憧れの世界は牙を剥く

奈倉ゆう

文字の大きさ
8 / 82
2章 ビギシティと出会い

初めての戦闘

しおりを挟む
「……ここが人間界か。」

 べシールに転移してもらった俺は周りを見渡す。

「すごい光景だな。」

 一面平原で穏やかな風が吹き、花々が咲き乱れていた。神界を思い浮かばせてくれる光景を少し見ていたが1本の20mほどもある大きな木を見てべシールの言葉を思い出した。

「あの木の方向にずっと進めばビギシティ?っていう所に着くのか。」

 木の方向へと歩きながら今後の方針を立てる。

「ビギシティに行ったら冒険者ギルドがあるんだよな。
 まずは、ビギシティに行って宿を確保して冒険者ギルドで登録するか。そこからは依頼を受けながらステータスの上昇とあと、スキルも習得しなくちゃな。」

 やるべきことが決まり、頬をパシッと叩き気合いを入れる。








「あれは……スライム?」

 歩いていると30cmほどの青色のスライムが数十メートル先にいた。
 先程までは辺りにはほとんど魔物がいなかったが、場所を移動したからか、回りには少々の魔物がいた。

「もっと向こうにはゴブリンか。」

 緑色の肌をした子供程度の身長のゴブリンも数体確認できた。
 手には木製の亀裂が入っているボロボロの棍棒を持っている。


「こいつらみたいな一般的な魔物も記憶にあるな。スライムはGランク、ゴブリンはFランクの魔物……べシールの言ってた通りEランクの俺なら大丈夫だろうけど、初戦闘だから気をつけよう。」

 進路上どうしても邪魔なので、自分の力を確認することも兼ねて戦闘することにする。
 各属性の初級魔法のみ記憶にあるため一応は戦える。

「〈集いし魔力の塊よ・我が手より放たれよ〉」

 無属性初級魔法『マジックショット』の射程距離までスライムに近づき手を前に構え、呪文を詠唱する。
 スライムは俺に気づき突進しようとしてくるが詠唱は完了している。

「ピギィ!?」

 俺の手から10cmほどの魔力の塊が真っ直ぐ飛んでいきスライムを吹き飛ばした。
 しかし、一撃では仕留められずスライムはぴょんぴょんと俺の方に向かってくる。

「やっぱり初級魔法じゃこの程度か……。」

『マジックショット』の攻撃力はG+程度とめっちゃくちゃ攻撃力が低い。

「〈集いし〉……いったぁ!?」

 再び詠唱しようとすると今度こそスライムが突進し、俺の腹にスライムの体がめり込む。
 まるで思いっきりバスケットボールを当てられた感じだ。
 しかも今の俺は防具なんて持ってなく、今来ているのは制服のみ。
 大した防御力もないため、Gランクのスライムにすら少しではあるがダメージを与えられてしまい、詠唱を中断してしまった。

「ちっ」

 続けて突進してくるスライムを今度は横に飛んで回避し、

「〈集いし魔力の塊よ・我が手より放たれよ〉!」

 スライムに照準を合わせ、再び『マジックショット』を放つ。
 スライムは俺に突進を回避されて無防備の状態で『マジックショット』をくらい、形を保てずに消滅した。

「た、倒したのか……。」

 消滅したスライムを見ながら呟く。

「ギャギャ!!」

「え……」

 背後から嫌な予感がした。まぁ、近くであんだけ暴れれば気づかれるだろうけどと思いながら後ろを向く。
 ゴブリンだった。しかも2体。戦闘態勢でいまにも棍棒で殴りかかってきそうだ。

「いいぜ、ぶっ倒してやるよ。」

 強気に挑発しゴブリンに攻撃を促す。

「「ギャギャ!!」」

 俺の挑発に乗せられたのか、激怒したかのように棍棒を振り回してくる。
 簡単な挑発だがここまで激怒してくれると助かる。
 冷静さを失ってくれないとこれは失敗するからな。

