81 / 82
3章 白髪の獣人
迷い
しおりを挟む
「本当にうるさい……あの女」
途中で休憩し、私は苛立ちを解消するため好物であるブルーフィッシュを捕まえようと靴を脱いで川に入った。冷たい水が足を濡らし体が僅かに震えるが、すぐに慣れる。
「……っ、そこ」
川をよく見ていると魚影を察知し、手を動かす。
「うっ……やっぱりまだ痛い。」
しかし、体の傷の痛みで素早く体を動かすことが出来ず逃げられてしまう。
「次こそは……」
もう一度魚影が来るのを待ち、見つけた瞬間手を動かすとなんとかブルーフィッシュを捕獲することに成功した。
「やった……」
肉もいいけど魚も好きだ。せっかく主人から離れられているんだ。そういう時は自分の好きな物を食べたい。そう思いさらにブルーフィッシュを狙おうとすると、ユウキとリーフのいる方向からなにか声が聞こえる。
女の方がうるさいとはいえ移動手段としては使える。何が起こったのか確認するため、私は向かって行った。
「ぁ……ぅ……?」
なにが起きたのか分からない。私に飛びかかってきたケイブスパイダーは私の目の前に入り込んできたリーフの右肩と左の太ももに牙を突き刺した。ケイブスパイダーの牙は麻痺毒を相手に流し込むための器官で、実際目の前のリーフは麻痺毒で動けなくなったのかその場で倒れ込み、小さく声をあげるだけで何も出来ない。2匹のケイブスパイダーがリーフを捕食しようとリーフの体に乗って口を開けた。
話を無視し酷い態度を取った私を庇おうとして死ぬなんて……私からは手出できないからここで死んでくれるなんてちょうどいい
「や、やめて!リーフに触れないで!」
意思とは反対の行動をしてしまった。私はリーフの前に移動しながら手に持っていたブルーフィッシュをリーフに乗っていた1匹に向かって投げた。
「どうして私……」
咄嗟の判断だった。ほんの数時間前まで憎しみの対象だった。ほんの数分前までうるさくて煩わしい女だった。そんな奴が魔物に襲われ動けなくなったんだ。なら放置して始末してもらえばいい。
――なのになんで私は――
ケイブスパイダーはブルーフィッシュに直撃し、ひっくり返った。それを見たもう1匹が私を見て威嚇し、ひっくり返ったケイブスパイダーもほとんどダメージがなかったのか私に近付いてくる。完全に敵として認識された。
戦うことはできる。でも、今の傷付いた状態で戦闘したら……
「……っ!」
ぶるりと背筋が震える。絶対に酷い目にあってしまう。私の力は他のものとは違う。力には代償が付きまとう。もう『あれ』を経験したくない。主人に命令で使わされいつも酷い目にあう。でも今は主人はいないんだ。自分の意思で、自由に選択できるんだ。
「なのに……なんで?」
どうして私の手はケイブスパイダーに向けられている?どうしてケイブスパイダーに力を使おうとする?
「……っ」
ニンゲンは酷い奴、リーフもユウキもニンゲンに変わりは無い。
だから思い出せ私っ!どれだけ酷いことをされた?ニンゲンにどれだけ大切なものを壊された?
思い…...出した!ニンゲンは敵だ、絶対に許してはいけない敵なんだ!
