祖母孝行したいけど、兄弟でキスはできない

りりぃこ

文字の大きさ
34 / 58

意外にガチじゃん

しおりを挟む


「違う?」

 茉莉花がキョトンとしてさち子に近寄った。

「違うって、どういう事?」

「確かに、ナツの服なのはわかる。でもナツじゃない」

 さち子は言い放った。

「やば、さっちん意外にガチじゃん」

 茉莉花が驚いているのを後目に、さち子はマジマジと浴衣の縫い目を見た。

「それに、これでも悪くないが、夏着物の単衣の縫い方だね。まあ浴衣だから仕方ないが。初恋の杜では、ナツはずっと裏地のある袷の着物を着ていた」

「あ、あのぉ、まあ表面上よければいいだけなので……」

 さち子の熱量に少し引き気味の茉莉花が慌てて言う。亮子も首をかしげた。

「私は浴衣を直してくれと言われただけなんだが」

「ヘルパーさんが許してくれるなら、私がちゃんと直してやるのに」

 さち子がブツブツと言うのを、智紀はハラハラと見ていた。せっかく亮子がやってくれたのに、そんな言い方したら失礼じゃないか。

「あの、ばあちゃん、いいんだよ。それで。亮子さんだって親切でしてくれたんだから」

「いや、直そう」

 亮子は意地を張ったように言った。

「なんだかわからんが、なんだか気に入らなくなってきた。親切でやったらいいってもんじゃない。ちゃんと智紀くんが気に入るようにしないと、こっちの気が収まらない。どうやればいいんだ」

「裏地の生地ならうちにたくさんある。祥太、裏の倉庫の桐箪笥から適当に布を持ってきてくれ」

「いや、ばあちゃん、別に大丈夫なんだが」

 祥太も慌てる。


 さち子は案外強情だ。こうなってしまっては多分絶対に引かない。

 やはり強情な亮子と、着物の何たるかの話を始めてしまった。

 仕方なく、祥太は裏の倉庫に向かう。


「ごめん、なんか」

 智紀は茉莉花に謝る。茉莉花も、半笑いで頷く。

「やっぱり量より質の世代には敵いませんなー」



 しばらくして祥太がいくつか布地を持ってきた。

 さち子はそれを見ながら、裏地に使うものの指示をしていく。


「そうだ幸田ちゃん。幸田ちゃんはコスプレ興味ある?」

 何となく手持ち無沙汰になっていた茉莉花が、おもむろにたずねた。

 幸田は首をかしげなが答えた。

「んー、あんまり無いですね」

「そっかぁ。よかったら、幸田ちゃんも入ればいいかなって思ったんだけど」

「私が?BLに女必要ないですよね」

「ナツに一目惚れする女学生いたじゃん、サクラちゃんっていう。あの衣装っぽいの古着屋で見つけてさ。よかったらナツの格好の弟ちゃんとカップリング写真取ってあげようか……って思……」

 茉莉花は途中で言葉を途切れさせる。幸田が怖い顔をしていたからだ。

「えっと……あれ?梨衣ちゃんって、ノマカプ派じゃなかったっけ……男女派だと……」

「私の基本的な理念は、『原作至上主義』!その上でのノマカプ派です!原作でくっつかない二人のならノマカプでも地雷なんです!」

「ごめん、ごめんよぉ」

 茉莉花は豹変した幸田に平謝りしている。


 ……賑やかだなぁ、と智紀のぼんやりとさち子の部屋を眺めていた。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした

鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、 幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。 アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。 すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。 ☆他投稿サイトにも掲載しています。 ☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

【完結】end roll.〜あなたの最期に、俺はいましたか〜

みやの
BL
ーー……俺は、本能に殺されたかった。 自分で選び、番になった恋人を事故で亡くしたオメガ・要。 残されたのは、抜け殻みたいな体と、二度と戻らない日々への悔いだけだった。 この世界には、生涯に一度だけ「本当の番」がいる―― そう信じられていても、要はもう「運命」なんて言葉を信じることができない。 亡くした番の記憶と、本能が求める現在のあいだで引き裂かれながら、 それでも生きてしまうΩの物語。 痛くて、残酷なラブストーリー。

押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました

cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。 そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。 双子の妹、澪に縁談を押し付ける。 両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。 「はじめまして」 そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。 なんてカッコイイ人なの……。 戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。 「澪、キミを探していたんだ」 「キミ以外はいらない」

【完結】毎日きみに恋してる

藤吉めぐみ
BL
青春BLカップ1次選考通過しておりました! 応援ありがとうございました! ******************* その日、澤下壱月は王子様に恋をした―― 高校の頃、王子と異名をとっていた楽(がく)に恋した壱月(いづき)。 見ているだけでいいと思っていたのに、ちょっとしたきっかけから友人になり、大学進学と同時にルームメイトになる。 けれど、恋愛模様が派手な楽の傍で暮らすのは、あまりにも辛い。 けれど離れられない。傍にいたい。特別でありたい。たくさんの行きずりの一人にはなりたくない。けれど―― このまま親友でいるか、勇気を持つかで揺れる壱月の切ない同居ライフ。

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

処理中です...