「〈我・害する者を穿つ力を求む〉」

 無属性初級魔法『パワーライズ』。
 体の一部を魔力で一定時間強化する魔法だ。
 本来は拳や足を強化して敵を殴ったり蹴ったりする魔法だが今回は攻撃に使用する訳では無い。
 片足に『パワーライズ』をかけその足で地面を蹴って後ろに飛ぶ。

「うおっ……〈深く沸き立つ黒煙よ・幻影となれ〉!」

 思った以上に飛んだことにびっくりしながらも闇属性初級魔法『ダークスモーク』を発動する。
『ダークスモーク』は相手に黒い煙の幻影を見せる魔法だ。これによってゴブリンは煙の幻影で視界が奪われ混乱し、俺には黒い煙は幻影であるため安全にゴブリン達を倒すことが出来る。
 とはいえ、この魔法は本来闇属性で俺の真・無属性により無属性魔法となっているため、効果も効果時間も本来の『ダークスモーク』には劣るため早めに決着をつけなければならない。
 しかし、今の俺のステータスでどんな初級魔法を使ったとしてもゴブリンを一撃で倒せる自信はない。

「こうなったら、1体まず先に倒すか。〈集いし魔力の塊よ・我が手より放たれよ〉!〈小さき火種よ・火球になれ〉!」

「ギャァ!」

『マジックショット』を混乱しているゴブリンに放ち、その直後に追い打ちをかけるようにさらに火属性初級魔法『ファイア』を準備する。俺の手に宿った小さな炎の灯火が魔力を吸い上げ、『マジックショット』よりも少しだけ大きな火球が出来る。

「行け!」

「ギャァァァ!!」

『ファイア』は同じゴブリンに直撃し、弱っていたゴブリンの体を焼き尽くした。

「……っ!」

 もう片方のゴブリンが背後から棍棒を振ってきた。
 あのゴブリンに意識を集中しすぎたようだ。
 まだ強化されている足でゴブリンの棍棒に向かって回し蹴りをお見舞する。この距離だと詠唱する余裕が無い。
 強化されているため俺の蹴りでゴブリンの棍棒が吹っ飛ぶ。

「ギャ!?」

「〈集いし魔力の塊よ・我が手より放たれよ〉」

 棍棒に一瞬だけ意識を持っていかれたゴブリンの頭を掴み、ゼロ距離で頭に『マジックショット』を放つ。
 いくら初級魔法でもゼロ距離で、しかも頭に食らったため一撃で倒せた。

「うわ……。」

 ゴブリンの緑色の血が手と全身に少しかかる。

「……これ、早く宿で洗わんとな。」

 進路上の邪魔がいなくなったので俺は手を振って血を落とし先を急いだ。







 今回使用した魔法

 マジックショット 無属性初級魔法
 攻撃力 G+
 魔法制御力 G
 消費魔力量 G+
 射程 F-
 魔法発動速度 F++
 詠唱
 集いし魔力の高まりよ・我が手より放たれよ
 効果
 10cmほどの魔力の塊を放つ魔法。

 パワーライズ 無属性初級魔法
 肉体強化値 F+
 魔法制御力 F-
 魔法効果時間 F
 消費魔力量 G
 詠唱
 我・害する者を穿つ力を求む
 効果
 体の一部の身体能力を少し上昇する。

 ファイア 火属性初級魔法
 本家
 攻撃力 F+
 魔法制御力 F-
 消費魔力量 F
 射程 F-
 魔法発動速度 F
 詠唱 
 小さき炎の灯火よ・我が手に宿りて・火球となれ
 効果
 手から15cmほどの大きさの火の球を放つ魔法。

 真・無属性ver ファイア
 攻撃力 F-
 魔法制御力 F
 消費魔力量 F-
 射程 F-
 魔法発動速度 F
 詠唱 
 小さき火種よ・火球になれ

 ダークスモーク 闇属性初級魔法
 本家
 影響力 F+
 魔法制御力 G++
 魔法効果時間 F
 消費魔力量 F-
 魔法発動速度 F--
 詠唱
 深く沸き立て幻影よ・黒き煙映し・惑わせよ
 効果
 対象に黒煙の幻影を見せる。

