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2章 ビギシティと出会い
やり残したこと
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リーフと共にリーフの家に戻って、野菜についた土を落とすため、外で『マジックポケット』に収納していた野菜をリーフは取り出した。
「ふぅ……やっぱりGランクっていうのは結構キツイですね。さっきウェルメンさんに放った『マジックショット』と、蔵の中で野菜を入れるために使った『マジックポケット』、そして今2回目の『マジックポケット』で魔力がかなり減ってしまいました。」
ふらふらとした足取りで、家の外にある蛇口で野菜を洗っていく。
「ウェルメンに『マジックショット』を撃たなければ良かったのに……。」
「うぅ、だって……あれは……」
思い出したのか顔を赤らめるリーフ。
「あぁ……なんかごめん。えーと、俺も手伝うよ。」
「あ……ありがとうございます。」
さっきのことを思い出し気まずくなったため、俺も野菜を洗うことにした。
「おっけー、こっちは終わったぞ。そっちはどうだ?」
「私も終わりました。」
10分ほどで野菜を洗い、家の中に入って台所に野菜を置いていく。リーフが蔵から持ってきたのはじゃがいも、さつまいも、きゅうりでじゃがいもとさつまいもはお湯で茹で、きゅうりは生で食べることになった。
「てことは途中でお腹がすいた時はきゅうりから食べた方がいいな。生だし。」
「ですね、じゃがいもとさつまいもは塩茹でするのでしばらくはもつと思いますよ。」
そう言って鍋に水を入れて火をかけ、塩を入れて沸騰するとさつまいもとじゃがいもを入れていく。
「あとは待つだけ、ですね。ユウキさん、これちょっと見ててもらっていいですか?私ちょっと外でやり残したことがあって……」
「やり残したこと?」
「はい……まぁちょっと探さないといけないものがあって……2時間もかからないとは思います。いいでしょうか?」
少し悲しげな表情でリーフは俺に許可を求める。
「そんなに時間がかかるなら俺も手伝おうか?茹でるだけだからそんなに時間かからないと思うが――」
「いえ、これだけは私にやらせて欲しいんです!」
「っ…わ、分かった。ウェルメンは俺達以外にこの村に気配がないとは言ったけど、魔物が村に入ってくる可能性もあるから気をつけろよ。あとこれも持ってけ。〈魔法のポケットよ〉」
『マジックポケット』を発動し、中級魔石を取り出してリーフに渡す。
「これは……中級魔石?」
「魔力が少ないんだろ?もし魔物と遭遇したらそれ使っていいから逃げてくるんだ。いいな?」
「ありがとうございます。」
リーフは中級魔石をポケットにしまい、家を出ていった。
「魔物に出会わなければいいが……。」
正直心配ではあるが、リーフなら大丈夫だろう。俺は鍋を見つめながらそう思った。
中級魔石をくれたユウキさんに笑顔でお礼を言って扉を開けて家の外に出る。
「……ふぅ」
ユウキさんやウェルメンさんのお陰で心はさっきよりも軽く今はマイナスなことを考えずに済むことが出来る。ウェルメンさんがからかってくるのはちょっとうざったいけど、あの悪夢のような出来事を出来るだけ意識させないようにしようとしていると思う。
「まぁ……これを見るといやでも思い出しますけどね。」
村の中は相変わらずヒューデットの成れ果て……村人達の死体がごろごろと転がり大量の血がまるで雨の降ったあとの水溜まりのようにあちこちで血溜まりが出来ている。
自分の家に立てかけてあるスコップを手に取り、スコップを引きずりながらとある場所に向かう。
「確か……あの辺でしたか。」
私が昨日、『■■の加護』に目覚めた所。この少ない人生でいちばんの怒りを抱いた所。そして……フロウアに両親を殺された所。
「…………」
自分が覚醒する前にアレンさんや、リーパーさんと共にヒューデットを大量に倒し、覚醒後も数回しか魔法を使えなかったけどそれで大量に倒したせいでものすごい量のヒューデットが周りで倒れ、辺り一帯が血の匂いで鼻が曲がりそうになる。
