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無題
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さち子が息を引き取ったは、本当に突然だった。
その日、さち子はとても元気で機嫌が良かった。
たまたま父親も母親も、祥太も智紀も早めに家に帰って来ていて、全員が家にいた。
たまには同じ食卓で食事をしたい、とさち子が言ったので、リビングではなくさち子の部屋に大きめのちゃぶ台を持っていって、そこで皆で食事をすることにした。
メニューは、智紀の作ったカレーだった。智紀はカレーかシチューしか作れない。
さち子の分のミキサー食もカレーだった。ちゃんと福神漬けもつけろとわがままを言ったので、祥太が1人分だけ潰してやった。
さち子の食事の手伝いを交互にしながら、最近の事を皆で語らった。
コスプレ写真の事も両親に問われた。見たいと言われたので、祥太と智紀は声を揃えて嫌だと言い張った。さち子が、ちゃんとあれは自分が責任を持って墓まで持っていってやる、と本気か冗談か分からない高齢者ジョークをかましていた。
最近のことだけじゃなく、祥太と智紀の子供の頃のことや、父親と母親の結婚式の思い出、死んだ祖父の事、色々語り合った。
「祥太、智紀、仲良くね」
さち子はそう言って、二人を撫でた。
食事が終わり、片付けをしている最中に、智紀がさち子の異変に気付いた。
さち子は、息をしていなかった。
ほんのり笑っているかのような顔で、静かに、そして安らかに息を引き取っていたようだ。
泣いたのは智紀だけだった。
自分だけ泣いているのに気付いた智紀は、ふと恥ずかしくて顔をそむけた。
「無理するな。俺の分まで泣いておけ」
祥太はそう言って、智紀にタオルを乱暴に投げてやった。
静かに、智紀のすすり泣きだけが響いて、その夜は更けていった。
写真集をさち子にプレゼントしてから、三ヶ月ほど経った日、赤い衣装が完成する一週間程前の事だった。
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