 ダークスモーク 真・無属性ver
 影響力 F-
 魔法制御力 G+
 魔法効果時間 G++
 消費魔力量 F--
 魔法発動速度 F--
 詠唱
 深く沸き立つ黒煙よ・幻影となれ




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転移したら、神の力と無敵の天使軍団を授かったんだが。

猫正宗
ファンタジー
白羽明星は気付けば異世界転移しており、背に純白の六翼を生やした熾天使となっていた。 もともと現世に未練などなかった明星は、大喜びで異世界の大空を飛び回る。 すると遥か空の彼方、誰も到達できないほどの高度に存在する、巨大な空獣に守られた天空城にたどり着く。 主人不在らしきその城に入ると頭の中にダイレクトに声が流れてきた。 ――霊子力パターン、熾天使《セラフ》と認識。天界の座マスター登録します。……ああ、お帰りなさいルシフェル様。お戻りをお待ち申し上げておりました―― 風景が目まぐるしく移り変わる。 天空城に封じられていた七つの天国が解放されていく。 移り変わる景色こそは、 第一天 ヴィロン。 第二天 ラキア。 第三天 シャハクィム。 第四天 ゼブル。 第五天 マオン。 第六天 マコン。 それらはかつて天界を構成していた七つの天国を再現したものだ。 気付けば明星は、玉座に座っていた。 そこは天の最高位。 第七天 アラボト。 そして玉座の前には、明星に絶対の忠誠を誓う超常なる存在《七元徳の守護天使たち》が膝をついていたのだった。 ――これは異世界で神なる権能と無敵の天使軍団を手にした明星が、調子に乗ったエセ強者を相手に無双したり、のんびりスローライフを満喫したりする物語。

異世界国盗り物語 ~戦国日本のサムライ達が剣と魔法の世界で無双する~

和田真尚
ファンタジー
 戦国大名の若君・斎藤新九郎は大地震にあって崖から転落――――気付いた時には、剣と魔法が物を言い、魔物がはびこる異世界に飛ばされていた。 「これは神隠しか?」  戸惑いつつも日本へ帰る方法を探そうとする新九郎  ところが、今度は自分を追うように領地までが異世界転移してしまう。  家臣や領民を守るため、新九郎は異世界での生き残りを目指すが周囲は問題だらけ。  領地は魔物溢れる荒れ地のど真ん中に転移。  唯一頼れた貴族はお家騒動で没落寸前。  敵対勢力は圧倒的な戦力。  果たして苦境を脱する術はあるのか?  かつて、日本から様々なものが異世界転移した。  侍 = 刀一本で無双した。  自衛隊 = 現代兵器で無双した。  日本国 = 国力をあげて無双した。  では、戦国大名が家臣を引き連れ、領地丸ごと、剣と魔法の異世界へ転移したら――――? 【新九郎の解答】  国を盗って生き残るしかない!(必死) 【ちなみに異世界の人々の感想】  何なのこの狂戦士!? もう帰れよ!  戦国日本の侍達が生き残りを掛けて本気で戦った時、剣と魔法の異世界は勝てるのか?  これは、その疑問に答える物語。  異世界よ、戦国武士の本気を思い知れ――――。 ※「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも投稿しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

霊力ゼロの陰陽師

テラトンパンチ
ファンタジー
生まれつき霊力を持たない少年、西園寺玄弥(さいおんじげんや)。 妖怪の王を封じた陰陽師の血を引きながら、彼だけが“無能”と呼ばれていた。 霊術学院で嘲笑され、才能の差を突きつけられる日々。 それでも諦めきれなかった彼の前に現れたのは、王と対立する最強クラスの妖怪――九尾・葛葉。 「貴様の力は、枯れているのではない。封じられているだけだ」 仮契約によって解かれた封印。 目覚める霊力。動き出す因縁。 これは、無能と蔑まれた少年が、仲間と共に妖怪の王へ挑む物語。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

処理中です...