「……行きましょう、私。」
あまりのショッキングすぎる光景だが、あの地獄の後だとそこまで心が揺らがない。僅かに躊躇う意識を押し退け、大量のヒューデット達の近くを歩き、チラチラとヒューデットを見て確認していく。
「せめて……両親だけは土に埋めて成仏して欲しいですからね。」
私が何をしようか言う前にユウキさんは手伝おうか?と言ってくれたが、これだけは自分の手でやりたかった。無惨にフロウアにヒューデットにされた挙げ句、頭を潰されて亡くなってしまった両親をせめて自分の手で埋葬してあげたい。
その想いでこの場所に来たが、ヒューデットの量が多すぎて中々見つからない。
「やっと……見つけた!」
1時間ほど探し回り、ようやく見つける。頭はあの時と変わらず潰れていて全身血でまみれているが、着ていた服に体つきなどでなんとか探し出すことが出来た。
「ユウキさんには2時間もかからないって言っちゃったから、急がないと……」
持ってきたスコップで穴を掘り始める。畑の手伝いは何度もしたことがあり、それなりにはスコップの扱いと体力には自信があるけど、体は疲れているため土を掘るのが思うように早く掘ることが出来ない。
「はぁ……はぁ……」
「ガルゥ!」
やっと大人2人が入るような穴を掘ることができ、2人を穴に入れようとするが、真後ろからなにかの唸り声が聞こえてきた。
「もしかして」
「ガウガウ!」
嫌な予感がして後ろを振り返ると、グレイウルフがヨダレを垂らしながら唸っていた。
「今の私はGランク、勝つことは諦めて……逃げるしかないですね!〈輝く光よ〉!」
「キャウン!?」
ステータスはGランクのためスキル欄は1つ、そして私は『回復魔法使い』、『詠唱省略(小)』、『デュアルアクション』の3つのスキルを持っている。スキル欄に『回復魔法使い』が登録されていたため、即座に脳内で『デュアルアクション』に変更し、『フラッシュアウト』を2回連続で放ち、グレイウルフの視界を封じる。
(今なら行ける!)
視界が塞がれ何も見えなくなったであろうグレイウルフは目を前足で擦っているが、ハッとしてすんすんと匂いを嗅ぐような仕草をして私の方に向き直る。
「がルルルルル、わうっ!」
「この血の匂いの中で鼻の良さは健在ですか!」
グレイウルフ……と言うよりウルフ系統の魔物は鼻がいいと聞いたことはある。でも正直周りにたくさんのヒューデットの血の匂いで自分の匂いは誤魔化せていると思ったがそう甘くはなかった。
「ガウッ!」
私の方に向き直ったグレイウルフは口を開け飛びかかってくる。
「やあっ!」
飛びかかってくるグレイウルフの顔目掛けてスコップを振るとパコン!と音を立ててグレイウルフの頬に命中し、グレイウルフは空中でバランスを崩し、勢い余ってドシャと私の斜め右後ろに飛んでいき地面に激突した。
「グルルッ!ガルルッ!」
「はぁ……はぁ……、ダメージは無いに等しいみたいですね。」
グレイウルフはほとんどダメージを受けていないのかすぐに体勢を立て直し私に向かって唸り声をあげた。
グレイウルフとの交戦の直前に穴掘りで体力を使いすぎたのがまずかった。スコップも振るとなればそれなりの力が必要で体力がない状態だと当てたとしても力が入らず、結果的に全くダメージを与えることが出来なかった。
「ガヴッ!」
「きゃっ!くぅ……〈我・害する者を穿つ力を求む〉!」
グレイウルフが飛びかかり避ける間もなく押し倒されてしまった。『パワーライズ』を『デュアルアクション』で両腕にかけて、なんとかスコップを両手に持ち柄の部分でグレイウルフの牙での攻撃を防ぐことが出来たけど、スコップはみしっと嫌な音を立てる。
「くっ……ふぬぬ!」
スコップの柄を押し返すが『パワーライズ』の魔法制御力はF-。そして私の今の魔法制御力はGだ。幸いにも暴発もせずに発動したけど、完璧に制御出来ずに筋力増加の効果はいつもの半分ほどになっていてさらに魔力もほぼ無くなってしまい、倦怠感もあり力がはいらない。
――パキっ――
「っ、いま!!」
乾いた音を鳴らしてスコップが真っ二つに割れる。グレイウルフが牙を私の首に突き立てる直前に地面を掘る部分が残った方の柄を掴み、グレイウルフの喉に突き立てた。