数々の過去の出来事が私の思考を塗り替え、普段の思考にもど――「絶対にあなたのことを助けてみせる。」
「…………!」
昨日のリーフが私に言った言葉を思い出し、ノイズとなって私の意識を邪魔した。
「リーフっ!」
リーフが2匹のケイブスパイダーに噛み付かれ、その場で倒れてしまった。しかしリーネがブルーフィッシュをケイブスパイダーに投げつけたことでケイブスパイダーの攻撃はほんの少しの間だけ止まる。
「すぐに助けに行かないと……このっ、今更Eランクの魔物程度に押されるわけにはいかないっての!」
俺の左腕に糸を巻き付けているケイブスパイダーに向かって俺は言う。糸を引かれケイブスパイダーはもう目と鼻の先だ。糸は思っていたよりも丈夫で短剣で斬りかかってもほんの少し斬り込みが入るのみ。
「だったらこれでどうだ〈不可視の刃よ・鋭く切り刻め〉!」
糸に向かって中級風属性魔法の『エアブレード』を放った。俺の真・無属性で無属性となっているが、特に影響はなくスパッと糸を断ち切ることができた。
「〈赤き炎を纏いし火矢よ・刺し射抜け〉!」
かなりの力で引っ張っていたのか、糸が切れた途端勢いよく後ろにひっくり返ったケイブスパイダーの頭目掛けて『ファイアアロー』を集中砲火させると耐久力はさほどないのか一撃で倒すことができた。だが、喜んでいる場合ではない。すぐにリーフとリーネの助けに向かわないといけない。
「リーネ?」
ケイブスパイダーを倒し、後ろを見るとリーネは手をケイブスパイダーに向けて構えている。まるで今から魔法でも使うような感じだ。だが、リーネはそのままの体勢で動く気配はない。
「くそっ、間に合え!『無を解放する』!」
まだ俺の魔法の射程ではケイブスパイダーまで届かない。リーネになんらかの原因があって魔法が使えないのなら俺がケイブスパイダーを倒すしかない。『無の加護』を再度使用し、黄色に変色した結晶を握り潰す。ケイブスパイダーとほぼ同じところにいる2人に誤射しないように魔法制御力が比較的低い雷属性を選択し、詠唱をしながら全力で駆け出す。
「〈痺れの荒縄よ〉、〈集いし魔力よ〉!」
詠唱中に魔法の有効範囲内に入った途端に俺は雷属性となった『エレキバインド』で1匹目のケイブスパイダーを拘束し、誤射を防ぐため使い慣れていてなおかつ効果範囲の狭い『マジックショット』でリーフの背中に乗っていたケイブスパイダーを吹き飛ばす。
「フシュ!」
吹き飛ばした方のケイブスパイダーは少し動きが鈍くなったが、体制を立て直して俺に目掛けて糸を吐いてくる。
「〈風よ阻め〉、〈更なる魔力纏いて・爆ぜよ魔弾〉!」
だが俺のところに来る前に『ウィンドブロウ』で糸を吹き飛ばして無効化し、『マジックボム』を発動する。弧を描いて魔力の塊がケイブスパイダーの背中に直撃し、爆発後には背中に大きな穴を開けて絶命していた。
「これで最後だ、〈不可視の刃よ・鋭く切り刻め〉!」
『エレキバインド』で身動きの取れないケイブスパイダーに『エアブレード』を放ち、何とか殲滅に成功した。
「はぁ……はぁ……リーフ大丈夫か!?」
全力疾走で乱れた呼吸を正しながらリーフに駆け寄る。
「だ、……ぃ、じょ……ぶ……です」
見るからに辛そうな表情で、さらに全身どころか口を動かすのも精一杯な状況だが大丈夫ですとリーフは言う。
「痛みはあるか?」
「……っ」
リーフはゆっくりと首を横に振る。それを見て動かしても大丈夫な様だったのでリーフに触れるとリーフの表情は辛そうなものへと変化する。
「大丈夫か!?」
「痺れが……少、し……強くなる……だけで、す」
「そうか……ならすまないが少しだけ我慢してくれ。」
そう言ってリーフを背負い、その場で顔を伏せているリーネに手を差し伸べる。
「リーネ、馬に戻ろう。それと、リーフを守ろうとしてくれてありがとな。ブルーフィッシュは……うん、流石にあれはもう食べられないけど。」
土まみれになっているブルーフィッシュを見て俺は苦笑いをしていると俺の言葉を聞いてリーネは顔を上げた。
「なんで……お礼なんか言うの?私が……私が来たから、私が攻撃されそうになったからこいつはこうなったんでしょ。」
「確かにそうだけど、でもリーネはリーフを守ってくれたじゃないか。リーフの前に立ってあえてケイブスパイダーを自分に引きつけようとしたんだろ?」
「ち、ちがっ……私は……私はっ!」
「ありがとな」
明らかに動揺しているリーネに優しくできるだけ笑顔で俺はそう言った。それを聞いたリーネは口を開けたまま固まり、数秒後にハッとして唇を噛み締めた。
「おっ、おい血が」
「ほっといて!」
リーネに手を伸ばそうとすると思いっきり手をはたかれる。
「お前達の予想どうり、私はニンゲンの奴隷。」
