媚薬魔法の優しい使い方

りりぃこ

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酩酊

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狭え。

そう思いながらアウルは目を覚ました。まだ外は薄っすら暗い。

怖くて何日もまともに寝ていないことを黙っていたジャスに、猛烈に腹が立って思わずベットに連れ込んでしまったが、やはり狭い。

アウルは身体を起こして、そっと隣に寝ているジャスを見る。

「ちゃんと寝れんじゃねえか」

そう呟いた時だった。

「うわぁぁぁ!!」

ジャスが突然叫びだした。目は閉じられたままだ。

「お、おいっ!どうした!」

アウルは慌ててジャスを揺り起こす。

汗びっしょりでカッと目を開いたジャスは、ガバっとアウルの両腕を掴んだ。

「はっ!はぁはぁ……」

大きく荒い息をしている。

「どうした」

ジャスは、アウルの言葉ではっと覚醒したような表情を浮かべる。しかしすぐにまた、真っ青になって震え声で呟く。

「ァ、アウルが……」

息を整えるように何度も深呼吸するジャスの体は、カタカタと震えていた。

「あのときの夢でも見たのか。パイソンの」

アウルの問に、小さくジャスは頷く。

「アウルが、アウルが、死ぬんだ。いつも」

いつも、こんな悪夢を見ているのか。アウルは思わず舌打ちをした。

「俺がパイソンに殺されるわけがねえ」

「でも、だって何度も死ぬんだ」

そう言いながら、ジャスの震えは酷くなる。少し錯乱状態になっているようだ。


魔法が使えたら。

精神を安定させるような魔法はいくらでもある。強制的に安眠させるような魔法もある。

でも今は何も使えない。あと2日もすれば魔法が使えるようになるのに。

ならば。


「おい、顔を上げろ」

アウルは、震えたままで汗びっしょりのジャスの頭をグッと掴んで、強制的に顔を上げさせた。

そして、ゆっくりと、深いキスをした。

キスをされたジャスは、少し驚いたようだったが、いつものような嫌な顔をしてはいなかった。

アウルは、驚いた表情のまま固まっているジャスの心臓付近を少し触って確認する。

「まだ震えてんな」

そう言ってもう一度深いキスをする。

さっきより頬が赤く、ぼんやりとした表情になったジャスが「何だよ」と一言呟いた。

「心配すんな。契とは関係無えし、今は、契するつもりでやってんじゃねぇ。
何度も言ってんだろ。魔法使いのキスは、酩酊魔法が含まれている。酩酊しちまえば怖いのも少しはマシになるだろ」

アウルはそう言ってから、ジャスの顔色を見る。

「まだ、怖いか」

「怖い」

そうジャスは短く答えると、アウルに抱きつくように覆いかぶさった。

そして、自らアウルにキスをした。

「もっと」

何度も何度も。

「怖い。まだ怖い。寝れなくて辛かった」

そう泣きながらキスを続けた。

その間、アウルは何をするでもなく、黙ってされるがままになっていた。抱きしめ返すことは決してしなかった。


そのうち、力尽きたようにジャスは眠りこんだ。


ほんのり窓辺は明るくなっていた。

「ったく。ここまでなる前に言えってぇの。日中は平気そうなツラしといて、面倒くせえやつめ」

アウルは身体を伸ばして、狭いベットから這い出た。

「怖がらせて悪かったな」

そう呟くと、ジャスの頭をそっと撫でた。

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