「グルァッ!?」
『パワーライズ』の効果で僅かに力が残っており、グレイウルフの喉元にスコップの先を当てることには成功した。しかし、皮膚を貫くまでには至らず、少し出血した程度だった。だが、反撃されると思っていなかったのか数歩後ろで後ずさりながらこっちを威嚇し、唸っている。
「ユウキさん、使わせてもらいます。」
私は起き上がりポケットからユウキさんから貰った中級魔石を取り出し、僅かに残っていた魔力を魔石に流しながら砕き、魔力を全回復させる。
(でも魔石を使ったから魔法制御力と効果が下がっちゃいますね。)
魔石の効果で今の私の魔法制御力はG-となった。これだと使える攻撃魔法は全くと言っていいほどなく、手段があるとすればさっきの『パワーライズ』のように自力で魔法を制御して暴発しないように祈るだけだ。
「〈集いし魔力の高まりよ・我が手より放たれよ〉っ!」
「グルッ!?」
放った『マジックショット』をグレイウルフはジャンプして回避する。だが、『デュアルアクション』の効果を発動させグレイウルフが地に足をつけた瞬間に二発目を放ち、グレイウルフは『マジックショット』に直撃し盛大にバランスを崩して倒れた。
「〈我・害する者を穿つ力を求む〉、やあぁぁぁぁっ!」
スコップを手に取り、グレイウルフが体を起こす前にグレイウルフの体に飛び乗り右腕と左腕に『パワーライズ』で筋力を底上げして勢いよくスコップの先っぽを振り下ろした。
「ガ……ゥ……」
さっきとは違い、正確に充分な力で勢いをつけ喉元を刺したお陰で、皮膚を貫通しグレイウルフは力を失い……舌をだらんと垂らし息の根が止まった。
「ふ、ふふ……あは」
Gランクという底辺である私が格上のEランクのグレイウルフを倒した。それによりランクが急上昇し、高揚感が心の奥底から溢れ出て笑みを隠すのを止められない。ぶるりと背筋を震わせ、両腕で自分の体を抱きしめ……なんとか正常な状態まで心を落ち着かせる。
「もう結構時間が経ってますね。時間になる前に早く終わらせるとしましょう。」
グレイウルフとの戦闘でかなりの時間を費やしてしまった。これ以上時間を無駄に出来ない。
周りを見渡して更なる魔物の襲来がないことを確認し、私は両親を運び、真っ二つになったスコップを使って穴に埋め手を合わせようとするとパカラッパカラッ、パカラッとなにかが近づいてくる。
「誰ですかっ!」
「俺だリーフ」
右手に魔力を高めながら音のなる方へ振り向くと、ウェルメンさんに乗ったユウキさんがいた。
「ふぅ……やっぱりGランクっていうのは結構キツイですね。さっきウェルメンさんに放った『マジックショット』と、蔵の中で野菜を入れるために使った『マジックポケット』、そして今2回目の『マジックポケット』で魔力がかなり減ってしまいました。」
ふらふらとした足取りで、家の外にある蛇口で野菜を洗っていく。
「ウェルメンに『マジックショット』を撃たなければ良かったのに……。」
「うぅ、だって……あれは……」
思い出したのか顔を赤らめるリーフ。
「あぁ……なんかごめん。えーと、俺も手伝うよ。」
「あ……ありがとうございます。」
さっきのことを思い出し気まずくなったため、俺も野菜を洗うことにした。
「おっけー、こっちは終わったぞ。そっちはどうだ?」
「私も終わりました。」
10分ほどで野菜を洗い、家の中に入って台所に野菜を置いていく。リーフが蔵から持ってきたのはじゃがいも、さつまいも、きゅうりでじゃがいもとさつまいもはお湯で茹で、きゅうりは生で食べることになった。
「てことは途中でお腹がすいた時はきゅうりから食べた方がいいな。生だし。」
「ですね、じゃがいもとさつまいもは塩茹でするのでしばらくはもつと思いますよ。」
そう言って鍋に水を入れて火をかけ、塩を入れて沸騰するとさつまいもとじゃがいもを入れていく。
「あとは待つだけ、ですね。ユウキさん、これちょっと見ててもらっていいですか?私ちょっと外でやり残したことがあって……」
「やり残したこと?」
「はい……まぁちょっと探さないといけないものがあって……2時間もかからないとは思います。いいでしょうか?」