「えっ……」
「昨日の話は聞こえてた。獣人は身体能力に優れている。もちろんここも。」
リーネは自分の耳に触れて話を続ける。
「私はずっと奴隷生活で主人にはたくさん酷い目に合わされた。奴隷になる前もニンゲンに私のたくさんのものを奪われ、壊されてきた。私は……私はこの首輪が取れたらニンゲンに復讐するって決めてる!だから……だから私はリーフを助けようとして助けたわけじゃ……ない!ニンゲンなんて……助けないの!」
怒りの感情を俺にぶつけたリーネははぁはぁと、息を乱して俺達から逃げるように真逆の方向に走ろうとする。
「あぐっ!」
数歩走ったところでリーネからバチバチっと激しい音が響いた。走っていたリーネは転び、苦しげに首元に手をやる。
「リーネっ!?」
「リーネ……ちゃん!ユウキ、さん私は大丈夫……なので、リーネちゃんを!」
リーフは痺れが少し治まったのか下ろすように俺に言ってリーネの方を心配そうに見つめる。
「……っ、分かった。おいリーネ大丈夫か?」
「ぐ、ううっ」
よく見ると首輪から電撃のようなものがバチバチと放たれており、それがリーネを苦しめているのは明らかだ。
「っ、リーネ助けてやる!」
意を決して首輪を外そうと首輪に手を伸ばし掴む。
「ぐあっ!?」
スタンガンなんてものを食らったことはないが、恐らくそのくらいの威力の電撃が手から全身に駆け巡る。
「ぐぅ……はぁ……止まった?リーネ!〈癒しの光よ・我が身を照らせ〉!」
数秒経つと電撃が止まる。手がピクピクと震え、痛みが続くが歯を食いしばって耐え倒れているリーネに『ライトヒール』をかける。
「くそっ、なんてものをつけてるんだ。これも奴隷を制御するためのものかよ。」
「うぅ……」
リーネは全身をピクっと震わせながら目に涙を浮かべる。
「ニンゲンは敵……ニンゲンは敵、ニンゲンは敵……」
「リーネ……」
小さく呟くリーネ、この惨状を見て俺はほんの少しだけだがリーネの主人の闇を見たような、そんな気がした。
途中で休憩し、私は苛立ちを解消するため好物であるブルーフィッシュを捕まえようと靴を脱いで川に入った。冷たい水が足を濡らし体が僅かに震えるが、すぐに慣れる。
「……っ、そこ」
川をよく見ていると魚影を察知し、手を動かす。
「うっ……やっぱりまだ痛い。」
しかし、体の傷の痛みで素早く体を動かすことが出来ず逃げられてしまう。
「次こそは……」
もう一度魚影が来るのを待ち、見つけた瞬間手を動かすとなんとかブルーフィッシュを捕獲することに成功した。
「やった……」
肉もいいけど魚も好きだ。せっかく主人から離れられているんだ。そういう時は自分の好きな物を食べたい。そう思いさらにブルーフィッシュを狙おうとすると、ユウキとリーフのいる方向からなにか声が聞こえる。
女の方がうるさいとはいえ移動手段としては使える。何が起こったのか確認するため、私は向かって行った。
「ぁ……ぅ……?」
なにが起きたのか分からない。私に飛びかかってきたケイブスパイダーは私の目の前に入り込んできたリーフの右肩と左の太ももに牙を突き刺した。ケイブスパイダーの牙は麻痺毒を相手に流し込むための器官で、実際目の前のリーフは麻痺毒で動けなくなったのかその場で倒れ込み、小さく声をあげるだけで何も出来ない。2匹のケイブスパイダーがリーフを捕食しようとリーフの体に乗って口を開けた。
話を無視し酷い態度を取った私を庇おうとして死ぬなんて……私からは手出できないからここで死んでくれるなんてちょうどいい
「や、やめて!リーフに触れないで!」
意思とは反対の行動をしてしまった。私はリーフの前に移動しながら手に持っていたブルーフィッシュをリーフに乗っていた1匹に向かって投げた。
「どうして私……」
咄嗟の判断だった。ほんの数時間前まで憎しみの対象だった。ほんの数分前までうるさくて煩わしい女だった。そんな奴が魔物に襲われ動けなくなったんだ。なら放置して始末してもらえばいい。
――なのになんで私は――
ケイブスパイダーはブルーフィッシュに直撃し、ひっくり返った。それを見たもう1匹が私を見て威嚇し、ひっくり返ったケイブスパイダーもほとんどダメージがなかったのか私に近付いてくる。完全に敵として認識された。
戦うことはできる。でも、今の傷付いた状態で戦闘したら……
「……っ!」
ぶるりと背筋が震える。絶対に酷い目にあってしまう。私の力は他のものとは違う。力には代償が付きまとう。もう『あれ』を経験したくない。主人に命令で使わされいつも酷い目にあう。でも今は主人はいないんだ。自分の意思で、自由に選択できるんだ。
「なのに……なんで?」
どうして私の手はケイブスパイダーに向けられている?どうしてケイブスパイダーに力を使おうとする?
