媚薬魔法の優しい使い方

りりぃこ

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パイソン

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 眩しくて何が起こっているのは、ジャスからは全く見えなかった。

 体が動かず、何もすることの出来ない歯痒さに、ジャスは打ちのめされていた。


「……間に合わなかったですか」

 突然後から声がした。


「パイソン!!」

 ジャスは後ろに突然現れたパイソンに、絶望的な顔を見せた。

「そんな……こんな時に……」

「怯えないでくださいよ。別に君やアウルに危害を加えに来たわけじゃない」

 パイソンはフン、と鼻をならして忌々しそうに言った。

「あの馬鹿を止めに来たつもりなんです。でも間に合わなかった」



 そうしているうちに、眩しい光が消えた。

 それと同時にジャスも体が動くようになった。

「アウル!クロウ!」

 ジャスは二人に駆け寄った。

 アウルはぐったりと疲れ切ったように荒い息をしており、クロウは拘束と解かれた椅子の上で意識を失っていた。

「生きてる!?ねえ!」

 ジャスはクロウの顔をペチペチ叩く。

「寝てるだけだ。そっとしといてやれ」

 ぐったりとしながら、アウルが声をかけた。

「アウルお前何してんだよ!本当に20年もクロウの時間を進めたのか!?」

「ああ」

 ジャスの責めるような口調にも動じず、アウルは答えた。

「クロウは今、200歳を超えた。人間になっている」

「魔法使いにとって、魔法が使えなくなることは手足目耳一気に奪われるのと同じだって言ってたじゃないか!クロウに断りもなく……!!」

「アイツは俺の決断を否定しねえ」

「そんなっ!それに、それに!!20年も時間を操ったなら、えっと……えっと、140年くらいアウルも魔法を使えなくなるんだろ!!」

「そうだな。そんくらいか」

「そうだなって!!」

 ジャスは泣きそうになり、言葉が出なくなった。



「馬鹿なヤツだ。こんなヤツが大魔法使いの名をほしいままにしていたなんて、反吐が出ます」

 パイソンが、吐き捨てるように、近づきもせずに言った。

 アウルは、パイソンの姿を見ると、力なく笑った。

「ああ、パイソン、丁度いいタイミングじゃねえか」

「どこが。アウル、わざと遅くに手紙が着くようにしましたね」

「さあ、何のことか」

「しらばっくれないでください。こんな、全てが終わったあとに来ても……」

 パイソンは悔しそうな顔を一瞬したが、すぐに冷たい表情をして言った。

「今なら、私は君をなんの苦労も無く殺せます。魔法が使えない君を守る者もいなくなってますしね。こんな状態が、100年以上も続くんですよ?」

「ああ、そうだな。でも、テメェは俺を殺さねえ。魔法の使えない俺を殺すはプライドが許さねえんだろ?俺は、そんなプライド高えテメェが大好きだぜ」

「吐き気がします」

 パイソンは冷たい表情を崩さなかった。

「私はまだいい。いくらでも、君の魔法が戻るのを待ちましょう。しかし、君が魔法が使えない間に、他の雑魚が君を殺す事が許せないのです」

「じゃあ、テメェが俺を守ってくれるか?」

「冗談じゃない」

 パイソンはアウルを睨みつけた。

 アウルは小さく笑った。

「ま、殺されねえように気をつけるわ。もし殺されちまったら、テメェで俺を生き返らせりゃいいだろ」

「は?」

 ずっと黙っていたジャスだったが、思わず声を上げた。

「え、蘇りの魔法って、アウルしか出来ないんじゃないの?」

「蘇りの魔法じゃねえ。時間を操る魔法だ」

「いや、まあそうだけど。でも、生き物の時間を操れるのはアウルしかいないって」

「まあ、実質俺しかやってねえからな。
 でも、あんなもん、大量の魔力使って力技で時間を捻じ曲げてるだけだ。大量の魔力を持っていて、それをコントロールできる奴なら誰でも出来る。
 例えば、元大魔法使いパイソンくらいの奴ならな」

 アウルはそう言って、パイソンを見た。

 パイソンは忌々しげな顔をしたまま小さくため息をついた。

「確かに、アウルにできて私に出来ないはずはありません」

「じゃあ何で……ずっとやらなかったの?」

 パイソンは、ジャスの問にイライラとした表情になり、答えようとはしなかった。


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