少し悲しげな表情でリーフは俺に許可を求める。
「そんなに時間がかかるなら俺も手伝おうか?茹でるだけだからそんなに時間かからないと思うが――」
「いえ、これだけは私にやらせて欲しいんです!」
「っ…わ、分かった。ウェルメンは俺達以外にこの村に気配がないとは言ったけど、魔物が村に入ってくる可能性もあるから気をつけろよ。あとこれも持ってけ。〈魔法のポケットよ〉」
『マジックポケット』を発動し、中級魔石を取り出してリーフに渡す。
「これは……中級魔石?」
「魔力が少ないんだろ?もし魔物と遭遇したらそれ使っていいから逃げてくるんだ。いいな?」
「ありがとうございます。」
リーフは中級魔石をポケットにしまい、家を出ていった。
「魔物に出会わなければいいが……。」
正直心配ではあるが、リーフなら大丈夫だろう。俺は鍋を見つめながらそう思った。
中級魔石をくれたユウキさんに笑顔でお礼を言って扉を開けて家の外に出る。
「……ふぅ」
ユウキさんやウェルメンさんのお陰で心はさっきよりも軽く今はマイナスなことを考えずに済むことが出来る。ウェルメンさんがからかってくるのはちょっとうざったいけど、あの悪夢のような出来事を出来るだけ意識させないようにしようとしていると思う。
「まぁ……これを見るといやでも思い出しますけどね。」
村の中は相変わらずヒューデットの成れ果て……村人達の死体がごろごろと転がり大量の血がまるで雨の降ったあとの水溜まりのようにあちこちで血溜まりが出来ている。
自分の家に立てかけてあるスコップを手に取り、スコップを引きずりながらとある場所に向かう。
「確か……あの辺でしたか。」
私が昨日、『■■の加護』に目覚めた所。この少ない人生でいちばんの怒りを抱いた所。そして……フロウアに両親を殺された所。
「…………」
自分が覚醒する前にアレンさんや、リーパーさんと共にヒューデットを大量に倒し、覚醒後も数回しか魔法を使えなかったけどそれで大量に倒したせいでものすごい量のヒューデットが周りで倒れ、辺り一帯が血の匂いで鼻が曲がりそうになる。
「……行きましょう、私。」
あまりのショッキングすぎる光景だが、あの地獄の後だとそこまで心が揺らがない。僅かに躊躇う意識を押し退け、大量のヒューデット達の近くを歩き、チラチラとヒューデットを見て確認していく。
「せめて……両親だけは土に埋めて成仏して欲しいですからね。」
私が何をしようか言う前にユウキさんは手伝おうか?と言ってくれたが、これだけは自分の手でやりたかった。無惨にフロウアにヒューデットにされた挙げ句、頭を潰されて亡くなってしまった両親をせめて自分の手で埋葬してあげたい。
その想いでこの場所に来たが、ヒューデットの量が多すぎて中々見つからない。
「やっと……見つけた!」
1時間ほど探し回り、ようやく見つける。頭はあの時と変わらず潰れていて全身血でまみれているが、着ていた服に体つきなどでなんとか探し出すことが出来た。
「ユウキさんには2時間もかからないって言っちゃったから、急がないと……」
持ってきたスコップで穴を掘り始める。畑の手伝いは何度もしたことがあり、それなりにはスコップの扱いと体力には自信があるけど、体は疲れているため土を掘るのが思うように早く掘ることが出来ない。
「はぁ……はぁ……」
「ガルゥ!」
やっと大人2人が入るような穴を掘ることができ、2人を穴に入れようとするが、真後ろからなにかの唸り声が聞こえてきた。
「もしかして」
「ガウガウ!」
嫌な予感がして後ろを振り返ると、グレイウルフがヨダレを垂らしながら唸っていた。
「今の私はGランク、勝つことは諦めて……逃げるしかないですね!〈輝く光よ〉!」
「キャウン!?」
ステータスはGランクのためスキル欄は1つ、そして私は『回復魔法使い』、『詠唱省略(小)』、『デュアルアクション』の3つのスキルを持っている。スキル欄に『回復魔法使い』が登録されていたため、即座に脳内で『デュアルアクション』に変更し、『フラッシュアウト』を2回連続で放ち、グレイウルフの視界を封じる。
(今なら行ける!)
