媚薬魔法の優しい使い方

りりぃこ

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泣きそうな顔

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 アウルはふと、体の痛みに目を覚ました。

 目を覚ました、目を開けることができたということは、クロウが顔を上手く修復してくれたのだと気づいた。

 魔力を大量に使う魔法は苦手だろうに。自分がもう少し上手く出来たらここまでにはならなかった。さすがに今回は後でクロウに謝らないと、とため息をついた。


 何年前だったかなんて覚えていない。ある国の人間達がたくさんの犠牲を払って、苦労して暗殺出来た独裁者を、アウルは生き返らせた。

 あの人間達が1番アウルを憎んでおり、1番厄介だった。

 今回、アウルの目を奪ったのも彼らだった。

 生き返らせた事を後悔はしていない。それが仕事だ。

 ただ、今になって、もう少し上手くで来たのではないか、と後悔する。

 守る者が無かったあの頃。自分の強さを信じ切っていたあの頃。



 ふと、アウルは、部屋の中で自分以外の呼吸音が聞こえてくるのに気づいた。

 ふと、部屋の中をぐるりと見渡すと、ベットの側の床でジャスがコロンと眠っているのが見えた。

「寝て……るな」

 アウルは無意識にホッとしていた。

 酷い怪我をしたのは自分でも自覚している。こんな姿を見せたら、また怖い思いをさせるのでは無いかと思った。でも今回はちゃんと眠れているようだ。

 せっかく、もう怖い思いをさせないように行動したというのに、逆効果では目玉一つくれてやった意味がない。

 アウルが軽く体を動かして寝返りを打とうとした小さな物音で、ジャスはバッと目を覚まして起き上がった。

「あ、おきた?そろそろ痛み止め切れる頃かなって思って待ってたんだけど、寝ちゃってたよ」

 そう言って、ジャスは、まだ体が上手く動かないアウルの口に手早く痛み止めを流し込んだ。一切の優しさのない流れ作業に、アウルは思わずむせこんだ。

「よし、飲んだな」

 ジャスはアウルが薬を飲んだのを確認すると、水を抱えてサッサと部屋を去ろうとした。

「おい、待てよ」

 アウルが呼び止め、いつものように襟首を魔法で引っぱられる。

 ぐえ、と唸ってジャスはベットの横に引きずられてきた。

「くそ、もう万全かよ」

「万全じゃなくてもこれくらい出来る」

 アウルはベットの横に転がったジャスを見下ろしながら言った。

「テメェ何で拘束解いてやがる」

「今更?」

 ジャスは呆れたように言った。

「どうでもいいだろ。もう」

「まあ、そうだな」

 アウルはあっさり同意した。


 しばらくの間、アウルのジャスの間に沈黙が訪れた。

 先に口を開いたのはアウルだった。


「何で、逃げなかった」

「え」

「荷物見つけて、結界も解いて。何で逃げなかった」

「そう、思うなら、何で結界解いたんだよ」

「あんまり考えて無かった。あと、クロウの奴が泣きそうな顔してたからな」

「まあ、僕も。クロウが泣きそうな顔してたからかな」

 ジャスはそう肩をすくめて答える。

「そうか、じゃあアイツのせいで逃げ遅れたか」

 そう言ってアウルは少し笑う。

 ジャスは立ち上がってまた立ち去ろうとした。

「じゃ、僕はもうあっちで寝るから」

「おい待てよ。何でそんな急いで行こうとしてんだよ」

「いや、だって」

「逃げんのか。今はやめておけ。俺が完治してからにしろ」

「いやそんなメチャクチャな」

 ジャスは呆れたようにため息をついた。そして少しアウルから離れる。

 少し体が離れたジャスに、アウルは顔をしかめ、そしてふと何かに気づいた。

「………おい、テメェ顔見せろ」

 アウルは無理矢理ジャスの顔を掴んだ。

「何すんだよ!」

 ジャスは口調こそキレていたが、さすがに怪我人相手だからか、強く抵抗することはしなかった。

「テメェ、ちょっと酩酊状態になってんな」

「離せよ」

 ジャスは頭を強く引いてアウルから急いで離れる。
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