媚薬魔法の優しい使い方

りりぃこ

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解呪はする

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次の日、ジャスはアウルのところへ戻る支度をした。

「ちょっとまた行ってくる。森の奥の村でとてもいい薬屋を見つけたから、修行させて貰いに行ってくるよ」

両親にはそう適当な嘘をついた。



家を出ると、昨日のマリカとの約束通りシバの家へ向かう。

マリカは沢山の粉薬を用意してくれていた。

「遠くに持っていくなら水薬より粉の方が保存も効くしいいわよね。ジャスには説明不要よね。痛み止めとか化膿止めとか、咳止めとか色々あるから」

「ありがとう」

「でもさ、よく考えたら、魔法使いの所に行くなら、こんな私達が使ってるような薬なんてもしかしていらないかな?魔法で全部直せちゃうでしょ」

マリカはふと寂しそうに言った。しかしジャスは大きく首を横に振った。

「まさか。絶対使うよ」

体の調子が悪いときにアウルの世話になるなんてまっぴらだ、とジャスは思った。



「ああ、ジャスもう出かけるのか」

シバが家の奥から顔をだしてきた。

「とりあえず気をつけて行くんだよ。マリカもずっと気にしてたから……ん?マリカ?」

 シバがふとマリカの異変に気づく。 マリカの目がトロンとしている。しかし、先日見た誘惑の魔法とはなんだか違うようだ。 

「どうした?マリカ?大丈夫か」 

シバがマリカを優しく揺さぶる。 ふと、マリカが口を開いた。 

『テメエが、マリカの婚約者か』 

「は?」

 シバは、突然マリカから発せられた乱暴な言葉遣いにキョトンした。

 『心配すんな。必ずジャスはマリカの魔法を解いて戻ってくる。迷惑をかけていて申し訳ない』

 「もしかしてこれは……大魔法使い?」 

シバは、ジャスに同意を求めるようにたずねる。

 「確かに、言い方はアウルだけど……」 

ジャスは困惑しながらも一応肯定する。 

『マリカの解呪はする。ただ今は事情があって解呪できない。だからとりあえずジャスに薬を持たせた』 

マリカから発せられるその言葉に、シバは、パッと顔を輝かせていた。 

「本当か?本当なんだな?」 

『ああ』 

そう短く言うと、マリカはトロンとした目を閉じてパタンと倒れ込んだ。

シバが慌てて支える。

 ジャスはその様子を見て、何も言わず、眉間にシワを寄せたままだった。 

「ジャス?」 

シバに声をかけられ、はっとジャスは顔を上げた。 

「どうしたの?なんか暗い顔してるけど」

 「あ、いや。びっくりしただけ。アイツ、マリカに魔法かけて喋らせるなんて」 

「ああ、驚いた」 

シバは、そう言いながらマリカを抱きしめた。

 「でも言ってくれた。ちゃんとマリカを解呪してくれるって。なあ、聞いただろ?」

 嬉しそうに言うシバに、ジャスは慌てて笑顔を作って言った。 

「うん、そうだね。僕もすぐ戻ってくるよ」

 「待ってる。ちゃんと戻ってくるのを」

 シバは、マリカを抱えながら、にっこりとジャスに微笑んだ。



 村を背にジャスはまたアウルの住む森へ向って出発した。 

道中あの魔法について考える。

 あの、マリカに魔法をかけて言った言葉のおかげで、シバのジャスに対する心配が無くなったのは嬉しい事だ。ただ……。

 「アウルじゃない」 

あの言葉はアウルの言葉じゃない、と確信していた。 

「くっそ」 

あの言葉に救われた反面、イライラが募る。 ジャスはなるべくゆっくりと道を歩いていった。

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