視界が塞がれ何も見えなくなったであろうグレイウルフは目を前足で擦っているが、ハッとしてすんすんと匂いを嗅ぐような仕草をして私の方に向き直る。
「がルルルルル、わうっ!」
「この血の匂いの中で鼻の良さは健在ですか!」
グレイウルフ……と言うよりウルフ系統の魔物は鼻がいいと聞いたことはある。でも正直周りにたくさんのヒューデットの血の匂いで自分の匂いは誤魔化せていると思ったがそう甘くはなかった。
「ガウッ!」
私の方に向き直ったグレイウルフは口を開け飛びかかってくる。
「やあっ!」
飛びかかってくるグレイウルフの顔目掛けてスコップを振るとパコン!と音を立ててグレイウルフの頬に命中し、グレイウルフは空中でバランスを崩し、勢い余ってドシャと私の斜め右後ろに飛んでいき地面に激突した。
「グルルッ!ガルルッ!」
「はぁ……はぁ……、ダメージは無いに等しいみたいですね。」
グレイウルフはほとんどダメージを受けていないのかすぐに体勢を立て直し私に向かって唸り声をあげた。
グレイウルフとの交戦の直前に穴掘りで体力を使いすぎたのがまずかった。スコップも振るとなればそれなりの力が必要で体力がない状態だと当てたとしても力が入らず、結果的に全くダメージを与えることが出来なかった。
「ガヴッ!」
「きゃっ!くぅ……〈我・害する者を穿つ力を求む〉!」
グレイウルフが飛びかかり避ける間もなく押し倒されてしまった。『パワーライズ』を『デュアルアクション』で両腕にかけて、なんとかスコップを両手に持ち柄の部分でグレイウルフの牙での攻撃を防ぐことが出来たけど、スコップはみしっと嫌な音を立てる。
「くっ……ふぬぬ!」
スコップの柄を押し返すが『パワーライズ』の魔法制御力はF-。そして私の今の魔法制御力はGだ。幸いにも暴発もせずに発動したけど、完璧に制御出来ずに筋力増加の効果はいつもの半分ほどになっていてさらに魔力もほぼ無くなってしまい、倦怠感もあり力がはいらない。
――パキっ――
「っ、いま!!」
乾いた音を鳴らしてスコップが真っ二つに割れる。グレイウルフが牙を私の首に突き立てる直前に地面を掘る部分が残った方の柄を掴み、グレイウルフの喉に突き立てた。
「グルァッ!?」
『パワーライズ』の効果で僅かに力が残っており、グレイウルフの喉元にスコップの先を当てることには成功した。しかし、皮膚を貫くまでには至らず、少し出血した程度だった。だが、反撃されると思っていなかったのか数歩後ろで後ずさりながらこっちを威嚇し、唸っている。
「ユウキさん、使わせてもらいます。」
私は起き上がりポケットからユウキさんから貰った中級魔石を取り出し、僅かに残っていた魔力を魔石に流しながら砕き、魔力を全回復させる。
(でも魔石を使ったから魔法制御力と効果が下がっちゃいますね。)
魔石の効果で今の私の魔法制御力はG-となった。これだと使える攻撃魔法は全くと言っていいほどなく、手段があるとすればさっきの『パワーライズ』のように自力で魔法を制御して暴発しないように祈るだけだ。
「〈集いし魔力の高まりよ・我が手より放たれよ〉っ!」
「グルッ!?」
放った『マジックショット』をグレイウルフはジャンプして回避する。だが、『デュアルアクション』の効果を発動させグレイウルフが地に足をつけた瞬間に二発目を放ち、グレイウルフは『マジックショット』に直撃し盛大にバランスを崩して倒れた。
「〈我・害する者を穿つ力を求む〉、やあぁぁぁぁっ!」
スコップを手に取り、グレイウルフが体を起こす前にグレイウルフの体に飛び乗り右腕と左腕に『パワーライズ』で筋力を底上げして勢いよくスコップの先っぽを振り下ろした。
「ガ……ゥ……」
さっきとは違い、正確に充分な力で勢いをつけ喉元を刺したお陰で、皮膚を貫通しグレイウルフは力を失い……舌をだらんと垂らし息の根が止まった。
「ふ、ふふ……あは」
Gランクという底辺である私が格上のEランクのグレイウルフを倒した。それによりランクが急上昇し、高揚感が心の奥底から溢れ出て笑みを隠すのを止められない。ぶるりと背筋を震わせ、両腕で自分の体を抱きしめ……なんとか正常な状態まで心を落ち着かせる。
「もう結構時間が経ってますね。時間になる前に早く終わらせるとしましょう。」
グレイウルフとの戦闘でかなりの時間を費やしてしまった。これ以上時間を無駄に出来ない。
周りを見渡して更なる魔物の襲来がないことを確認し、私は両親を運び、真っ二つになったスコップを使って穴に埋め手を合わせようとするとパカラッパカラッ、パカラッとなにかが近づいてくる。
「誰ですかっ!」
「俺だリーフ」
右手に魔力を高めながら音のなる方へ振り向くと、ウェルメンさんに乗ったユウキさんがいた。
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