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怖い
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その時、うぅ、と小さなうめき声が聞こえた。
「クロウ!」
ジャスは、うめきながら薄く目を開けたクロウの肩を、支えるように掴んだ。
「大丈夫?体調悪いところは無い?」
「あー……えーっと……」
クロウはぼんやりと宙を眺めていた。
「気分はどうだ」
アウルはそう言いながら、ヨロヨロと立ち上がると、クロウに近寄った。
「ああ、ちょっとキツく拘束しすぎたか。後で軟膏塗ってやる」
アウルはクロウの手を取って優しい表情で言った。
そして、パイソンの方を向いて言った。
「おい、その手を降ろせ」
アウルの言葉に、ジャスはハッとパイソンを見た。パイソンはこちらに向かって指を向けていた。明らかに殺意がある表情で、魔法をかけようとしている。
「やめろ。クロウもジャスも攻撃すんな。俺には今はなんも出来ねえから」
アウルがそう言い放つと、パイソンな殺意を含んだ目で睨みつけた。
「私はね、アウル、君よりもね、クロウが大嫌いなんですよ」
その言葉に、クロウはぼんやりとした顔でパイソンを見て、そして少しだけ笑ってみせた。
「そんな気が、してたよ」
「私は、アウルからこうする事を手紙で知らされた時、すぐに止めに行かねばと思いました。そして、もし、間に合わなかったなら、クロウを殺すつもりでした」
「物騒なやつだな。今はクロウは人間だぞ。人間殺したら禁忌だぞ」
「では、殺さない程度に傷めつけます」
「あのなぁ……」
アウルは迷惑そうな顔をした。
「アウルが大魔法使いと呼ばるようになったのは、お前とつるんでからだ。お前さえいなければ、アウルが、大魔法使いなどと呼ばれることはなかった。私の座が、奪われることはなかった。
そして今、その大魔法使いの魔力を奪った。私はアウルを殺すのを、百年以上も待たねばならなくなった!」
パイソンは叫び、指をクロウに向けた。
「ジャス君、怪我をしたくなければどきなさい」
「む、無理だよ」
ジャスはオドオドと言った。本当は逃げたかった。脳裏に、アウルが自分を庇って怪我をしたときのことが、思い出される。
しかし、ここを退くわけにはいかなかった。
「無理。無理だよ。よくわかんねえけど、ダメだよ傷つけたりしたら。魔法使いの間では、普通のことなのかも知んないけど、でも僕は人間だから、そんな価値観知らねえから」
身体は怖くてぶるぶる震えていたが、ジャスはしっかりとパイソンの顔を見据えて言った。
「パイソン!」
アウルが大きな声を上げた。
「クロウを傷つけることは許さねえ。ジャスにまた悪夢を見せるような事も許さねえ。そんなことをすんなら……」
アウルは薬棚から黒い瓶を取り出した。
「俺は自殺してやる」
「はっ?」
パイソンは真っ青な顔になってアウルを見た。アウルはニヤニヤしている。
「テメェが一番嫌なことだろ?もう百年近く、万全の俺を殺すために生きてきたテメェにとってな」
「……」
パイソンは殺気立った目でアウルを睨む。そんなパイソンに向かって、アウルは深く頭を下げた。
「頼む。ここは何もしないでくれ。今の俺には、何もできねえんだ」
「そんな情けない真似をするなら、なぜ私に手紙を寄越したのだ!!自分はクロウを人間にするから暫く魔法が使えなくなると!!
私に知らせればこうなることは予想がついたでしょう!!
