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16 恋愛的感情
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「‥怒ったの‥?」
こわごわと自分を見上げてくるマヒロの顔を見て、ハルタカは再びグッと全身に力を込めた。こんなにタツリキの制御がうまくいかないことは初めてだ。大きく息を吸っては吐き、少しずつタツリキの流れを整える。それからマヒロに返事をした。
「すまぬ、怒ってなどいない。‥まだ私が未熟な龍人であると言うだけだ」
「未熟‥?そんなふうには見えないけど‥」
ふっとハルタカは苦笑した。マヒロにそう思ってもらえているならよかったが、実際には随分自分は未熟なのだ、と今気づかされた。
「お前が、私以外の伴侶といることを想像したら、タツリキの制御ができなくなったのだ。未熟でしかない」
「はんりょ‥」
マヒロはその言葉を頭の中で反芻した。‥パートナー、的な意味だったかな?ん?今の言葉の意味って。
「えっ、ハルタカさん嫉妬したんですか?いもしない、私のはんりょに」
「‥そうなるな。未熟極まりない」
マヒロはランガの皿を脇に置いてハルタカに向き直った。不思議で仕方がなかった。
「あの、変な事聞きますけど‥何でそんなに私と番い?になりたいんですか?私の何がいいんでしょうか?たった二日しか一緒に過ごしてないですよね?」
マヒロが口にした疑問を、ハルタカは頭の中で嚙み砕いてみる。大体、ヒトに対して好ましいとか一緒にいたいとかこれまでの生涯の中で思ったことはなかったのだ。
だが、このカベワタリの少女に対しては、傍にいてほしい、何かしてやりたい、という気持ちが次々と湧いてくる。
「‥‥なぜ、か。私も知りたいくらいだな」
ふっと息を吐くハルタカを、マヒロは目を丸くして見つめた。
何でも知っていそうで三百歳過ぎてて、ちからもたくさん持ってそうなこの人でもわからないことがあるんだ。
ランガの実に目を落とした。
人では取れない高地の木に生っている、って言ってたこの実。私のためにわざわざ取りに言ってくれたんだろう。食べたかったらもっと取ってくるとも言っていた気がする。
恋か。恋愛、と言ってもいいけど、そういうのって理屈ではないとか色々聞いたような気もする。友人からも、好きになった人が全く好みのタイプじゃなくて自分でも戸惑った、なんて話も聞いた事あるし。
私が恋愛についてわからないように、ハルタカさんも私を世話したい、っていう気持ちがどこから来ているのか、わからないのかもしれないな。
私としてはそれはおそらくパンダ的興味じゃないかと思うけど。
ハルタカの方をそっと覗き見る。秀麗な顔を少し顰めてうつむき、考え事をしているようだ。そもそもこんな美しい男が自分に対して興味を持ち世話をしたいと言っていること自体がかなり非現実的だ。‥異世界に来てしまったこともそうだが。
ふう、と大きく息を吐いてハルタカに話しかける。
「ハルタカさん」
ハルタカは顔を上げてマヒロの顔を見た。うん、綺麗な顔だなあ。
「えっと、好きか嫌いかで言えばハルタカさんの事は好きです。でも恋愛的な意味ではないです、まだ。‥しばらくここにおいてもらっている間に、色々私も考えます。だからハルタカさんもその間に色々考えてみたらいいと思います」
「考える、とは何を」
ハルタカは弾かれたように訊いた。
「んー、私に対する気持ち?世話したいと一緒にいたいとかいうのが、恋愛的なものとは限らないじゃないですか。異世界からの人が珍しいからそう思っているだけかもしれないし」
そう朗らかに語るマヒロに、違う、とハルタカは言いたかった。だがきっと今のマヒロは自分のその言い分を受け入れてはくれないだろう。
番いに対する気持ちがどういうものか、親を見ていても「独占したい」「閉じ込めて囲っていたい」というものしか感じ取れなかったハルタカである。マヒロが「番い」としての関係の中に、「恋愛」という意味での感情を要求しているということはこれまでの話を聞いていてもわかった。
そしてマヒロはこれまで恋愛をしたことがないからわからない、と言っていた。
それはハルタカも同じである。そもそもヒトに感情が揺れ動いたことなどほとんどない。だからこそもう少しマヒロと一緒にいたいと思ったのだが、それは恋愛の感情ではない、とマヒロに言われてしまえば、ハルタカは反論するすべを持たない。
再びランガの実を食べ始めたマヒロの顔を見る。嬉しそうにその実を頬張っているマヒロを見ているのは楽しい。また取ってきてやりたいと思うし、もっと美味しいものを食べさせてやりたいと思う。
これは、恋愛の感情ではないのだろうか。
ハルタカの中で、答えは出なかった。
仕方なくマヒロに向かって正直に言った。
「マヒロ。お前の言う「恋愛」の感情は私にはわからない。そもそも龍人は感情を揺らすことが少ない。私自身もヒトに感情を揺り動かされたことはほとんどないのだ。‥だが、お前には動かされる。私はそれを恋愛ではないかと感じるが、お前がそう思わないのならおそらく意味がないだろう。‥‥ここにいる間に、私も考える。お前も私のことを考えてくれ」
