媚薬魔法の優しい使い方

りりぃこ

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ジャスの三日間③

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 次の日、ジャスは家で父の調剤の手伝いをしていた。薬草を洗ったり擦ったりしてかなり忙しかった。

 しばらくして休憩がてらマリカの様子を見に、シバの家に向かってみた。



「あー、ジャス!」

 明るい顔のマリカがジャスを出迎えた。

「マリカ、元気そうだね」

「ええ。シバ呼んでくる?庭で仕事してるみたいだけど」

「ん、いいよ、マリカの様子見に来ただけだし」

「そう。ジャスにも凄く心配かけちゃったみたいだね。あんまりボーッとしてて覚えてないんだけど」

 マリカはペロッと舌を出す。

「なんか魔法使いに誘惑されちゃったんだっけ?私なんかをねー。物好きもいるものねー」

 自嘲気味にマリカは笑ってみせる。



「マリカは素敵だよ。女性の趣味だけは大魔法使いと趣味が合いそうだよ」

「シバ!」

 マリカの後ろからシバが現れた。マリカの顔が真っ赤になった。

「仕事は?」

「休憩だよ。ジャスいらっしゃい。一緒にお茶にしようか」

 シバに言われてジャスは頷いた。



「調子いいみたいだね、マリカ」

「ああ。ジャスのおかげだよ」

 シバはジャスに丁寧に頭を下げる

「少し心にゆとりが出来た。焦らず方法を探っていこうと思う」

「ああー。でも、方法探すのは僕に任せてよ。シバは姉の事をよろしく頼むから」

 事も無げにジャスは言ったが、シバは苦い顔をした。

「ジャスだけに負担をかけるわけにはいかないだろう」

「負担をかけちゃってるのはこっちの方だよ。僕らの両親にだって無神経な事言われただろう」

「それは大丈夫だ。魔法にかけられているだけで本心でないことは分かっているからな」

「でも」

「マリカの事を負担に思った事なんてない」

 シバは真剣に言う。

「一人で抱え込まないでくれ。俺はマリカだけでなくジャスの事だって大切だ」

 シバの言葉に、ジャスはフウとため息をついた。シバはそういう人だ。



「わかった。でもさ、実際僕は大魔法使いアウルに会ってるんだよ。アウルに頼んで解呪してもらうのが一番手っ取り早いだろ?」

「それはそうだが……、というかジャス、まさかまた大魔法使いの所に行くつもりなのか」

「そうだよ」

 ジャスの返事にシバは困惑したような顔を浮かべた。

「危険じゃないか」

「大丈夫、実際薬をもらってこれたでしょ」

 ジャスはニッコリして見せる。シバは黙り込んだ。そして暫く何も言わなかったが、突然お茶を一気に飲み干して頭を抱えた。

「シ、シバ?大丈夫?」

「いや、葛藤しているだけだ」

 シバは泣きそうな顔をしている。

「ジャスに危険な手段を取ってほしくない。大魔法使いの所に行かないほうがいい、とは思っているんだ。でも一方で、身勝手にも、行ってほしい、なんとか解呪をしてもらってきて欲しいとも思っているんだ」

「別におかしくないよ」

 慰めるようにジャスが言うと、はっと思いついた様にシバが顔を上げた。

「そうだ!俺が大魔法使いの所に行こう。地図を書いてくれ」

「それはやめておいた方がいい!」

 思わずジャスは大きな声を上げた。

「いや、危ないとかそういうやつじゃなくて……凄くややこしくなる」

「ややこしい?」

「まあとにかく、大丈夫だから。それに約束してるんだよ、また戻るって。大魔法使いとの約束破る方が危険だよ」

 ジャスの言葉にシバは渋々納得したようだ。



 二人ががお茶を終え、またジャスが調剤作業しに家に戻ろうとした時、マリカに呼び止められた。

「待ってジャス」

「何?」

「さっきの話……今度はいつ行ってしまうの?」

 さっきの二人の会話を聞いていたらしいマリカが、心配そうに尋ねた。

「えっと、明日かな?」

「もう?もう明日には行ってしまうの?」

「うん、あ、でもまたすぐ帰ってくるよ」

 多分、と心の中で付け加える。

 マリカは悲しそうに下を向いた。

「無理してない?」

「してないしてない」

 ジャスは笑ってみせる。マリカはため息をついた。

「自分でどうにかできたらいいんだけどね。愛の奇跡で解呪できちゃったりなんかしたりして」

「そんな簡単に奇跡がおきればね」

「そうかー愛の力は無力かぁー」

 マリカは笑ってみせた。そしてジャスの手を取り、力強く言った。

「明日、行く前に絶対会いに来てね。私、いっぱいお薬作って持たせてあげるから。それくらいはさせてね」

「分かった」

 ジャスはマリカの頭を撫でた。

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