君は!本当は!私に止めてほしかったのではないのですか!」
叫ぶパイソンに、ゆっくりと顔を上げたアウルは、首を傾げて言った。
「いや、予想してなかった」
「はっ!?」
「別に止めてほしくて知らせたわけでもねえ」
「ではなぜっ!?」
「一応、親しい奴に知らせとくか、くらいの気持ちだったが」
「「「親しい?」」」
パイソン、ジャス、クロウの声が思わず揃ってしまった。
「親しいって……親しい?」
「殺されそうになってるよね?」
クロウとジャスは呆れながらアウルを見た。アウルはなにもおかしいことは言っていない、というふうにケロッとした顔をしている。
「クロウ以外でよく会う魔法使いはパイソンくらいだからな」
それを聞いてパイソンはぐったりと手を下ろした。
「ああ、そうでしたね。君は大変なバカでしたね」
そう言ってパイソンはくるりと背を向けた。
「もうやる気を無くしました。本気で考えた私がバカでしたよ。
魔法が戻るまで、せいぜい殺されたりしないように気をつけなさい」
立ち去ろうとしたパイソンは、振り返らずに言った。
「私は君が殺されても、生き返らせたりしませんよ。私は、魔法を使えなくなることが、怖いんですから」
パイソンは煙のように消えた。
「クロウ!」
ジャスは、うめきながら薄く目を開けたクロウの肩を、支えるように掴んだ。
「大丈夫?体調悪いところは無い?」
「あー……えーっと……」
クロウはぼんやりと宙を眺めていた。
「気分はどうだ」
アウルはそう言いながら、ヨロヨロと立ち上がると、クロウに近寄った。
「ああ、ちょっとキツく拘束しすぎたか。後で軟膏塗ってやる」
アウルはクロウの手を取って優しい表情で言った。
そして、パイソンの方を向いて言った。
「おい、その手を降ろせ」
アウルの言葉に、ジャスはハッとパイソンを見た。パイソンはこちらに向かって指を向けていた。明らかに殺意がある表情で、魔法をかけようとしている。
「やめろ。クロウもジャスも攻撃すんな。俺には今はなんも出来ねえから」
アウルがそう言い放つと、パイソンな殺意を含んだ目で睨みつけた。
「私はね、アウル、君よりもね、クロウが大嫌いなんですよ」
その言葉に、クロウはぼんやりとした顔でパイソンを見て、そして少しだけ笑ってみせた。
「そんな気が、してたよ」
「私は、アウルからこうする事を手紙で知らされた時、すぐに止めに行かねばと思いました。そして、もし、間に合わなかったなら、クロウを殺すつもりでした」
「物騒なやつだな。今はクロウは人間だぞ。人間殺したら禁忌だぞ」
「では、殺さない程度に傷めつけます」
「あのなぁ……」
アウルは迷惑そうな顔をした。
「アウルが大魔法使いと呼ばるようになったのは、お前とつるんでからだ。お前さえいなければ、アウルが、大魔法使いなどと呼ばれることはなかった。私の座が、奪われることはなかった。
そして今、その大魔法使いの魔力を奪った。私はアウルを殺すのを、百年以上も待たねばならなくなった!」
パイソンは叫び、指をクロウに向けた。
「ジャス君、怪我をしたくなければどきなさい」
「む、無理だよ」
ジャスはオドオドと言った。本当は逃げたかった。脳裏に、アウルが自分を庇って怪我をしたときのことが、思い出される。
しかし、ここを退くわけにはいかなかった。
「無理。無理だよ。よくわかんねえけど、ダメだよ傷つけたりしたら。魔法使いの間では、普通のことなのかも知んないけど、でも僕は人間だから、そんな価値観知らねえから」
身体は怖くてぶるぶる震えていたが、ジャスはしっかりとパイソンの顔を見据えて言った。
「パイソン!」
アウルが大きな声を上げた。
「クロウを傷つけることは許さねえ。ジャスにまた悪夢を見せるような事も許さねえ。そんなことをすんなら……」
アウルは薬棚から黒い瓶を取り出した。
「俺は自殺してやる」
「はっ?」
パイソンは真っ青な顔になってアウルを見た。アウルはニヤニヤしている。
「テメェが一番嫌なことだろ?もう百年近く、万全の俺を殺すために生きてきたテメェにとってな」
「……」
パイソンは殺気立った目でアウルを睨む。そんなパイソンに向かって、アウルは深く頭を下げた。
「頼む。ここは何もしないでくれ。今の俺には、何もできねえんだ」
「そんな情けない真似をするなら、なぜ私に手紙を寄越したのだ!!自分はクロウを人間にするから暫く魔法が使えなくなると!!
私に知らせればこうなることは予想がついたでしょう!!
君は!本当は!私に止めてほしかったのではないのですか!」
叫ぶパイソンに、ゆっくりと顔を上げたアウルは、首を傾げて言った。
「いや、予想してなかった」
「はっ!?」
「別に止めてほしくて知らせたわけでもねえ」
「ではなぜっ!?」
「一応、親しい奴に知らせとくか、くらいの気持ちだったが」
「「「親しい?」」」
パイソン、ジャス、クロウの声が思わず揃ってしまった。
「親しいって……親しい?」
「殺されそうになってるよね?」
クロウとジャスは呆れながらアウルを見た。アウルはなにもおかしいことは言っていない、というふうにケロッとした顔をしている。
「クロウ以外でよく会う魔法使いはパイソンくらいだからな」
それを聞いてパイソンはぐったりと手を下ろした。
「ああ、そうでしたね。君は大変なバカでしたね」
そう言ってパイソンはくるりと背を向けた。
「もうやる気を無くしました。本気で考えた私がバカでしたよ。
魔法が戻るまで、せいぜい殺されたりしないように気をつけなさい」
立ち去ろうとしたパイソンは、振り返らずに言った。
「私は君が殺されても、生き返らせたりしませんよ。私は、魔法を使えなくなることが、怖いんですから」
パイソンは煙のように消えた。
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