媚薬魔法の優しい使い方

りりぃこ

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これが本番

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 ドンっ、という音と同時に、クロウの座っている椅子の真下から、太い木の蔓が何本も現れた。


「何あれ!」

 ジャスは驚いて立ち上がった。

「なっ!!」

 クロウは声を上げる間もなく、あっという間に木の蔓によって椅子に拘束されてしまった。口にも蔓が巻き付き、言葉を発することも出来なくなっていた。


「何これ。誰がこんな事……」

 震えながら呟くジャスに、アウルはニヤリと笑って言った。

「俺だよ」

「な、何で?何するの?嫌がらせはもう終わったんじゃ?」

「嫌がらせじゃねえよ。これが本番だよ」

 そう言ったアウルの手には、ナニやら液体の入っだ瓶が握られていた。

「その液体って」

 ジャスが二回見たことがあるその液体。それは、生き返らせる魔法を使う前に、対象の周りに撒いていた液体だった。

「時間を……?何で?」

 ジャスは呟いたが、アウルは答えず、拘束されているクロウに近づいた。

「何されてもいいんだよな?」

 アウルの妙に優しい問いかけに、クロウはウ゛ーと唸ることしかできないでいる。


 アウルはクロウの拘束されている椅子の周りに、ゆっくりと液体を撒きながら言った。

「さっきも言ったが、俺はテメェかいなくなる事なんか一切考えられねえ。これからもずっと、テメェも俺の側を離れることを考えるなんてあり得ねえと思ってた。
 だからな、テメェか俺の元を離れることを一瞬でも考えた事はショックだったなあ」

 アウルは、わざと悲しそうな顔をクロウに見せるが、口調はなぜか楽しそうだった。

「もしかしたら今後も、テメェがオレの元を離れることを考えることがあるかもしれねえ。それは困る」

 アウルの言葉に、クロウは拘束されてうまく動かない首を、一生懸命に横に振った。

「だからな、俺は決めたんだよ。俺じゃない、テメェが人間になって俺の花嫁になればいい」

 アウルはそう言って、クロウの顔を掴んだ。クロウは目を見開いてカタカタと震えだした。

「ま、ダラダラと女々しい事言ったが、単純に俺が人間になるつもりはねえからこれしか思いつかなかったってだけだけどな」

 アウルはクロウに笑いかけた。


「待ってよ!クロウを人間にって……そんな事できるわけ……」

 ジャスが叫ぶと、アウルはジャスの方を軽く見て言った。

「おい、俺ができるのは時間を戻すだけだと思ってんのか?俺は時間を『操ること』が出来るんだ。
 なあクロウ。テメェが200歳になるまで、あと20年くらいだったか?」

 アウルは愛おしそうにクロウを撫でる。

「心配すんな。俺から離れられないようにいくらでも媚薬魔法たっぷりのキスをしてやるよ。セックスはする気は起きねえが、テメェを離さない為なら、いくらでも中毒症状起こすくらいキスしてやるから」

「そんなアウル!ダメだって!だって」

 ジャスは叫んだ。

「うるせえ。近づくな!巻き込まれたら命の保証はねえぞ!」

 アウルがそう叫んだ瞬間、ジャスの身体は動かなくなった。

 ――くそ、魔法か。

「ジャス、悪いな。嫉妬しないでくれよ」

「んな冗談いってる場合かよ!駄目だろ、そんなの、だって」

 ジャスの叫びは届かなかった。



 アウルはクロウの頬に両手を添えた。二人が強い光に包まれた。

「テメェは俺のもんだろ?クロウ」


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