祖母孝行したいけど、兄弟でキスはできない

りりぃこ

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堕ちるの早そう

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「あのですね。俺、やっぱりその、写真を他の人に見られるのは嫌です」

 智紀は正直に言った。

「理由としては、単に恥ずかしいってだけですけど。その、ばあちゃんだけに見せるならいいですけど」

 しどろもどろになりながらも必死でいう。流されやすい智紀の、必死の抵抗だ。


「……そうか。うん」

 茉莉花は、さっきまでの興奮を抑えるように、静かに頷いた。

「無理はさせられないね。ごめんね弟ちゃん。私はさ、慣れてるっていうか、上手くできたら他の人にも見てもらいたいーって気持ち強いからさ、感覚が弟ちゃんとずれちゃっててね」

 そう言って、ポンポンと智紀の背中を叩いた。

「いいよ。正直に言ってくれてありがと」


「そうだな。偉いぞ智紀」

 思いがけずに祥太からも優しい声をかけられた。

「ちゃんと始めに自分の気持ちを言うのは大事だ。あとからブーブーいうなんて、それこそ情けないからな」

「あ、うん」


 拍子抜けするほどあっさりと自分の主張が認められて、智紀は力が抜けた。


「そうだよね。弟ちゃんは始めからさっちんの為の事しか考えてなかったもんね」

「そうなんです。智紀は俺以上にばあちゃんっ子で、ばあちゃんの為に頑張ってくれている子なんですよ」

 急に祥太が褒めてくれだしたので、智紀はムズムズしてきた。

「いや、別にそんな事、無いけど」

「だからきっとばあちゃんも、俺にじゃなくて智紀に自分の希望を話したんだよな。きっと、智紀になら甘えられるんだ」

「いやぁ、その」


 少し照れてしまった智樹を、何故か幸田がジトッとした目で見てくる。智紀には、何故幸田がそんな目で見てくるのかがわからなかった。


「きっと、茉莉花さんの技術と、智紀の気持ちがあれば、きっといい作品ができるな。ああ、それにしても少し残念だな、これがばあちゃんにだけ見てもらうっていうのも。頒布っていうのは茉莉花さんのフォロワーにだけなんだってね。それくらいならいいかな、とは思っていたんだが」

「え、そうなの?」

 智紀は声を上げる。てっきり、結構な量を作るのかと思っていたが。

「そりゃそうだよ。素人のコスプレ写真集なんて、そうそう一般の人が欲しがるわけないじゃん。私のフォロワーで、かつ欲しい人だけ。超限定だよ。私のコスアカ、そんなにフォロワー多くないしさ」

「そ、そうなんだ、俺はてっきり……」

 智紀はそう口を滑らせた。その途端、祥太が目を光らせたのに気づかなかった。

「てっきり、なんだ?」

「てっきりいっぱい作って売るのかと思って、それはやだなって思ってて、だから」

「だから?」

「少ないならまあ」

「まあ?」

「別に良かったのかなって……」

 智紀が言ってしまった瞬間、幸田が、あっちゃーという顔をしたのが見えた。祥太がすぐに茉莉花の方を向いて言った。

「茉莉花さん、聞きました?智紀、少ないなら大丈夫だそうです」

「えっ?」

「聞いたっす!言質取っちゃった」

「えっ、あの、その」

「では、茉莉花さん、そのように進めましょう」

「えー!?」


 呆然とする智紀に、幸田は呆れ顔を向けた。

「いや、結構序盤から竹中くん堕ちるの早そうって思ってたよ」

「えー」

「まあ、自分でも言ってたじゃん。少ないなら別にいいって」

「う、まあ」

智紀は情けなくなってうつむいた。そんな智紀を見て、幸田は小さくため息をつくと、励ますように言った。

「まあ、あんまり暴走しないように私からも茉莉花さんのSNSとかチェックしてあげるから、頑張ろ」

「幸田さん、本当に味方でいてくれるんだな」

 智紀は感激して抱きつかんばかりに幸田に言うと、「そういうとこがチョロすぎるんだって」と普通に怒られた。


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