明に割って入ってきた。
「ごく僅かの、時間を操れる魔法使いも、無機物の時間を操るのはできるんだけど、生き物の時間を操るの事ができるのは、俺の知る限りではアウルだけだよ」
「やっぱり違うの?」
「ああ、無機物の時間を戻すのなんて大した事はない」
「大した事ないって言えるのはアウルくらいだけど……」
クロウが苦笑いを浮かべるが、アウルは気にせずに続ける。
「生き物は面倒せぇ。特に植物、動物、人間の順でだんだん魔力の消費がでけえ」
「消費?」
「ああ、今回は植物だったし、数日時間を戻すだけで良かったから魔法が…」
「ストップ!アウル!」
クロウが突然止める。
「誰が聞いてるかわからないんだから、ここからはもう少し小さい声で!」
「あ、ああ悪い」
アウルは珍しく素直に頷く。そして小声になる。
「今回は、魔法が3日間、使えなくなるくらいで済んだ」
「えっ!」
ジャスは思わず声を上げる。
その時初めて違和感の正体に気がついた。
荷物を軽くする魔法をかけたのはクロウだった。あと、御神木を生き返らせてから一度も魔法で襟首を引きずられていない。
「まるっきり使えないんだ?」
「まあ、魔力がすっからかんになくなってるわけじゃねぇがな。ほぼ無い状態だ」
魔法が使えない魔法使い。これは、何かチャンスなのではないか?今なら対等に、誘惑の魔法を解いてもらう交渉ができるのでは?魔法で攻撃されてくることも無いし、どうにかして脅したりなんかもできるのでは?ジャスはそう思ってドキドキした。どうすればいいか頭を働かせ始めた時、ふと、クロウと目があった。
クロウは、全てを見透かしたような目をしてジャスに微笑んでいる。
「アウルが魔法を使えない時にね、色々面倒が起こる時に対処出来るように、その間いつも俺が付き添ってるんだよ」
「え?」
ジャスの働かせた頭が、一瞬にして止まった。クロウが側にいるなら、対等に交渉もクソもないだろう。
「あー、そうなんだ~」
「そうそう、アウルが魔法使えないなら今がチャンス、って思って小賢しい事考える人も結構いるからね」
クロウの言葉にジャスは思わず目をそらす。
そうこうしているうちに汽車はアウルの家の近くの駅に着いた。
何がおかしいのかはわからない。
相変わらずアウルはうっとりと汽車の窓から線路の音やらを堪能している。
「どうだった?大魔法使いの魔法は?」
クロウはアウルを邪魔しないように小声でジャスに話しかける。
「なんかわかんなかったけど、すごかった。てか、やっぱり、死者をも蘇らせる大魔法使いって、本当だよな?」
ジャスの言葉に、アウルは少し考えて答える。
「んー、まあ、結果はそうなっちゃってるけどね。あれは死者を蘇らせてるわけではないから」
「結果はそうなってる?って?」
「んー、例えば、魔法で水を出すとしたらね。アウルは魔力が強いから、魔力で無から水を作り出せる。でも俺なんかは魔力がそんな強くないから、無から何かを作り出せない。川から水を瞬間移動させたり、大気中の水蒸気を集めたりして水を出してる」
「わかるようなわからないような……」
「ま、つまりやり方が違うんだよ。生き返らせる魔法なんて誰も使えない。でもアウルは別の魔法がうまく使えるから、結果生き返らせる事ができてるんだ」
話が難しくなってきてジャスは頭を抱えた。
「えっと。つまり、アウルは何の魔法を……?」
「時間だ」
アウルが突然二人の会話に入ってきた。
「時間?え、もう着く時間?」
「違う。さっきの話だ。俺は時間を操るのが得意だ」
アウルはジャスに説明するように言った。クロウは尋ねる。
「あれ?もう車窓堪能はいいの?」
「勝手にテメェが俺の秘密を暴露してくれてるからな」
「別に秘密じゃないでしょ?」
「まあな。ベラベラ喋るもんでもねぇだろ」
「だって、これから長い付き合いになるんだから教えておかなきゃ」
「俺が自分で教えるつもりだったんだよ」
アウルは少し口を尖らす。
「あら、ごめんね。アウルはちゃんと説明しない子だからつい」
「うるせぇな」
「あの、続き教えてもらってもいい?時間を操るって?」
ジャスは催促する。ジャスの催促に少し機嫌良くなったようなアウルは自慢げな顔をして説明した。
「俺は時間を戻したり、逆に進めたりすることができる。これができる魔法使いはごく僅かだ」
「へえ」
素直にジャスは感心する。確かにそれはすごそうだということは、魔法に詳しくないジャスでもわかる。
「てことは、そうか、さっきの御神木も、雷に打たれる前に戻したのか!」
「ああ、そうだ。単に時間戻してるだけだから、あの木が雷に打たれる前から、病気だったり腐ってたりしてんなら断るつもりだった。雷前に戻したって、腐ってんのが治るわけじゃねぇからな。すぐまた腐って折れるんじゃ意味ねぇ」
「腐る前に戻すのは?」
「んなもん、何年前から腐ってんのか分からねぇものはやらねえ」
「それに付け加えるとね、」
クロウはアウルの説明に割って入ってきた。
「ごく僅かの、時間を操れる魔法使いも、無機物の時間を操るのはできるんだけど、生き物の時間を操るの事ができるのは、俺の知る限りではアウルだけだよ」
「やっぱり違うの?」
「ああ、無機物の時間を戻すのなんて大した事はない」
「大した事ないって言えるのはアウルくらいだけど……」
クロウが苦笑いを浮かべるが、アウルは気にせずに続ける。
「生き物は面倒せぇ。特に植物、動物、人間の順でだんだん魔力の消費がでけえ」
「消費?」
「ああ、今回は植物だったし、数日時間を戻すだけで良かったから魔法が…」
「ストップ!アウル!」
クロウが突然止める。
「誰が聞いてるかわからないんだから、ここからはもう少し小さい声で!」
「あ、ああ悪い」
アウルは珍しく素直に頷く。そして小声になる。
「今回は、魔法が3日間、使えなくなるくらいで済んだ」
「えっ!」
ジャスは思わず声を上げる。
その時初めて違和感の正体に気がついた。
荷物を軽くする魔法をかけたのはクロウだった。あと、御神木を生き返らせてから一度も魔法で襟首を引きずられていない。
「まるっきり使えないんだ?」
「まあ、魔力がすっからかんになくなってるわけじゃねぇがな。ほぼ無い状態だ」
魔法が使えない魔法使い。これは、何かチャンスなのではないか?今なら対等に、誘惑の魔法を解いてもらう交渉ができるのでは?魔法で攻撃されてくることも無いし、どうにかして脅したりなんかもできるのでは?ジャスはそう思ってドキドキした。どうすればいいか頭を働かせ始めた時、ふと、クロウと目があった。
クロウは、全てを見透かしたような目をしてジャスに微笑んでいる。
「アウルが魔法を使えない時にね、色々面倒が起こる時に対処出来るように、その間いつも俺が付き添ってるんだよ」
「え?」
ジャスの働かせた頭が、一瞬にして止まった。クロウが側にいるなら、対等に交渉もクソもないだろう。
「あー、そうなんだ~」
「そうそう、アウルが魔法使えないなら今がチャンス、って思って小賢しい事考える人も結構いるからね」
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そうこうしているうちに汽車はアウルの家の近くの駅に着いた。
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