「……っ」
ニンゲンは酷い奴、リーフもユウキもニンゲンに変わりは無い。
だから思い出せ私っ!どれだけ酷いことをされた?ニンゲンにどれだけ大切なものを壊された?
思い…...出した!ニンゲンは敵だ、絶対に許してはいけない敵なんだ!
数々の過去の出来事が私の思考を塗り替え、普段の思考にもど――「絶対にあなたのことを助けてみせる。」
「…………!」
昨日のリーフが私に言った言葉を思い出し、ノイズとなって私の意識を邪魔した。
「リーフっ!」
リーフが2匹のケイブスパイダーに噛み付かれ、その場で倒れてしまった。しかしリーネがブルーフィッシュをケイブスパイダーに投げつけたことでケイブスパイダーの攻撃はほんの少しの間だけ止まる。
「すぐに助けに行かないと……このっ、今更Eランクの魔物程度に押されるわけにはいかないっての!」
俺の左腕に糸を巻き付けているケイブスパイダーに向かって俺は言う。糸を引かれケイブスパイダーはもう目と鼻の先だ。糸は思っていたよりも丈夫で短剣で斬りかかってもほんの少し斬り込みが入るのみ。
「だったらこれでどうだ〈不可視の刃よ・鋭く切り刻め〉!」
糸に向かって中級風属性魔法の『エアブレード』を放った。俺の真・無属性で無属性となっているが、特に影響はなくスパッと糸を断ち切ることができた。
「〈赤き炎を纏いし火矢よ・刺し射抜け〉!」
かなりの力で引っ張っていたのか、糸が切れた途端勢いよく後ろにひっくり返ったケイブスパイダーの頭目掛けて『ファイアアロー』を集中砲火させると耐久力はさほどないのか一撃で倒すことができた。だが、喜んでいる場合ではない。すぐにリーフとリーネの助けに向かわないといけない。
「リーネ?」
ケイブスパイダーを倒し、後ろを見るとリーネは手をケイブスパイダーに向けて構えている。まるで今から魔法でも使うような感じだ。だが、リーネはそのままの体勢で動く気配はない。
「くそっ、間に合え!『無を解放する』!」
まだ俺の魔法の射程ではケイブスパイダーまで届かない。リーネになんらかの原因があって魔法が使えないのなら俺がケイブスパイダーを倒すしかない。『無の加護』を再度使用し、黄色に変色した結晶を握り潰す。ケイブスパイダーとほぼ同じところにいる2人に誤射しないように魔法制御力が比較的低い雷属性を選択し、詠唱をしながら全力で駆け出す。
「〈痺れの荒縄よ〉、〈集いし魔力よ〉!」
詠唱中に魔法の有効範囲内に入った途端に俺は雷属性となった『エレキバインド』で1匹目のケイブスパイダーを拘束し、誤射を防ぐため使い慣れていてなおかつ効果範囲の狭い『マジックショット』でリーフの背中に乗っていたケイブスパイダーを吹き飛ばす。
「フシュ!」
吹き飛ばした方のケイブスパイダーは少し動きが鈍くなったが、体制を立て直して俺に目掛けて糸を吐いてくる。
「〈風よ阻め〉、〈更なる魔力纏いて・爆ぜよ魔弾〉!」
だが俺のところに来る前に『ウィンドブロウ』で糸を吹き飛ばして無効化し、『マジックボム』を発動する。弧を描いて魔力の塊がケイブスパイダーの背中に直撃し、爆発後には背中に大きな穴を開けて絶命していた。
「これで最後だ、〈不可視の刃よ・鋭く切り刻め〉!」
『エレキバインド』で身動きの取れないケイブスパイダーに『エアブレード』を放ち、何とか殲滅に成功した。
「はぁ……はぁ……リーフ大丈夫か!?」
全力疾走で乱れた呼吸を正しながらリーフに駆け寄る。
「だ、……ぃ、じょ……ぶ……です」
見るからに辛そうな表情で、さらに全身どころか口を動かすのも精一杯な状況だが大丈夫ですとリーフは言う。
「痛みはあるか?」
「……っ」
リーフはゆっくりと首を横に振る。それを見て動かしても大丈夫な様だったのでリーフに触れるとリーフの表情は辛そうなものへと変化する。
「大丈夫か!?」
「痺れが……少、し……強くなる……だけで、す」
「そうか……ならすまないが少しだけ我慢してくれ。」
そう言ってリーフを背負い、その場で顔を伏せているリーネに手を差し伸べる。
「リーネ、馬に戻ろう。それと、リーフを守ろうとしてくれてありがとな。ブルーフィッシュは……うん、流石にあれはもう食べられないけど。」
土まみれになっているブルーフィッシュを見て俺は苦笑いをしていると俺の言葉を聞いてリーネは顔を上げた。
「なんで……お礼なんか言うの?私が……私が来たから、私が攻撃されそうになったからこいつはこうなったんでしょ。」
「確かにそうだけど、でもリーネはリーフを守ってくれたじゃないか。リーフの前に立ってあえてケイブスパイダーを自分に引きつけようとしたんだろ?」
「ち、ちがっ……私は……私はっ!」
「ありがとな」
明らかに動揺しているリーネに優しくできるだけ笑顔で俺はそう言った。それを聞いたリーネは口を開けたまま固まり、数秒後にハッとして唇を噛み締めた。
「おっ、おい血が」
「ほっといて!」
リーネに手を伸ばそうとすると思いっきり手をはたかれる。
「お前達の予想どうり、私はニンゲンの奴隷。」
「えっ……」
「昨日の話は聞こえてた。獣人は身体能力に優れている。もちろんここも。」
リーネは自分の耳に触れて話を続ける。
「私はずっと奴隷生活で主人にはたくさん酷い目に合わされた。奴隷になる前もニンゲンに私のたくさんのものを奪われ、壊されてきた。私は……私はこの首輪が取れたらニンゲンに復讐するって決めてる!だから……だから私はリーフを助けようとして助けたわけじゃ……ない!ニンゲンなんて……助けないの!」
怒りの感情を俺にぶつけたリーネははぁはぁと、息を乱して俺達から逃げるように真逆の方向に走ろうとする。
「あぐっ!」
数歩走ったところでリーネからバチバチっと激しい音が響いた。走っていたリーネは転び、苦しげに首元に手をやる。
「リーネっ!?」
「リーネ……ちゃん!ユウキ、さん私は大丈夫……なので、リーネちゃんを!」
リーフは痺れが少し治まったのか下ろすように俺に言ってリーネの方を心配そうに見つめる。
「……っ、分かった。おいリーネ大丈夫か?」
「ぐ、ううっ」
よく見ると首輪から電撃のようなものがバチバチと放たれており、それがリーネを苦しめているのは明らかだ。
