媚薬魔法の優しい使い方

りりぃこ

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待ってるからな

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 次の日の朝、アウルはいつもより遅く起きて部屋から出てきた。

 居間には、いつもこの時間食事を取っているか掃除をしているはずのジャスはいなかった。

「やっぱり……」

 そうアウルが呟いた時だった。


「あ、今起きたのか?遅かったな」

 ジャスが玄関から顔を出した。アウルは唖然とした顔でジャスに詰め寄った。

「テメェ、何でっ」

「え?手紙出しに行ってただけだけど。マリカに術が解けたこと一応伝えようと思って」

「そうじゃねえよ!」

「なんだよそんな怖い顔して。別に逃げたわけじゃないんだから」

「何で逃げなかった!」

「は?」

 ジャスはアウルの言葉にぽかんとした。

「え?逃げ……?」

「マリカの誘惑魔法が解けたなら、テメェはここにいる必要ねえだろ」

「そ、そうだ、けど。でも僕が今逃げたら」

 ジャスはそう言いかけて、ふと言葉を止めた。

「もしかして、逃がそうとしたの?」

 ジャスはそう言って、アウルの顔をじっと見つめた。

 アウルもジャスの顔を睨むようにじっと見つめている。

 ジャスは静かにたずねた。

「アウルは、クロウの花嫁になるつもりなの……」

 アウルは何も言わなかった。ジャスはもう一度たずねた。

「アウルは、人間になるつもりなの……」

「それは」

「バカじゃねえの!!」

 突然怒鳴ったジャスに、アウルは一瞬怯んだ。

「バカだと!?」

「アウルお前、自分のことわかってんのか!?」

 ジャスはアウルの襟首を掴みかかり、小馬鹿にするように鼻で笑って言った。

「お前は、その強大な魔法力があるから、存在価値があるんだろ?!魔法が使えなくなったお前は何の魅力があるっていうんだ!クロウだってな、すぐに何の魅力もないお前に愛想をつかすに決まってるね!」

「なんだとテメェ!!」

 アウルはジャスの襟首を掴み返す。

「んなこと、テメェに言われなくても分かってんだ!」

「わかっててその選択するのか?ずいぶんとお優しいんだな!クロウの言いなりになるんだな!」

「言いなりじゃねえ!
 だいたい、テメェだって俺のこと別に好きでもねえだろ!これで願ったり叶ったりだろうがよ!」

「今更そんなの勝手すぎる!!」

 ジャスはアウルの顔を両手でガシッと掴み、睨みつけながら言った。

「アウルは僕に決めたってずっと言ってたじゃないか!!責任取らねえのかよ!!俺は……」

 ジャスはそこまで言うとアウルから手を離した。

 そしてアウルに背を向けて言った。



「僕は今から湯浴みして身を清めて、お前の部屋のベットで待ってる。待ってるからな」




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