18 / 120
18 浴場
しおりを挟む
浴場は外に面している壁が全て取っ払われており、外に向かって吹き抜けていた。少し熱めの湯に浸かっていると顔を撫でる風が冷たくて気持ちいい。外は荒野のような眺めで特に花が咲いているなどといういわゆる一般的に美しい景色、というわけではなかったが、少し遠くに見える切り立つような岩山、ところどころに生えている見慣れない木々など野趣あふれる景色でそれはそれでいいものだった。
石鹸も髪を洗うものも、使ってみればとてもいい匂いで、ああこれがハルタカの匂いなのかも、と思いついた。そして同じ匂いになってしまったことに気づき、一人赤面した。
(貸切露天風呂みたいで、贅沢だなあ‥)
やはり日本人だからなのか、湯船に身を沈めていると癒されている気がする。張りつめていた心や身体が解きほぐされているようにも感じた。
(ハルタカさん‥ハルタカって呼んだ方がいいんだっけか。いい人っぽいんだけど、なんであんなに私に執着するのかは解らないな~。やっぱり、パンダ的興味なのかなと思うけど‥世話したいとかも、生態に興味ある感じかもしれないし)
とにかく、こんな短時間で好きになるとか(セックス込みの)付き合いがしたいとかいうのは本当に解らない。理解できない、という方が正しいだろうか。
だが、マヒロも若い女性なのであのような恐ろしいほどの美青年に好意らしきものを示されているのは悪い気はしない。ただ、その反動がどう出てくるのかが怖いのだ。
(正気に戻ってから捨てられたりしたらみじめだもんな。とにかく、自分で生きていく道を見つけないと、不安でたまんない)
ここにしばらくいたとしても、タツリキという超能力を自由自在に使えるハルタカのもとでは何かの技術を身につけるということも難しそうだ。ハルタカの傍にいる間はこの世界の事などをよく学んで、いずれヒトが住んでいるところに行った時に何か自分ができる仕事はないのかを探そう。
せっかく受験勉強も頑張ってきて進学するつもりだったのに、急に就職を考えなければならなくなったのは残念だがこのような事態では仕方がない。まずは一人で生きていく方法を考えるのが最優先だ。
(そう考えると、悪いけど番いだ何だって考えてる時でもないよな、私)
ふーと息を吐きながら大きな湯船の中でぐっと身体を伸ばす。
(‥あれ、明日着物を買いに街に行くって言ってなかったっけ?)
初めて、ハルタカ以外のこの世界の人に会えるチャンスだ。色々見て、どういう世界なのかを観察しなければならない。
(身体の調子が悪くなければ、って言われてたな‥明日までは大人しくベッドの住人になってよう、うん)
ハルタカはマヒロの事に関しては少し過保護っぽいところがあるように見えるので、元気になったとみてもらえるように今日は大人しくしておいた方がいいだろう。
よし、あがろう。
マヒロはこっそり洗ってぎゅっと絞った下着を持って、脱衣所に向かった。
下着なしで衣服を身につけるのはかなり、抵抗があるが仕方がない。身体をざっと拭いて小さな布を頭に巻き付け、大きなタオルのような布の中に下着を忍び込ませた。
そしてそっと脱衣所から廊下に繋がるドアを開けて辺りをうかがう。名を呼べ、と言われたが、大きな声で呼んだら来てくれるということだろうか。
なんだかちょっと恥ずかしいので、普通くらいの声で「ハ、ハルタカ~‥」と呼んでみた。するとシュウッという音がしてあっという間にハルタカが目の前に現れた。
「わっ、びっくりした!」
「終わったか」
マヒロの驚きにも動じることなく声をかけてくる。その顔にはあまり表情がなく、どういう感情なのか今はよくわからない。
すぐにひょいとマヒロを抱きかかえ、ベッドのある部屋に戻る。大人に抱きかかえてもらったのなんて子どもの時ぐらいしかなかったのに、この二日でやたら抱き上げられている気がする。
だがしっかりと安定感があるハルタカの腕の中は、心地よかった。
部屋に戻ってベッドに下ろされる。そしてハルタカはマヒロの頭に巻かれている布をすっと手に取って外した。
「え、なんで」
「髪を乾かしてやろう」
そう言って、マヒロの頭に手をかざし温かい風をぶわっと吹かせた。あっという間に髪が乾く。しかも高級ドライヤーを使ったようなつるつるさらさらの出来上がりで、思わずマヒロは感動の声を上げた。
「すご!めっちゃ髪がさらさらになった!ハルタカすごいなあ!」
「‥喜んでもらえたならよかった」
そう言ってハルタカはふっと笑った。やはりハルタカの笑顔の破壊力はすさまじい。マヒロはその美しい笑顔を見て顔が赤くなるのを感じた。そのマヒロの顔を見て、ハルタカは眉根を寄せマヒロの額に手をあてた。
「顔が赤い。湯あたりでもしたか?」
「いや、違う違う、大丈夫!」
焦って必死に否定する。体調がいいアピールをしておかないと明日街に連れて行ってもらえないかもしれない。
そして、ハルタカドライヤーを目の当たりにしたマヒロは、小さい声でハルタカに頼んだ。
「ハルタカ、このタオルもちょっと乾かしてくれませんか‥?」
「構わんが、あとで色々まとめてやるぞ」
