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2章 ビギシティと出会い
憧れた子
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「ごめんなさいツキモトさん」
ヒューデットを倒し、息を整えていると、リリィが謝ってきた。
「私が何も考えずに飛び出したからツキモトさんに大怪我負わせちゃいました。皆にも怪我させてしまって……」
再び涙ぐみ声を震わせる。
「俺は大丈夫だ。だけどな、ヒューデットはアイオンも俺も死にかけるほどに強い。しかもさっきのは通常種よりも強い変異種だ。さっきみたいに飛び出したりするのはダメだぞ?」
「はい……ご、ゴメンな……さい」
「よし、分かったのなら大丈夫だ。」
できるだけ優しく注意し、それでおしまいにする。
「それで……皆は大丈夫か?」
「俺達は大丈夫だけど……ランディ平気?」
座り込んだドリバーは、殴られた箇所を抑えているランディを見る。
「な、なんとか……いてて」
口を開くが、喋ると痛むようでその場でうずくまる。
「ちょっと、見せてくれ。」
厚めのレザーアーマーと服を脱がし、攻撃を受けた箇所を見てみる。
「胸のあたりが腫れ上がってるな。〈癒しの光よ・我が身を照らせ〉……まだだな。
〈癒しの光よ・我が身を照らせ〉」
『ライトヒール』をかけるが、魔石の効果で回復力がE+になったため、もう一度『ライトヒール』をかけて、腫れが収まる。
「どうだ、まだ痛むか?」
「まだ、少し痛いけど、動けないほどじゃないです。ありがとうございます。」
にこりとランディは笑いながら、服とレザーアーマーを着る。
そして、さっき投げ捨てた盾を拾う。
「ボロボロになっちゃったな。」
ドリバーがランディの盾に触れる。
木製の盾はところどころにヒビが入り、ヒューデットの攻撃を受け、一部完全に割れて小さくなっており、盾としての役目はもう果たせなさそうだ。
「仕方ないよ、またビギシティに帰って新しいのを買わないと。」
「あの……ツキモトさん。」
2人の会話を聞いていると、リーエンが歩いて来る。
「アイオンさんに『ヒール』を掛け続けていたんですが、未だに目を覚まさないんです。」
どうやら子ども達が戦っていた時、リーエンはアイオンを起こそうと何度も『ヒール』を掛けていたらしい。
「俺が見てみる。」
アイオンは少し離れた場所で仰向けの状態でいた。
「〈癒しの光よ・我が身を照らせ〉」
しゃがんでアイオンに向かって『ライトヒール』を放つ。リーエンの『ヒール』では治らなかった傷が治っていくが、アイオンは気絶したままだ。
「起きないな……もう日も暮れるから今日は野宿だな。
みんなは大丈夫か?」
「俺達は大丈夫。な、皆?」
ドリバーが仲間にそう問いかけると、全員がこくりと頷く。
「そうか、リーエンは大丈夫か?母親は体調が悪いと言っていたが……。」
「1日くらいなら大丈夫です。前にも、1日野宿して帰ったこともありますので。」
「じゃあ皆大丈夫だな。とりあえず少し移動するか、ここにはヒューデットの死体があるから魔物が寄ってくるかもしれないし。……っと」
「大丈夫ですか、ツキモトさん?」
そう言いながら俺は立ち上がろうとすると、ふらっと目眩が起こる。とっさにリーエンが支えてくれたおかげで倒れずにすんだが、気分が優れない。
体力もあまりないし、魔力もさっき魔石を使って回復させたが、魔法の使いすぎでほとんど魔力切れで体に力が入らない。
「大丈夫だ。」
俺は腰袋から中級魔石を1つ取り出し、砕いて魔力を回復させる。
魔力は全快には程遠いが、体に力が少し戻る。
……あと、中級魔石も中級ポーションも2個のみ。
ビギシティに戻るのにまだ距離はあるし、大事に使わないと。
「俺はアイオンを担ぐから皆は辺りを警戒しながら進んでくれ。魔物に見つからないいい感じの場所で野宿だ。」
その言葉に全員が頷き、俺はアイオンを背中に担ごうとする。
「お、重い……」
アイオン自身もかなり体重がある上、装備もかなりの重さだ。
だからといって装備品を子供達に持ってくれと言えば、その分警戒に集中できなくなる。
「仕方ない……〈我は力を求む〉」
デュアルアクションで両腕を強化し、アイオンを担ぐ。
なんとか持つことが出来るが、進行スピードはかなり遅い。
「ここら辺で野宿とするか。」
数分ほど歩き、アイオンをゆっくりと下ろす。
途中で魔物と出会ったが、魔物はゴブリンやスライムと弱い魔物ばかりで、数も少なく難なく子ども達だけでも対処出来ていた。
「焚き火を起こすために木を取ってこないといけないな。
あと、何か食べ物も必要か。」
「じゃあ、俺とレンリとラウで獲物を捕ってくる。その間にランディとリリィで木を集めておいてくれ。兄ちゃんとリーエンさんはアイオンさんの様子を見ておいて。」
「別れるのか?流石に危険だと思うが……。」
「そこまで離れなければ大丈夫だと思う。それに兄ちゃんはまだ本調子じゃないでしょ?俺達に任せておいてよ!」
ドリバーはにこりと笑うと、他の子供達に指示を出し、二手に分かれて行動を開始した。
「まさか、子どもに心配されるとはな……」
その場で腰を下ろし、自嘲気味に呟く。
「でも、あなたがあそこでヒューデット達を倒してくれなかったら全滅していましたよ。」
宥めるようにリーエンが言い、少しだけ気持ちが軽くなる。
「そうか……ならここは少し甘えて待っておくとするか。」
それにしてもドリバーは、周りの状況が見えているし、判断も早い。さっき魔物に遭遇した時も、適切な指示であっという間に倒した。
アイオンの言う通り、将来は立派な冒険者になれそうだな。
「なんとかチキンバード2体は確保出来たな。」
兄ちゃんとリーエンさんと別れて10分ほど、運良くヒューデットと遭遇することなく、チキンバードを2体倒すことに成功した。
「よし、兄ちゃんにはあまり遠くには行かないと伝えたから、ここら辺で戻るとしようか。日ももう落ちる頃だし。」
「そうだな、俺達だけじゃヒューデットの相手はまだ無理だしな。」
俺の言葉にレンリが苦笑いしながら口にする。
「でも、さっき少しだけど私たち何とか相手できてたわね。もうちょっとくらいいいんじゃない?」
「まあそうだけど、でもその結果ランディの盾が壊れてランディ自身も怪我して仕留めきれなかったから、俺達にはまだヒューデットは早いと思う。」
ラウが少し不機嫌そうな声で言うが、リーダーとして正論を突きつける。じゃないと大怪我、あるいは死んでもおかしくないから。
「変異種だったから倒せなかっただけじゃない。通常種なら私達でも……」
「それでもだよ。大体あのヒューデットは変異種だったけど、兄ちゃんがその前にかなりダメージを与えて、それでも倒せなかったんだから俺達にはまだヒューデットは早いと認めないと早死するよ。
それに、ランディもリリィもいない今じゃ、完全に負ける。」
ランディは俺達を守ってくれる盾だし、リリィは後衛から俺達のサポートをしたり、攻撃魔法で相手を倒したり、倒せなかったとしても攻撃の隙を作ってくれたりと、さすがは大魔法使いを目指すと豪語する魔法使いだ。
そんな2人がいないなか、強敵と遭遇する可能性を高めるのは危険だ。
「……分かったわよ。」
頬をふくらませながらも、ラウは納得してくれたのか、大人しく後ろを着いてくる。
ラウはEランクにしては、優れた弓術士だが、年上以外には、基本強気な態度で接し、負けず嫌いで強敵相手でも怯まずに戦いを仕掛けてしまう。
おかげで何度かパーティーメンバーが危険な目にあったこともあるが、弓術士としての腕は優秀で、ラウの力が必要になったことも沢山ある。
負けず嫌いな性格がどうにかなればなあと思ったことは1度や2度では無いが、それでも頼れる仲間だ。
最近では暴走した時は、俺が落ち着かせることでなんとか、強敵との戦闘を回避している。
「右30m先、グレイウルフだ。多分、チキンバードの血の匂いに気づいたんだと思う。」
真っ先にグレイウルフに気づいたレンリが、俺達に向かって言い、俺に戦うか逃げるかこちらを見てくる。
グレイウルフはヨダレを垂らしながら、グルルルと唸りながら、距離をゆっくりと詰めてくる。
「戦おう、匂いを辿られて後で野宿する場所で暴れられても困るからね。」
そう言い、チキンバードをその場において、俺は剣を構える。それに続いて、レンリは拳を、ラウは弓に矢を番える。
「レンリはグレイウルフが隙を見せた時に攻撃を、ラウは積極的に攻撃を仕掛けてくれ。グレイウルフの攻撃は俺が受け持つ。」
「分かった」
「OKよ」
レンリはうちのメンバーの中では、1番ランクが低く、Fランクだ。グレイウルフはEランクであるため、攻撃を受けないことに徹したほうがいい。
それに対してEランクであり、遠距離攻撃が主なラウには、ダメージを稼いでもらいつつ、隙を作ってもらう。
その時まで俺は攻撃しつつ、2人を守る盾役となり、チャンスが来たらレンリと一緒になって攻撃する。
「グルァ!!」
口を大きく開きながら、グレイウルフが1番先頭にいる俺に向かって向かってくる。
「『ボディエンハンス』、『ソードリッパー』!」
『ボディエンハンス』を発動し、身体能力を向上させ、グレイウルフが噛み付く直前で、3歩下がって、『ソードリッパー』で剣の切れ味を上げる。
「『ナックルアタック』!」
『ソードリッパー』を発動している間に、後ろから口を閉じたグレイウルフの顎下に『ナックルアタック』でアッパーのように、拳を振り上げる。
「グルァ!?」
グレイウルフの頭がレンリの拳で上を向いた直後に、剣で斬り掛かる。
「浅かった!」
剣がグレイウルフに当たる前に、グレイウルフは1歩後退し、思っていたよりもダメージをいれることは出来なかった。
しかし……
「どきなさい、『ダブルショット』!」
後ろからのラウの声に俺とレンリが反応し、横にズレると、2発の弓矢が飛来し、胴体に1発目が、左の前足に2発目が突き刺さる。
2発目は魔法の矢であるため、数秒で消えるが、そこには穴が空いており、動きにくくすることに成功する。
「『ブレードスラッシュ』、『ソードスラッシュ』!」
剣を水平に振って『ブレードスラッシュ』を発動し、間髪入れずに上から下に剣を振って『ソードスラッシュ』を発動する。
「グル……ッ……」
足に穴が空いていたため、思うように回避できなかったグレイウルフは2発の戦技をまともにくらい、絶命した。
「ちょっと……私あまり攻撃できなかったじゃない。」
不満そうにラウは弓を肩にかけながら呟く。
「あ……すまん、ちょっと俺が攻撃しすぎたな。」
「確かにさっきの移動する時のゴブリン達との戦闘の時もだけど、ドリバー結構攻撃してるよね。
今までは、もう少し慎重だった気がするけどどうかしたの?」
ラウと違って不満げではないが、不思議そうにレンリにも見つめられる。
「あー……多分、ツキモトの兄ちゃんの戦闘を見たからだと思う。」
がっつり心当たりがあり、頭を軽くかきながら口にする。
「その気持ちわかる!」
別の方から声がしてそこを見ると、なにやら興奮しているリリィがいた。その後ろにはランディもおり、遅れてこっちに向かってくる。
「あら、リリィにランディじゃない?焚き火用の木は集めたの?何も持っていないようだけど。」
「『マジックポケット』の中に木は入れてあるよ。
なにやら戦闘音が聞こえるから、慌てて走ってきたの!」
ラウの疑問にリリィが答え、そしてリリィは俺に視線を向ける。
そしてさっきまで涙ぐんでいたのが嘘かのように顔に笑みを浮かべている。
「ツキモトさん凄いよね、あんなにたくさん魔法使えるし、複数体のヒューデットを相手できるなんて!」
リリィのその言葉にとたんに気持ちが高揚し、思った言葉を吐き出す。
「めっちゃ分かる。魔法も凄くて、通常種を2体相手にして直ぐに倒したし、『パワーライズ』であんな軽やかに動けてヒューデットを『ライトソード』で突き刺した時とか、思わず声を上げそうになった。」
「それに多分、ツキモトさんは加護持ちだと思うよ。
あの『無は有に』って言う聞いたこともない詠唱……それを口にした後に出た結晶……あんな魔法見たことないもん。」
「あの……ツキモトさんが凄いのは、僕も分かるけど、とりあえず戻ろうよ。
きっとツキモトさんもリーエンさんも待ってるよ。」
リリィと興奮して喋っていたら横からランディが苦笑いをしながら、俺達を注意した。
「そ、そうだな、じゃあ皆帰ろうか。」
深呼吸をして落ち着く。
「だねっ、またツキモトさんに色々聞いてみよっと。」
リリィは満面の笑みでそう言った。
ヒューデットを倒し、息を整えていると、リリィが謝ってきた。
「私が何も考えずに飛び出したからツキモトさんに大怪我負わせちゃいました。皆にも怪我させてしまって……」
再び涙ぐみ声を震わせる。
「俺は大丈夫だ。だけどな、ヒューデットはアイオンも俺も死にかけるほどに強い。しかもさっきのは通常種よりも強い変異種だ。さっきみたいに飛び出したりするのはダメだぞ?」
「はい……ご、ゴメンな……さい」
「よし、分かったのなら大丈夫だ。」
できるだけ優しく注意し、それでおしまいにする。
「それで……皆は大丈夫か?」
「俺達は大丈夫だけど……ランディ平気?」
座り込んだドリバーは、殴られた箇所を抑えているランディを見る。
「な、なんとか……いてて」
口を開くが、喋ると痛むようでその場でうずくまる。
「ちょっと、見せてくれ。」
厚めのレザーアーマーと服を脱がし、攻撃を受けた箇所を見てみる。
「胸のあたりが腫れ上がってるな。〈癒しの光よ・我が身を照らせ〉……まだだな。
〈癒しの光よ・我が身を照らせ〉」
『ライトヒール』をかけるが、魔石の効果で回復力がE+になったため、もう一度『ライトヒール』をかけて、腫れが収まる。
「どうだ、まだ痛むか?」
「まだ、少し痛いけど、動けないほどじゃないです。ありがとうございます。」
にこりとランディは笑いながら、服とレザーアーマーを着る。
そして、さっき投げ捨てた盾を拾う。
「ボロボロになっちゃったな。」
ドリバーがランディの盾に触れる。
木製の盾はところどころにヒビが入り、ヒューデットの攻撃を受け、一部完全に割れて小さくなっており、盾としての役目はもう果たせなさそうだ。
「仕方ないよ、またビギシティに帰って新しいのを買わないと。」
「あの……ツキモトさん。」
2人の会話を聞いていると、リーエンが歩いて来る。
「アイオンさんに『ヒール』を掛け続けていたんですが、未だに目を覚まさないんです。」
どうやら子ども達が戦っていた時、リーエンはアイオンを起こそうと何度も『ヒール』を掛けていたらしい。
「俺が見てみる。」
アイオンは少し離れた場所で仰向けの状態でいた。
「〈癒しの光よ・我が身を照らせ〉」
しゃがんでアイオンに向かって『ライトヒール』を放つ。リーエンの『ヒール』では治らなかった傷が治っていくが、アイオンは気絶したままだ。
「起きないな……もう日も暮れるから今日は野宿だな。
みんなは大丈夫か?」
「俺達は大丈夫。な、皆?」
ドリバーが仲間にそう問いかけると、全員がこくりと頷く。
「そうか、リーエンは大丈夫か?母親は体調が悪いと言っていたが……。」
「1日くらいなら大丈夫です。前にも、1日野宿して帰ったこともありますので。」
「じゃあ皆大丈夫だな。とりあえず少し移動するか、ここにはヒューデットの死体があるから魔物が寄ってくるかもしれないし。……っと」
「大丈夫ですか、ツキモトさん?」
そう言いながら俺は立ち上がろうとすると、ふらっと目眩が起こる。とっさにリーエンが支えてくれたおかげで倒れずにすんだが、気分が優れない。
体力もあまりないし、魔力もさっき魔石を使って回復させたが、魔法の使いすぎでほとんど魔力切れで体に力が入らない。
「大丈夫だ。」
俺は腰袋から中級魔石を1つ取り出し、砕いて魔力を回復させる。
魔力は全快には程遠いが、体に力が少し戻る。
……あと、中級魔石も中級ポーションも2個のみ。
ビギシティに戻るのにまだ距離はあるし、大事に使わないと。
「俺はアイオンを担ぐから皆は辺りを警戒しながら進んでくれ。魔物に見つからないいい感じの場所で野宿だ。」
その言葉に全員が頷き、俺はアイオンを背中に担ごうとする。
「お、重い……」
アイオン自身もかなり体重がある上、装備もかなりの重さだ。
だからといって装備品を子供達に持ってくれと言えば、その分警戒に集中できなくなる。
「仕方ない……〈我は力を求む〉」
デュアルアクションで両腕を強化し、アイオンを担ぐ。
なんとか持つことが出来るが、進行スピードはかなり遅い。
「ここら辺で野宿とするか。」
数分ほど歩き、アイオンをゆっくりと下ろす。
途中で魔物と出会ったが、魔物はゴブリンやスライムと弱い魔物ばかりで、数も少なく難なく子ども達だけでも対処出来ていた。
「焚き火を起こすために木を取ってこないといけないな。
あと、何か食べ物も必要か。」
「じゃあ、俺とレンリとラウで獲物を捕ってくる。その間にランディとリリィで木を集めておいてくれ。兄ちゃんとリーエンさんはアイオンさんの様子を見ておいて。」
「別れるのか?流石に危険だと思うが……。」
「そこまで離れなければ大丈夫だと思う。それに兄ちゃんはまだ本調子じゃないでしょ?俺達に任せておいてよ!」
ドリバーはにこりと笑うと、他の子供達に指示を出し、二手に分かれて行動を開始した。
「まさか、子どもに心配されるとはな……」
その場で腰を下ろし、自嘲気味に呟く。
「でも、あなたがあそこでヒューデット達を倒してくれなかったら全滅していましたよ。」
宥めるようにリーエンが言い、少しだけ気持ちが軽くなる。
「そうか……ならここは少し甘えて待っておくとするか。」
それにしてもドリバーは、周りの状況が見えているし、判断も早い。さっき魔物に遭遇した時も、適切な指示であっという間に倒した。
アイオンの言う通り、将来は立派な冒険者になれそうだな。
「なんとかチキンバード2体は確保出来たな。」
兄ちゃんとリーエンさんと別れて10分ほど、運良くヒューデットと遭遇することなく、チキンバードを2体倒すことに成功した。
「よし、兄ちゃんにはあまり遠くには行かないと伝えたから、ここら辺で戻るとしようか。日ももう落ちる頃だし。」
「そうだな、俺達だけじゃヒューデットの相手はまだ無理だしな。」
俺の言葉にレンリが苦笑いしながら口にする。
「でも、さっき少しだけど私たち何とか相手できてたわね。もうちょっとくらいいいんじゃない?」
「まあそうだけど、でもその結果ランディの盾が壊れてランディ自身も怪我して仕留めきれなかったから、俺達にはまだヒューデットは早いと思う。」
ラウが少し不機嫌そうな声で言うが、リーダーとして正論を突きつける。じゃないと大怪我、あるいは死んでもおかしくないから。
「変異種だったから倒せなかっただけじゃない。通常種なら私達でも……」
「それでもだよ。大体あのヒューデットは変異種だったけど、兄ちゃんがその前にかなりダメージを与えて、それでも倒せなかったんだから俺達にはまだヒューデットは早いと認めないと早死するよ。
それに、ランディもリリィもいない今じゃ、完全に負ける。」
ランディは俺達を守ってくれる盾だし、リリィは後衛から俺達のサポートをしたり、攻撃魔法で相手を倒したり、倒せなかったとしても攻撃の隙を作ってくれたりと、さすがは大魔法使いを目指すと豪語する魔法使いだ。
そんな2人がいないなか、強敵と遭遇する可能性を高めるのは危険だ。
「……分かったわよ。」
頬をふくらませながらも、ラウは納得してくれたのか、大人しく後ろを着いてくる。
ラウはEランクにしては、優れた弓術士だが、年上以外には、基本強気な態度で接し、負けず嫌いで強敵相手でも怯まずに戦いを仕掛けてしまう。
おかげで何度かパーティーメンバーが危険な目にあったこともあるが、弓術士としての腕は優秀で、ラウの力が必要になったことも沢山ある。
負けず嫌いな性格がどうにかなればなあと思ったことは1度や2度では無いが、それでも頼れる仲間だ。
最近では暴走した時は、俺が落ち着かせることでなんとか、強敵との戦闘を回避している。
「右30m先、グレイウルフだ。多分、チキンバードの血の匂いに気づいたんだと思う。」
真っ先にグレイウルフに気づいたレンリが、俺達に向かって言い、俺に戦うか逃げるかこちらを見てくる。
グレイウルフはヨダレを垂らしながら、グルルルと唸りながら、距離をゆっくりと詰めてくる。
「戦おう、匂いを辿られて後で野宿する場所で暴れられても困るからね。」
そう言い、チキンバードをその場において、俺は剣を構える。それに続いて、レンリは拳を、ラウは弓に矢を番える。
「レンリはグレイウルフが隙を見せた時に攻撃を、ラウは積極的に攻撃を仕掛けてくれ。グレイウルフの攻撃は俺が受け持つ。」
「分かった」
「OKよ」
レンリはうちのメンバーの中では、1番ランクが低く、Fランクだ。グレイウルフはEランクであるため、攻撃を受けないことに徹したほうがいい。
それに対してEランクであり、遠距離攻撃が主なラウには、ダメージを稼いでもらいつつ、隙を作ってもらう。
その時まで俺は攻撃しつつ、2人を守る盾役となり、チャンスが来たらレンリと一緒になって攻撃する。
「グルァ!!」
口を大きく開きながら、グレイウルフが1番先頭にいる俺に向かって向かってくる。
「『ボディエンハンス』、『ソードリッパー』!」
『ボディエンハンス』を発動し、身体能力を向上させ、グレイウルフが噛み付く直前で、3歩下がって、『ソードリッパー』で剣の切れ味を上げる。
「『ナックルアタック』!」
『ソードリッパー』を発動している間に、後ろから口を閉じたグレイウルフの顎下に『ナックルアタック』でアッパーのように、拳を振り上げる。
「グルァ!?」
グレイウルフの頭がレンリの拳で上を向いた直後に、剣で斬り掛かる。
「浅かった!」
剣がグレイウルフに当たる前に、グレイウルフは1歩後退し、思っていたよりもダメージをいれることは出来なかった。
しかし……
「どきなさい、『ダブルショット』!」
後ろからのラウの声に俺とレンリが反応し、横にズレると、2発の弓矢が飛来し、胴体に1発目が、左の前足に2発目が突き刺さる。
2発目は魔法の矢であるため、数秒で消えるが、そこには穴が空いており、動きにくくすることに成功する。
「『ブレードスラッシュ』、『ソードスラッシュ』!」
剣を水平に振って『ブレードスラッシュ』を発動し、間髪入れずに上から下に剣を振って『ソードスラッシュ』を発動する。
「グル……ッ……」
足に穴が空いていたため、思うように回避できなかったグレイウルフは2発の戦技をまともにくらい、絶命した。
「ちょっと……私あまり攻撃できなかったじゃない。」
不満そうにラウは弓を肩にかけながら呟く。
「あ……すまん、ちょっと俺が攻撃しすぎたな。」
「確かにさっきの移動する時のゴブリン達との戦闘の時もだけど、ドリバー結構攻撃してるよね。
今までは、もう少し慎重だった気がするけどどうかしたの?」
ラウと違って不満げではないが、不思議そうにレンリにも見つめられる。
「あー……多分、ツキモトの兄ちゃんの戦闘を見たからだと思う。」
がっつり心当たりがあり、頭を軽くかきながら口にする。
「その気持ちわかる!」
別の方から声がしてそこを見ると、なにやら興奮しているリリィがいた。その後ろにはランディもおり、遅れてこっちに向かってくる。
「あら、リリィにランディじゃない?焚き火用の木は集めたの?何も持っていないようだけど。」
「『マジックポケット』の中に木は入れてあるよ。
なにやら戦闘音が聞こえるから、慌てて走ってきたの!」
ラウの疑問にリリィが答え、そしてリリィは俺に視線を向ける。
そしてさっきまで涙ぐんでいたのが嘘かのように顔に笑みを浮かべている。
「ツキモトさん凄いよね、あんなにたくさん魔法使えるし、複数体のヒューデットを相手できるなんて!」
リリィのその言葉にとたんに気持ちが高揚し、思った言葉を吐き出す。
「めっちゃ分かる。魔法も凄くて、通常種を2体相手にして直ぐに倒したし、『パワーライズ』であんな軽やかに動けてヒューデットを『ライトソード』で突き刺した時とか、思わず声を上げそうになった。」
「それに多分、ツキモトさんは加護持ちだと思うよ。
あの『無は有に』って言う聞いたこともない詠唱……それを口にした後に出た結晶……あんな魔法見たことないもん。」
「あの……ツキモトさんが凄いのは、僕も分かるけど、とりあえず戻ろうよ。
きっとツキモトさんもリーエンさんも待ってるよ。」
リリィと興奮して喋っていたら横からランディが苦笑いをしながら、俺達を注意した。
「そ、そうだな、じゃあ皆帰ろうか。」
深呼吸をして落ち着く。
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リリィは満面の笑みでそう言った。
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仮契約によって解かれた封印。
目覚める霊力。動き出す因縁。
これは、無能と蔑まれた少年が、仲間と共に妖怪の王へ挑む物語。
巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった
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俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。
学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。
だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。
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よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!?
……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい!
そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。
赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。
「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」
そう、他人事のように見送った俺だったが……。
直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。
「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」
――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。
異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎
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『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』
見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装…
俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。
突然の事で戸惑うクラスメート達…
だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。
「またか…」
王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。
そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。
そして俺はというと…?
『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』
「それよりも不知火君は何を得たんだ?」
イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。
俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。
その場にいた者達は、俺の加護を見ると…
「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。
『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』
王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。
まぁ、その方が気楽で良い。
そして正義は、リーダーとして皆に言った。
「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」
正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。
「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」
「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」
「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」
「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」
「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」
「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」
「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」
俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。
「その…鎧と剣は?」
「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」
「今迄って…今回が2回目では無いのか?」
「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」
俺はうんざりしながら答えた。
そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。
いずれの世界も救って来た。
そして今度の世界は…?
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