「‥怒ったの‥?」
こわごわと自分を見上げてくるマヒロの顔を見て、ハルタカは再びグッと全身に力を込めた。こんなにタツリキの制御がうまくいかないことは初めてだ。大きく息を吸っては吐き、少しずつタツリキの流れを整える。それからマヒロに返事をした。
「すまぬ、怒ってなどいない。‥まだ私が未熟な龍人であると言うだけだ」
「未熟‥?そんなふうには見えないけど‥」
ふっとハルタカは苦笑した。マヒロにそう思ってもらえているならよかったが、実際には随分自分は未熟なのだ、と今気づかされた。
「お前が、私以外の伴侶といることを想像したら、タツリキの制御ができなくなったのだ。未熟でしかない」
「はんりょ‥」
マヒロはその言葉を頭の中で反芻した。‥パートナー、的な意味だったかな?ん?今の言葉の意味って。
「えっ、ハルタカさん嫉妬したんですか?いもしない、私のはんりょに」
「‥そうなるな。未熟極まりない」
マヒロはランガの皿を脇に置いてハルタカに向き直った。不思議で仕方がなかった。
「あの、変な事聞きますけど‥何でそんなに私と番い?になりたいんですか?私の何がいいんでしょうか?たった二日しか一緒に過ごしてないですよね?」
マヒロが口にした疑問を、ハルタカは頭の中で嚙み砕いてみる。大体、ヒトに対して好ましいとか一緒にいたいとかこれまでの生涯の中で思ったことはなかったのだ。
だが、このカベワタリの少女に対しては、傍にいてほしい、何かしてやりたい、という気持ちが次々と湧いてくる。
「‥‥なぜ、か。私も知りたいくらいだな」
ふっと息を吐くハルタカを、マヒロは目を丸くして見つめた。
何でも知っていそうで三百歳過ぎてて、ちからもたくさん持ってそうなこの人でもわからないことがあるんだ。
ランガの実に目を落とした。
人では取れない高地の木に生っている、って言ってたこの実。私のためにわざわざ取りに言ってくれたんだろう。食べたかったらもっと取ってくるとも言っていた気がする。
恋か。恋愛、と言ってもいいけど、そういうのって理屈ではないとか色々聞いたような気もする。友人からも、好きになった人が全く好みのタイプじゃなくて自分でも戸惑った、なんて話も聞いた事あるし。
私が恋愛についてわからないように、ハルタカさんも私を世話したい、っていう気持ちがどこから来ているのか、わからないのかもしれないな。
私としてはそれはおそらくパンダ的興味じゃないかと思うけど。
ハルタカの方をそっと覗き見る。秀麗な顔を少し顰めてうつむき、考え事をしているようだ。そもそもこんな美しい男が自分に対して興味を持ち世話をしたいと言っていること自体がかなり非現実的だ。‥異世界に来てしまったこともそうだが。
ふう、と大きく息を吐いてハルタカに話しかける。
「ハルタカさん」
ハルタカは顔を上げてマヒロの顔を見た。うん、綺麗な顔だなあ。
「えっと、好きか嫌いかで言えばハルタカさんの事は好きです。でも恋愛的な意味ではないです、まだ。‥しばらくここにおいてもらっている間に、色々私も考えます。だからハルタカさんもその間に色々考えてみたらいいと思います」
「考える、とは何を」
ハルタカは弾かれたように訊いた。
「んー、私に対する気持ち?世話したいと一緒にいたいとかいうのが、恋愛的なものとは限らないじゃないですか。異世界からの人が珍しいからそう思っているだけかもしれないし」
そう朗らかに語るマヒロに、違う、とハルタカは言いたかった。だがきっと今のマヒロは自分のその言い分を受け入れてはくれないだろう。
番いに対する気持ちがどういうものか、親を見ていても「独占したい」「閉じ込めて囲っていたい」というものしか感じ取れなかったハルタカである。マヒロが「番い」としての関係の中に、「恋愛」という意味での感情を要求しているということはこれまでの話を聞いていてもわかった。
そしてマヒロはこれまで恋愛をしたことがないからわからない、と言っていた。
それはハルタカも同じである。そもそもヒトに感情が揺れ動いたことなどほとんどない。だからこそもう少しマヒロと一緒にいたいと思ったのだが、それは恋愛の感情ではない、とマヒロに言われてしまえば、ハルタカは反論するすべを持たない。
再びランガの実を食べ始めたマヒロの顔を見る。嬉しそうにその実を頬張っているマヒロを見ているのは楽しい。また取ってきてやりたいと思うし、もっと美味しいものを食べさせてやりたいと思う。
これは、恋愛の感情ではないのだろうか。
ハルタカの中で、答えは出なかった。
仕方なくマヒロに向かって正直に言った。
「マヒロ。お前の言う「恋愛」の感情は私にはわからない。そもそも龍人は感情を揺らすことが少ない。私自身もヒトに感情を揺り動かされたことはほとんどないのだ。‥だが、お前には動かされる。私はそれを恋愛ではないかと感じるが、お前がそう思わないのならおそらく意味がないだろう。‥‥ここにいる間に、私も考える。お前も私のことを考えてくれ」
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