媚薬魔法の優しい使い方

りりぃこ

文字の大きさ
93 / 114

キノコ

しおりを挟む
 それから数日がたった。

 アウルが200歳になるまであと一週間ほどだ。

「まあ、本当にギリギリになったら催眠かけて寝ている間にやるからな」

 アウルはそう宣言していて余裕だ。



 アウルはその日、コーヒーのストックを作っていた。

 しかし家の様子に違和感を感じた。

「おい、ジャス手伝え」

 アウルに呼ばれて、掃除をしていたジャスが台所へやってきた。

「なんだよ」

「火の出が悪い。水も少ししかでねえ」

 そう言ってアウルは魔法で火を出してみせた。蝋燭の火のような小さなものしか出てこない。

「魔法の調子悪いのか?じゃあ僕がいつも使ってるみたいに釜戸使ったり水道管使えばいいんじゃないか?」

 そう言ってジャスは手早く燐寸を取り出した。

「まあ、それもそうなんだが」

 アウルは不審そうな顔を浮かべている。

「どうしたの?なんか心配事?」

「家にかけた魔法が、薄くなっているのかもしれねえ」

「はあ」

 ジャスは首を傾げた。

「ちょっと体調悪いとか?」

「いや、テメェ掃除してるときに何か怪しいもん見なかったか?」

「怪しいもん?」

「呪いの痕跡とか」

「いや、僕見てもわかんないし」

 ジャスはそう答えながらもすこし考え込んだ。

「まあ変わったところは無かったと思うけど。ただ別に隅々まで掃除してるわけじゃないからなぁ。例えば、その台所の引き出しのとこなんて、ごちゃごちゃもの置きすぎて、手を付けたくなくて」

 そう言いながらジャスは台所の足元の引き出しを開けた。

「な、何だこれ」

 ジャスは思わず悲鳴を上げかけた。引き出しの中から、気持ち悪い色のキノコがたくさん生えているのが見えたからだ。

「うわ、これ、いつの間に生えてたんだろ。気持ち悪い。早く取り除いたほうがいいね」

 ジャスがキノコに手を伸ばした時だった。

「触るんじゃねえ!!」

 アウルが大きな声で怒鳴ったので、ジャスは慌てて手を引っ込めた。

「え?何?毒か何か?」

「呪いのキノコだ」

 アウルは苦々しげに言った。

「適当に触ると胞子を撒き散らして増殖する。魔力を吸い取るキノコだ。どうりで家にかかっている魔力が薄くなっているわけだ。俺の調子もすこぶる悪い」

 そう言いながら、アウルはキノコに魔法をかけて少しずつ小さくしていく。

「ったく、こんな繊細な魔法使うのは得意じゃねえんだけどな」


 その時だった。

「やっほう、お元気?」

 ドアが開いて、クロウが勝手に家に入ってきた。

「あれ?どうしたの?取り込み中?」

 汗をかきながら魔法を使っているアウルを見て、クロウは不思議そうに近づいた。

「ありゃ、呪いのキノコだ。さすがアウルの家の魔力吸っただけあるねー。すっごく大量」

「感心してんじゃねえよ」

 アウルはクロウを見ずに文句を言う、クロウは魔法薬のたくさん入っている棚を覗きながら提案してきた。

「解呪薬ぶっかけちゃえば?」

「一昨日テメェが欲しいっていうから全部やっただろ。あれからまだ一つも作ってねえ」

「ありゃ、何もないんだ。ふうん、解呪できる薬、何も無い、と」

「ああ、その上魔力が吸われてキツイ。手伝え」

 アウルが必死の形相でいうのを、飄々とした様子で眺めながらクロウは言った。

「いや、手伝わないよ」

「は?」

 アウルはもちろん、ジャスも驚いてクロウの顔を見た。

 クロウは笑いながら言った。

「だって、そのキノコ生やしたの、俺だもん」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる

七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。 だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。 そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。 唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。 優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。 穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。 ――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!

めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈ 社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。 もらった能力は“全言語理解”と“回復力”! ……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈ キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん! 出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。 最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈ 攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉ -------------------- ※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!

処理中です...