祖母孝行したいけど、兄弟でキスはできない

りりぃこ

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皆で仲良く作った

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 ※※※※

「ばあちゃん、これ、見てくれないか」


 その日、智紀と祥太は、二人でさち子の部屋にいた。

 前日のうちに、茉莉花から丁寧にラッピングされた写真集を受け取っていた。とうとうさち子にお目見えするのだ。

「本当は私もさっちんの最初の反応を見たいんだけど。でもこれは竹中家だけのものだし、最初だけは私が割り込むわけにはいかないと思う」

 茉莉花がそう言ったので、時間を作って二人で渡すことにしたのだ。



「なんだい改まって」

 さち子は少し体を起こすと、智紀からラッピングを受け取った。

 ゆっくりとした動作で、ラッピングを剥がす。

「本?悪いんだけど、これは何で書いてあるんだ?キラキラしてて読めない」

「for SACHIKO。さち子へ、って書いてある」

 祥太に言われて、嬉しそうにさち子はそのキラキラを撫でた。

「へえ、こんなキラキラで名前かいてもらったら、何だか照れるね」

 そう言いながら、1ページ目を開いた。


「あー……あー……ら、ら」

 さち子は目を見開いた。

「これは……ええ?これはどうなってるんだ?」

 本を近づけたり遠ざけたり、何度も見つめ、ようやく顔を上げた時には頬は真っ赤になっていた。

 体調は大丈夫だろうか、と、智紀が少し不安に思った時だった。

 さち子はホッと息をつきながら、目を閉じた。そしてゆっくりと呟くように言った。

「ハルとナツはいたんだねえ。それに、とっても祥太と智紀に似ている」

「似ているって言うか……」

 智紀がコスプレについて説明しようとする前に、さち子は次のページを開いた。

「あら、あらあら。あー、そう。ふふ」

 さち子は、今度は嬉しそうに笑う。

 2ページ目からは智紀も見ていない。

「ふふ。そうか。仲良く遊んでたんだね。ふふふ」

 2ページ目の写真を、何度も何度も撫で、そして何度も嬉しそうに笑う。

 1ページ目とは少し違う反応だ。


「ばあちゃん、ちょっとオレも見てもいい?」

 智紀が言うと、さち子は黙って写真集を渡してきた。

 2ページ目を開くと、後ろから祥太も覗いてくる。

「えっ」

 思わず智紀は声を上げた。


 そこに並んでいた写真は、コスプレ写真では無かった。着替えて服を直されている写真、祥太の化粧をマジマジと見つめる智紀、智紀にコンタクトを無理矢理つける祥太、そして、休憩時間に祥太の手からまんじゅうを食べる智紀……。

 多分、米村が撮っていたメイキング写真だ。

 これまで写真集に入れていたのか!と智紀は恥ずかしくなった。なんだか素を見られたようでどうもムズムズする。

「こんなに仲良く遊んでたんだね。いい顔してるいい写真だな。何度見ても飽きないよ」

 さち子はそう言って、再度写真集を渡すよう、手を伸ばした。

「最近、ふたりともイチャイチャしてくれてて嬉しいのに、こんなにいい写真まで。ふふふ」


 2ページ目を見ているさち子のその笑顔は、BLに萌えている表情とは少し違った。昔、智紀が小さい時によく見せていた表情だった。兄弟喧嘩した時、兄弟で一緒にいたずらした時、兄弟で一緒に遊んでいた時。
 さち子はいつも見守るような顔をしていた。


「別に、イチャイチャなんかしていないぞ」

 イチャイチャしている、と言ってやればいいものを、祥太はついそう言ってしまう。

 しかし、さち子はゆっくりと首をふった。

「してるじゃないか。私はここ最近、よく二人で一緒にいるところを見たぞ。それに、このナツの服だって、皆で仲良く作ったじゃないか」

「確かに仲良く作ったかもね」

 智紀は同意する。

「そうだ。この写真集、ばあちゃんも一緒に作ったんだよ。ほら、衣装のここの袖の部分、難しかったよね」

「ああ、そうだな。祥太は何度言っても違う所を縫ってなぁ」

「思い出さなくていいじゃないか」

 祥太は不貞腐れた。


「ああ、こんなの、寿命が伸びる。伸びるよ」

 そう呟いたさち子の目には、涙が滲んでいた。

「な、何で泣いてるの?」

 智紀は慌てる。喜んでもらいたかったのに、泣かせてしまった。

 さち子は目をこすりながら、首をかしげる。

「何でだろうね。涙が止まらないんだ。心臓もすごく……あ……苦し……」


「ばあちゃんっ、落ち着いて」

「まずい、ばあちゃん、前に俺がお前の耳を齧ったときみたいに動悸が止まらなくなっているようだ」

「ばあちゃん!寿命伸びるんじゃなかったのかよ!死ぬな!」

「ばあちゃん!!」


 二人の悲痛な声が響く……。



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