「っ、リーネ助けてやる!」
意を決して首輪を外そうと首輪に手を伸ばし掴む。
「ぐあっ!?」
スタンガンなんてものを食らったことはないが、恐らくそのくらいの威力の電撃が手から全身に駆け巡る。
「ぐぅ……はぁ……止まった?リーネ!〈癒しの光よ・我が身を照らせ〉!」
数秒経つと電撃が止まる。手がピクピクと震え、痛みが続くが歯を食いしばって耐え倒れているリーネに『ライトヒール』をかける。
「くそっ、なんてものをつけてるんだ。これも奴隷を制御するためのものかよ。」
「うぅ……」
リーネは全身をピクっと震わせながら目に涙を浮かべる。
「ニンゲンは敵……ニンゲンは敵、ニンゲンは敵……」
「リーネ……」
小さく呟くリーネ、この惨状を見て俺はほんの少しだけだがリーネの主人の闇を見たような、そんな気がした。
0
あなたにおすすめの小説
異世界転移したら、神の力と無敵の天使軍団を授かったんだが。
猫正宗
ファンタジー
白羽明星は気付けば異世界転移しており、背に純白の六翼を生やした熾天使となっていた。
もともと現世に未練などなかった明星は、大喜びで異世界の大空を飛び回る。
すると遥か空の彼方、誰も到達できないほどの高度に存在する、巨大な空獣に守られた天空城にたどり着く。
主人不在らしきその城に入ると頭の中にダイレクトに声が流れてきた。
――霊子力パターン、熾天使《セラフ》と認識。天界の座マスター登録します。……ああ、お帰りなさいルシフェル様。お戻りをお待ち申し上げておりました――
風景が目まぐるしく移り変わる。
天空城に封じられていた七つの天国が解放されていく。
移り変わる景色こそは、
第一天 ヴィロン。
第二天 ラキア。
第三天 シャハクィム。
第四天 ゼブル。
第五天 マオン。
第六天 マコン。
それらはかつて天界を構成していた七つの天国を再現したものだ。
気付けば明星は、玉座に座っていた。
そこは天の最高位。
第七天 アラボト。
そして玉座の前には、明星に絶対の忠誠を誓う超常なる存在《七元徳の守護天使たち》が膝をついていたのだった。
――これは異世界で神なる権能と無敵の天使軍団を手にした明星が、調子に乗ったエセ強者を相手に無双したり、のんびりスローライフを満喫したりする物語。
異世界国盗り物語 ~戦国日本のサムライ達が剣と魔法の世界で無双する~
和田真尚
ファンタジー
戦国大名の若君・斎藤新九郎は大地震にあって崖から転落――――気付いた時には、剣と魔法が物を言い、魔物がはびこる異世界に飛ばされていた。
「これは神隠しか?」
戸惑いつつも日本へ帰る方法を探そうとする新九郎
ところが、今度は自分を追うように領地までが異世界転移してしまう。
家臣や領民を守るため、新九郎は異世界での生き残りを目指すが周囲は問題だらけ。
領地は魔物溢れる荒れ地のど真ん中に転移。
唯一頼れた貴族はお家騒動で没落寸前。
敵対勢力は圧倒的な戦力。
果たして苦境を脱する術はあるのか?
かつて、日本から様々なものが異世界転移した。
侍 = 刀一本で無双した。
自衛隊 = 現代兵器で無双した。
日本国 = 国力をあげて無双した。
では、戦国大名が家臣を引き連れ、領地丸ごと、剣と魔法の異世界へ転移したら――――?
【新九郎の解答】
国を盗って生き残るしかない!(必死)
【ちなみに異世界の人々の感想】
何なのこの狂戦士!? もう帰れよ!
戦国日本の侍達が生き残りを掛けて本気で戦った時、剣と魔法の異世界は勝てるのか?
これは、その疑問に答える物語。
異世界よ、戦国武士の本気を思い知れ――――。
※「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも投稿しています。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました
まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。
その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。
理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。
……笑えない。
人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。
だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!?
気づけば――
記憶喪失の魔王の娘
迫害された獣人一家
古代魔法を使うエルフの美少女
天然ドジな女神
理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ
などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕!
ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに……
魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。
「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」
これは、追放された“地味なおっさん”が、
異種族たちとスローライフしながら、
世界を救ってしまう(予定)のお話である。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
霊力ゼロの陰陽師
テラトンパンチ
ファンタジー
生まれつき霊力を持たない少年、西園寺玄弥(さいおんじげんや)。
妖怪の王を封じた陰陽師の血を引きながら、彼だけが“無能”と呼ばれていた。
霊術学院で嘲笑され、才能の差を突きつけられる日々。
それでも諦めきれなかった彼の前に現れたのは、王と対立する最強クラスの妖怪――九尾・葛葉。
「貴様の力は、枯れているのではない。封じられているだけだ」
仮契約によって解かれた封印。
目覚める霊力。動き出す因縁。
これは、無能と蔑まれた少年が、仲間と共に妖怪の王へ挑む物語。
巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった
ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。
学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。
だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。
暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。
よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!?
……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい!
そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。
赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。
「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」
そう、他人事のように見送った俺だったが……。
直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。
「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」
――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。
異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』
見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装…
俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。
突然の事で戸惑うクラスメート達…
だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。
「またか…」
王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。
そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。
そして俺はというと…?
『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』
「それよりも不知火君は何を得たんだ?」
イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。
俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。
その場にいた者達は、俺の加護を見ると…
「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。
『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』
王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。
まぁ、その方が気楽で良い。
そして正義は、リーダーとして皆に言った。
「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」
正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。
「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」
「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」
「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」
「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」
「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」
「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」
「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」
俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。
「その…鎧と剣は?」
「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」
「今迄って…今回が2回目では無いのか?」
「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」
俺はうんざりしながら答えた。
そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。
いずれの世界も救って来た。
そして今度の世界は…?
6月22日
HOTランキングで6位になりました!
6月23日
HOTランキングで4位になりました!
昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°.
6月24日
HOTランキングで2位になりました!
皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる