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2章 ビギシティと出会い
吠える者
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村の奥……そこにある洞窟を目指して村の中を私達はダッシュする。
体力が無くなり、息を整えたくなるが、前にも横にも後ろにもヒューデットが見えるため、止まって休むことなく走り続ける。
「ガァァァッ!」
「はぁ……はぁ……〈照らせよ・癒しを授けたる・優しき光〉!」
1体のヒューデットが私に追いつき、掴みかかろうとするが、腕を掴まれる前に『ライトヒール』の詠唱が完了し、ヒューデット目掛けて発動する。
『ライトヒール』がヒューデットの体を包み込むと、全身がジューと音を立てて焼き爛れ、倒れる。
魔石を使って魔法回復力が1段階低下しているとはいえ、1体ずつしか効果を発揮しない分、範囲回復魔法の『サークルリカバリー』よりも魔法回復力が高いため、1発で倒せるらしい。
まあ、こんなにヒューデットがいる状態で1体倒しても次々追いついてくるため、確実に1体ヒューデットを倒したい時以外は、範囲回復魔法の『サークルリカバリー』の方が多くのヒューデットに攻撃出来るため、『サークルリカバリー』を使用した方が懸命だろう。
「『ダッシュストライク』ッ!」
アレンさんが剣先を少し前にいるヒューデット向けて、体勢を低くし、加速した状態でヒューデットのお腹に剣を突き刺し、強引に剣を振って突き刺さったヒューデットを横に吹き飛ばす。
「……くそ」
小さい頃から私もアレンさんもリーパーさんもこの村に住んでいる。ほとんど顔の知らない村人はいない。
今、アレンさんが倒した村人も私達は知っていた。かなり歳をとっていたにも関わらず、いつも元気に挨拶をして畑仕事をやっていたおじいさんだ。
そのヒューデット化したおじいさんの死体を悔しそうにアレンさんはちらりと見て、小さく呟く。
「お前達もうすぐだ、もうすぐで着くっ!」
嫌な気分を振り払うかのように頭を振り、振り返りながら私達を鼓舞する。
「ああ分かってる!おらっ、『ソードスラッシュ』!」
走りながらリーパーさんも近寄ってくるヒューデットに斬撃を飛ばし、ヒューデットとの距離をつませないように戦技を使って攻撃している。その表情はアドレナリンが出ているのか、興奮しているようで、アレンさんとは大違いで笑みを浮かべている。
「はははっ!まだまだ行くぞ!」
短剣を振り回し、ヒューデット達を斬り刻んでいく。
短剣であるため、リーチが短くヒューデット達から反撃を受け、リーパーさんの体に傷が増えていくが、リーパーさんは気にした様子もなく走りながら次々と斬り裂く。
「ははははははっ!」
「おい、リーパー着いたぞ!早くこの中に入れっ!」
リーパーさんの襟の後ろを掴み、村の奥にある小さな洞窟の中に放り込む。
「リーフ、あそこを狙って魔法を撃て!」
「分かりました!〈集いし魔力よ〉〈集いし魔力よ〉〈集いし魔力よ〉!」
アレンさんと私も洞窟内に入り、ヒューデットが入ってくる前に洞窟の入口の上の方に『マジックショット』を3発ぶつけると、入口あたりの天井が崩壊し、ヒューデットの侵入を阻止した。
「けほっ……けほっ……はぁ……はぁ」
洞窟内に砂埃が充満するが、体力の限界で体が酸素を欲しがっている為、咳き込むのも構わずに酸素を求め、息を吸う。
「はぁ……はぁ……おいリーパー正気に戻ったか?」
息を切らしながらアレンさんがリーパーさんの様子を見る。
「あ……あぁ、すまない。少しハイになってたみたいだ。」
安全を確保できたのが理解出来たのか、興奮状態じゃなくなり、リーパーさんは冷静になったみたいだ。
「とりあえず奥に行こう。ここじゃまだ安心はできない。」
アレンさんが立ち上がり、洞窟の奥を目指す。私とリーパーさんも息を整えて立ち上がり、洞窟の奥に向かう。
全員が無言で洞窟の奥を目指す。
この洞窟は村が魔物に襲われた時に、立てこもるように作られた洞窟だ。しかし、村が襲われることもなく、最近では子ども達の遊び場となっていたが、今になって使うことになるとは思いもしなかった。
「ここが最奥だな。食料と水は……やっぱりないか。」
数分歩き続けると、ひらけた場所に出た。
昔は保存食や水がここにあったみたいだが、魔物の襲撃がなかったことで、子ども達が食べていたと村の人から聞いたことがある。
「私少しだけなら『マジックポケット』に黒パンを入れてます。〈魔法のポケットよ〉」
ビギシティからミラン村に帰る際、道中何かあるといけないため、多少多めに食料を詰め込んでおいたが、馬車の中だ。ほんの少しだけ『マジックポケット』に黒パンがあるが、3人で食べれば、明日の分の食料はなくなるため、一刻も早くミラン村を出ないといけない。
「あぁ、ありがとう。」
黒パンを3人分に分け、手渡して口に運ぶ。
村に作るを優先し、昼の分を抜き、さらにその後の激戦で体力も魔力も大量に使い、皆空腹状態だったようで、あっという間に黒パンがなくなってしまった。
黒パンを食べている間も皆ずっと無言で、ちらりとアレンさんとリーパーさんを見てみる。
「……俺達、皆を殺しちまったな。」
剣についた血を見ながら、アレンさんは小さく呟く。
「殺らないと自分が死ぬ。そう思いながら、考えないように戦っていたが……こうやって落ち着くとどうしても皆を殺した瞬間を思い出しちまう。」
アレンさんの手が小さく震え、片手で顔を覆って言葉を続ける。
「すまない……母さん……」
涙声でアレンさんが呟き、地面に視界を落とす。
「アレンさん……、『マインドヒール』を使いましょうか?」
『マインドヒール』――混乱状態など精神に作用するデバフ効果を打ち消す魔法で、他に精神を回復させることもでき、僅かにだが心の負担を軽減することも出来る魔法だ。
「お前……さっきの『サークルリカバリー』といい、『マインドヒール』といい、色んな魔法を使えるようになったんだな。」
「ビギシティでBランクの魔法使いの方に教わったんです。」
「そうか……『マインドヒール』は大丈夫だ。」
「そうですか……」
力なくアレンさんは頷き、再び地面に視界を落とす。
「なぁ……俺の親父は、まだ生きてるよな」
リーパーさんが呟き、私とアレンさんを見る。
魂が抜けたような表情をしており、さっきまでのリーパーさんとは大違いだ。
「親父は強かったからさ、まだどこかに隠れてるよな?探さないと……。」
「リーパーだめだ!」
急にそんなことを言い出し、立ち上がってふらふらと入口の方向に向かおうとするリーパーさんをアレンさんが止める。
「放せ、アレンっ!俺は親父を見つけに行くんだ!」
リーパーさんの家庭は母親がおらず父親1人でリーパーさんを育てていた。さらに弓の腕も良く、畑仕事がメインなミラン村で珍しく狩りを行う人物で、リーパーさんはそんな父親を尊敬していた。
「お前の親父さんは強い。だからまだ生きていると信じたい気持ちはよく分かる。」
「だったら――」
「だが、もうお前の親父さんは死んだんだ。」
「お前今なんて言った」
怒りの表情が消え、リーパーさんは無表情になる。
感情を読み取れない声でリーパーさんはアレンさんを突き飛ばす。
「何の根拠があってそんなことを口にしたんだアレン?
冗談でも人の親が死んだなんて言うもんじゃないだろ。
」
「……根拠はある。」
「じゃあ、言ってみろよ」
リーパーさんからそう言われ、アレンさんは躊躇うように顔を背けるが、言うべきだと判断したのかアレンさんは口を開く。
「お前が俺の加勢に来る前、お前の親父の姿を見た……ヒューデットとなった姿で。」
「……は?ヒューデットに……親父が?」
「ああ、そして俺は確かに見たんだ。あれはお前の親父さんだった。」
「やめろぉぉぉぉッ!!」
大声を上げて、アレンさんの言葉を聞かないように耳を塞ぐ。
「嘘だ嘘だ嘘だっ!親父は強いんだ!ヒューデットなんて簡単に倒せるはずなんだ!そんな親父が死んだ?そんなわけあるかっ!」
狂ったようにアレンさんに次々と言葉を言い放つ。
リーパーさんの父親は確かに強い。ランクはDで1対1であれば、ヒューデットにも勝てるかもしれない。しかし、あの数のヒューデットを相手にしたとなると、負けてヒューデット化したのもうなずけてしまう。
「リーパー、いくら親父さんが強くてもあの数のヒューデットには勝てない。」
「親父は……強いんだ……」
アレンさんの正論に膝をつきながらぽつりと呟く。
「……なぁ、俺の親父は……その後どうなったんだ?」
「……俺がトドメを指した。」
「そうか……」
予想出来ていたであろう答えにリーパーさんはそう呟き――
「アレンさん、避けてっ!」
「ッ!?」
短剣を突き出したリーパーさんを驚愕の表情でアレンさんは見ながらもギリギリで短剣を回避する。
「お前が……俺の唯一の家族を殺したんだな。ふざけんじゃねぇぞぉぉぉぉ!」
洞窟内が震える程に吠え、短剣を構えてアレンさん目掛けて飛びかかる。
「くっ!」
リーパーさんがアレンさんに体当たりをし、体勢を崩したアレンさんの上に馬乗りになり、短剣を逆手に握ってアレンさんに突き刺そうとする。
「ああああああああッッッ!!」
感情のままに短剣を振り下ろし、アレンさんを殺そうとする。
「やめてくださいリーパーさんっ!〈風よ阻め〉、〈心病みし者・眼に光焼き付け・闇払いたまえ〉ッッ!」
咄嗟に『ウィンドブロウ』をリーパーさんにぶつけ、アレンさんから強引に引き剥がし、『マインドヒール』を発動させる。
光の球が出現し、リーパーさんの目の前で光の球が爆ぜ、精神を癒す光がリーパーさんに流れ込む。
「あ、あああ……」
『マインドヒール』の効果が現れたのか、リーパーさんは短剣を落とし、頭を抱える。
「俺は……俺は……」
「大丈夫か、リーパー?」
アレンさんが立ち上がり、リーパーさんを警戒しながらも、ほっとけないようで少しずつ近寄る。
「す、すまないアレン。俺は……」
「気にするな、誰だって自分の大切な人を殺されたらそうなる。」
「だが、お前も……その母親を自分で殺して、大変なはずなのに……俺はそんなことを考えずにただ自分の怒りのままに喚き散らして……」
リーパーさんは声を震わせる。
「そうだ、俺は母親を殺した。お前の親父さんも……。
だが、このままくよくよしていても何も変わらない。
村の皆を倒してしまった。だからこそ、皆の分まで俺達は生きないといけない。こんなところで仲違いなんてしてる暇はないんだ。
俺はお前を許す。だが、お前に俺は俺のやった事を許せなんて言わない。
でも、俺のことを許してくれるのなら……一緒にこの地獄を乗り切ろう。皆の分まで生きようじゃないか。」
アレンさんはリーパーさんに右手を差し出す。
「許してくれるのか……あんな自分勝手に喚き散らして、さらにはお前を殺そうともしたのに……」
「ああ、もちろんだ。」
その言葉を聞いたリーパーさんは、少し迷い……そしてその手を取った。
「ありがとう、アレン。俺も協力する。この地獄を乗り切るために。
そしてリーフもすまなかった。あんなに取り乱した格好を見せてしまって……そしてありがとう、親友を殺す前に俺を戻してくれて。
もし、お前が戻してくれなかったら今頃きっと……」
途中で話すのを辞め、首を振る。想像したくないのだろう。
「元に戻ってくれて良かったですよ。確かにびっくりはしましたけど、気持ちは分かるので顔を上げてください。」
そうリーパーさんに伝えると、リーパーさんはありがとうと言いながら、顔を上げる。
「さて、気持ちを切り替えて、この地獄を抜け出す方法を考えようか。」
この洞窟に入った時よりも、明るい雰囲気になったところでアレンさんがそう言いながら、方法を考え始めた。
マインドヒール 中級光属性魔法
魔法精神回復力 E++
魔法制御力 E
消費魔力量 E-
魔法発動速度 E
詠唱
心病みし者・眼に光焼き付け・闇払いたまえ
説明
精神に影響する混乱などのデバフ効果を打ち消す魔法。
また、精神を回復することもでき、光を見た者の心の負担を僅かに軽減する。
体力が無くなり、息を整えたくなるが、前にも横にも後ろにもヒューデットが見えるため、止まって休むことなく走り続ける。
「ガァァァッ!」
「はぁ……はぁ……〈照らせよ・癒しを授けたる・優しき光〉!」
1体のヒューデットが私に追いつき、掴みかかろうとするが、腕を掴まれる前に『ライトヒール』の詠唱が完了し、ヒューデット目掛けて発動する。
『ライトヒール』がヒューデットの体を包み込むと、全身がジューと音を立てて焼き爛れ、倒れる。
魔石を使って魔法回復力が1段階低下しているとはいえ、1体ずつしか効果を発揮しない分、範囲回復魔法の『サークルリカバリー』よりも魔法回復力が高いため、1発で倒せるらしい。
まあ、こんなにヒューデットがいる状態で1体倒しても次々追いついてくるため、確実に1体ヒューデットを倒したい時以外は、範囲回復魔法の『サークルリカバリー』の方が多くのヒューデットに攻撃出来るため、『サークルリカバリー』を使用した方が懸命だろう。
「『ダッシュストライク』ッ!」
アレンさんが剣先を少し前にいるヒューデット向けて、体勢を低くし、加速した状態でヒューデットのお腹に剣を突き刺し、強引に剣を振って突き刺さったヒューデットを横に吹き飛ばす。
「……くそ」
小さい頃から私もアレンさんもリーパーさんもこの村に住んでいる。ほとんど顔の知らない村人はいない。
今、アレンさんが倒した村人も私達は知っていた。かなり歳をとっていたにも関わらず、いつも元気に挨拶をして畑仕事をやっていたおじいさんだ。
そのヒューデット化したおじいさんの死体を悔しそうにアレンさんはちらりと見て、小さく呟く。
「お前達もうすぐだ、もうすぐで着くっ!」
嫌な気分を振り払うかのように頭を振り、振り返りながら私達を鼓舞する。
「ああ分かってる!おらっ、『ソードスラッシュ』!」
走りながらリーパーさんも近寄ってくるヒューデットに斬撃を飛ばし、ヒューデットとの距離をつませないように戦技を使って攻撃している。その表情はアドレナリンが出ているのか、興奮しているようで、アレンさんとは大違いで笑みを浮かべている。
「はははっ!まだまだ行くぞ!」
短剣を振り回し、ヒューデット達を斬り刻んでいく。
短剣であるため、リーチが短くヒューデット達から反撃を受け、リーパーさんの体に傷が増えていくが、リーパーさんは気にした様子もなく走りながら次々と斬り裂く。
「ははははははっ!」
「おい、リーパー着いたぞ!早くこの中に入れっ!」
リーパーさんの襟の後ろを掴み、村の奥にある小さな洞窟の中に放り込む。
「リーフ、あそこを狙って魔法を撃て!」
「分かりました!〈集いし魔力よ〉〈集いし魔力よ〉〈集いし魔力よ〉!」
アレンさんと私も洞窟内に入り、ヒューデットが入ってくる前に洞窟の入口の上の方に『マジックショット』を3発ぶつけると、入口あたりの天井が崩壊し、ヒューデットの侵入を阻止した。
「けほっ……けほっ……はぁ……はぁ」
洞窟内に砂埃が充満するが、体力の限界で体が酸素を欲しがっている為、咳き込むのも構わずに酸素を求め、息を吸う。
「はぁ……はぁ……おいリーパー正気に戻ったか?」
息を切らしながらアレンさんがリーパーさんの様子を見る。
「あ……あぁ、すまない。少しハイになってたみたいだ。」
安全を確保できたのが理解出来たのか、興奮状態じゃなくなり、リーパーさんは冷静になったみたいだ。
「とりあえず奥に行こう。ここじゃまだ安心はできない。」
アレンさんが立ち上がり、洞窟の奥を目指す。私とリーパーさんも息を整えて立ち上がり、洞窟の奥に向かう。
全員が無言で洞窟の奥を目指す。
この洞窟は村が魔物に襲われた時に、立てこもるように作られた洞窟だ。しかし、村が襲われることもなく、最近では子ども達の遊び場となっていたが、今になって使うことになるとは思いもしなかった。
「ここが最奥だな。食料と水は……やっぱりないか。」
数分歩き続けると、ひらけた場所に出た。
昔は保存食や水がここにあったみたいだが、魔物の襲撃がなかったことで、子ども達が食べていたと村の人から聞いたことがある。
「私少しだけなら『マジックポケット』に黒パンを入れてます。〈魔法のポケットよ〉」
ビギシティからミラン村に帰る際、道中何かあるといけないため、多少多めに食料を詰め込んでおいたが、馬車の中だ。ほんの少しだけ『マジックポケット』に黒パンがあるが、3人で食べれば、明日の分の食料はなくなるため、一刻も早くミラン村を出ないといけない。
「あぁ、ありがとう。」
黒パンを3人分に分け、手渡して口に運ぶ。
村に作るを優先し、昼の分を抜き、さらにその後の激戦で体力も魔力も大量に使い、皆空腹状態だったようで、あっという間に黒パンがなくなってしまった。
黒パンを食べている間も皆ずっと無言で、ちらりとアレンさんとリーパーさんを見てみる。
「……俺達、皆を殺しちまったな。」
剣についた血を見ながら、アレンさんは小さく呟く。
「殺らないと自分が死ぬ。そう思いながら、考えないように戦っていたが……こうやって落ち着くとどうしても皆を殺した瞬間を思い出しちまう。」
アレンさんの手が小さく震え、片手で顔を覆って言葉を続ける。
「すまない……母さん……」
涙声でアレンさんが呟き、地面に視界を落とす。
「アレンさん……、『マインドヒール』を使いましょうか?」
『マインドヒール』――混乱状態など精神に作用するデバフ効果を打ち消す魔法で、他に精神を回復させることもでき、僅かにだが心の負担を軽減することも出来る魔法だ。
「お前……さっきの『サークルリカバリー』といい、『マインドヒール』といい、色んな魔法を使えるようになったんだな。」
「ビギシティでBランクの魔法使いの方に教わったんです。」
「そうか……『マインドヒール』は大丈夫だ。」
「そうですか……」
力なくアレンさんは頷き、再び地面に視界を落とす。
「なぁ……俺の親父は、まだ生きてるよな」
リーパーさんが呟き、私とアレンさんを見る。
魂が抜けたような表情をしており、さっきまでのリーパーさんとは大違いだ。
「親父は強かったからさ、まだどこかに隠れてるよな?探さないと……。」
「リーパーだめだ!」
急にそんなことを言い出し、立ち上がってふらふらと入口の方向に向かおうとするリーパーさんをアレンさんが止める。
「放せ、アレンっ!俺は親父を見つけに行くんだ!」
リーパーさんの家庭は母親がおらず父親1人でリーパーさんを育てていた。さらに弓の腕も良く、畑仕事がメインなミラン村で珍しく狩りを行う人物で、リーパーさんはそんな父親を尊敬していた。
「お前の親父さんは強い。だからまだ生きていると信じたい気持ちはよく分かる。」
「だったら――」
「だが、もうお前の親父さんは死んだんだ。」
「お前今なんて言った」
怒りの表情が消え、リーパーさんは無表情になる。
感情を読み取れない声でリーパーさんはアレンさんを突き飛ばす。
「何の根拠があってそんなことを口にしたんだアレン?
冗談でも人の親が死んだなんて言うもんじゃないだろ。
」
「……根拠はある。」
「じゃあ、言ってみろよ」
リーパーさんからそう言われ、アレンさんは躊躇うように顔を背けるが、言うべきだと判断したのかアレンさんは口を開く。
「お前が俺の加勢に来る前、お前の親父の姿を見た……ヒューデットとなった姿で。」
「……は?ヒューデットに……親父が?」
「ああ、そして俺は確かに見たんだ。あれはお前の親父さんだった。」
「やめろぉぉぉぉッ!!」
大声を上げて、アレンさんの言葉を聞かないように耳を塞ぐ。
「嘘だ嘘だ嘘だっ!親父は強いんだ!ヒューデットなんて簡単に倒せるはずなんだ!そんな親父が死んだ?そんなわけあるかっ!」
狂ったようにアレンさんに次々と言葉を言い放つ。
リーパーさんの父親は確かに強い。ランクはDで1対1であれば、ヒューデットにも勝てるかもしれない。しかし、あの数のヒューデットを相手にしたとなると、負けてヒューデット化したのもうなずけてしまう。
「リーパー、いくら親父さんが強くてもあの数のヒューデットには勝てない。」
「親父は……強いんだ……」
アレンさんの正論に膝をつきながらぽつりと呟く。
「……なぁ、俺の親父は……その後どうなったんだ?」
「……俺がトドメを指した。」
「そうか……」
予想出来ていたであろう答えにリーパーさんはそう呟き――
「アレンさん、避けてっ!」
「ッ!?」
短剣を突き出したリーパーさんを驚愕の表情でアレンさんは見ながらもギリギリで短剣を回避する。
「お前が……俺の唯一の家族を殺したんだな。ふざけんじゃねぇぞぉぉぉぉ!」
洞窟内が震える程に吠え、短剣を構えてアレンさん目掛けて飛びかかる。
「くっ!」
リーパーさんがアレンさんに体当たりをし、体勢を崩したアレンさんの上に馬乗りになり、短剣を逆手に握ってアレンさんに突き刺そうとする。
「ああああああああッッッ!!」
感情のままに短剣を振り下ろし、アレンさんを殺そうとする。
「やめてくださいリーパーさんっ!〈風よ阻め〉、〈心病みし者・眼に光焼き付け・闇払いたまえ〉ッッ!」
咄嗟に『ウィンドブロウ』をリーパーさんにぶつけ、アレンさんから強引に引き剥がし、『マインドヒール』を発動させる。
光の球が出現し、リーパーさんの目の前で光の球が爆ぜ、精神を癒す光がリーパーさんに流れ込む。
「あ、あああ……」
『マインドヒール』の効果が現れたのか、リーパーさんは短剣を落とし、頭を抱える。
「俺は……俺は……」
「大丈夫か、リーパー?」
アレンさんが立ち上がり、リーパーさんを警戒しながらも、ほっとけないようで少しずつ近寄る。
「す、すまないアレン。俺は……」
「気にするな、誰だって自分の大切な人を殺されたらそうなる。」
「だが、お前も……その母親を自分で殺して、大変なはずなのに……俺はそんなことを考えずにただ自分の怒りのままに喚き散らして……」
リーパーさんは声を震わせる。
「そうだ、俺は母親を殺した。お前の親父さんも……。
だが、このままくよくよしていても何も変わらない。
村の皆を倒してしまった。だからこそ、皆の分まで俺達は生きないといけない。こんなところで仲違いなんてしてる暇はないんだ。
俺はお前を許す。だが、お前に俺は俺のやった事を許せなんて言わない。
でも、俺のことを許してくれるのなら……一緒にこの地獄を乗り切ろう。皆の分まで生きようじゃないか。」
アレンさんはリーパーさんに右手を差し出す。
「許してくれるのか……あんな自分勝手に喚き散らして、さらにはお前を殺そうともしたのに……」
「ああ、もちろんだ。」
その言葉を聞いたリーパーさんは、少し迷い……そしてその手を取った。
「ありがとう、アレン。俺も協力する。この地獄を乗り切るために。
そしてリーフもすまなかった。あんなに取り乱した格好を見せてしまって……そしてありがとう、親友を殺す前に俺を戻してくれて。
もし、お前が戻してくれなかったら今頃きっと……」
途中で話すのを辞め、首を振る。想像したくないのだろう。
「元に戻ってくれて良かったですよ。確かにびっくりはしましたけど、気持ちは分かるので顔を上げてください。」
そうリーパーさんに伝えると、リーパーさんはありがとうと言いながら、顔を上げる。
「さて、気持ちを切り替えて、この地獄を抜け出す方法を考えようか。」
この洞窟に入った時よりも、明るい雰囲気になったところでアレンさんがそう言いながら、方法を考え始めた。
マインドヒール 中級光属性魔法
魔法精神回復力 E++
魔法制御力 E
消費魔力量 E-
魔法発動速度 E
詠唱
心病みし者・眼に光焼き付け・闇払いたまえ
説明
精神に影響する混乱などのデバフ効果を打ち消す魔法。
また、精神を回復することもでき、光を見た者の心の負担を僅かに軽減する。
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アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』
見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装…
俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。
突然の事で戸惑うクラスメート達…
だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。
「またか…」
王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。
そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。
そして俺はというと…?
『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』
「それよりも不知火君は何を得たんだ?」
イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。
俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。
その場にいた者達は、俺の加護を見ると…
「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。
『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』
王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。
まぁ、その方が気楽で良い。
そして正義は、リーダーとして皆に言った。
「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」
正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。
「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」
「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」
「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」
「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」
「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」
「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」
「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」
俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。
「その…鎧と剣は?」
「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」
「今迄って…今回が2回目では無いのか?」
「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」
俺はうんざりしながら答えた。
そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。
いずれの世界も救って来た。
そして今度の世界は…?
6月22日
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