「いや、是非!何も訊かずに、今これ乾かしてほしい!してくれたらすっごく嬉しい!」
不思議そうな顔をするハルタカを拝み倒し、下着を忍び込ませたタオルを一気に乾かしてもらった。
明日、出かける時にノーパン状態にはならなくてすみそうで、マヒロはほっとした。
石鹸も髪を洗うものも、使ってみればとてもいい匂いで、ああこれがハルタカの匂いなのかも、と思いついた。そして同じ匂いになってしまったことに気づき、一人赤面した。
(貸切露天風呂みたいで、贅沢だなあ‥)
やはり日本人だからなのか、湯船に身を沈めていると癒されている気がする。張りつめていた心や身体が解きほぐされているようにも感じた。
(ハルタカさん‥ハルタカって呼んだ方がいいんだっけか。いい人っぽいんだけど、なんであんなに私に執着するのかは解らないな~。やっぱり、パンダ的興味なのかなと思うけど‥世話したいとかも、生態に興味ある感じかもしれないし)
とにかく、こんな短時間で好きになるとか(セックス込みの)付き合いがしたいとかいうのは本当に解らない。理解できない、という方が正しいだろうか。
だが、マヒロも若い女性なのであのような恐ろしいほどの美青年に好意らしきものを示されているのは悪い気はしない。ただ、その反動がどう出てくるのかが怖いのだ。
(正気に戻ってから捨てられたりしたらみじめだもんな。とにかく、自分で生きていく道を見つけないと、不安でたまんない)
ここにしばらくいたとしても、タツリキという超能力を自由自在に使えるハルタカのもとでは何かの技術を身につけるということも難しそうだ。ハルタカの傍にいる間はこの世界の事などをよく学んで、いずれヒトが住んでいるところに行った時に何か自分ができる仕事はないのかを探そう。
せっかく受験勉強も頑張ってきて進学するつもりだったのに、急に就職を考えなければならなくなったのは残念だがこのような事態では仕方がない。まずは一人で生きていく方法を考えるのが最優先だ。
(そう考えると、悪いけど番いだ何だって考えてる時でもないよな、私)
ふーと息を吐きながら大きな湯船の中でぐっと身体を伸ばす。
(‥あれ、明日着物を買いに街に行くって言ってなかったっけ?)
初めて、ハルタカ以外のこの世界の人に会えるチャンスだ。色々見て、どういう世界なのかを観察しなければならない。
(身体の調子が悪くなければ、って言われてたな‥明日までは大人しくベッドの住人になってよう、うん)
ハルタカはマヒロの事に関しては少し過保護っぽいところがあるように見えるので、元気になったとみてもらえるように今日は大人しくしておいた方がいいだろう。
よし、あがろう。
マヒロはこっそり洗ってぎゅっと絞った下着を持って、脱衣所に向かった。
下着なしで衣服を身につけるのはかなり、抵抗があるが仕方がない。身体をざっと拭いて小さな布を頭に巻き付け、大きなタオルのような布の中に下着を忍び込ませた。
そしてそっと脱衣所から廊下に繋がるドアを開けて辺りをうかがう。名を呼べ、と言われたが、大きな声で呼んだら来てくれるということだろうか。
なんだかちょっと恥ずかしいので、普通くらいの声で「ハ、ハルタカ~‥」と呼んでみた。するとシュウッという音がしてあっという間にハルタカが目の前に現れた。
「わっ、びっくりした!」
「終わったか」
マヒロの驚きにも動じることなく声をかけてくる。その顔にはあまり表情がなく、どういう感情なのか今はよくわからない。
すぐにひょいとマヒロを抱きかかえ、ベッドのある部屋に戻る。大人に抱きかかえてもらったのなんて子どもの時ぐらいしかなかったのに、この二日でやたら抱き上げられている気がする。
だがしっかりと安定感があるハルタカの腕の中は、心地よかった。
部屋に戻ってベッドに下ろされる。そしてハルタカはマヒロの頭に巻かれている布をすっと手に取って外した。
「え、なんで」
「髪を乾かしてやろう」
そう言って、マヒロの頭に手をかざし温かい風をぶわっと吹かせた。あっという間に髪が乾く。しかも高級ドライヤーを使ったようなつるつるさらさらの出来上がりで、思わずマヒロは感動の声を上げた。
「すご!めっちゃ髪がさらさらになった!ハルタカすごいなあ!」
「‥喜んでもらえたならよかった」
そう言ってハルタカはふっと笑った。やはりハルタカの笑顔の破壊力はすさまじい。マヒロはその美しい笑顔を見て顔が赤くなるのを感じた。そのマヒロの顔を見て、ハルタカは眉根を寄せマヒロの額に手をあてた。
「顔が赤い。湯あたりでもしたか?」
「いや、違う違う、大丈夫!」
焦って必死に否定する。体調がいいアピールをしておかないと明日街に連れて行ってもらえないかもしれない。
そして、ハルタカドライヤーを目の当たりにしたマヒロは、小さい声でハルタカに頼んだ。
「ハルタカ、このタオルもちょっと乾かしてくれませんか‥?」
「構わんが、あとで色々まとめてやるぞ」
「いや、是非!何も訊かずに、今これ乾かしてほしい!してくれたらすっごく嬉しい!」
不思議そうな顔をするハルタカを拝み倒し、下着を忍び込ませたタオルを一気に乾かしてもらった。
明日、出かける時にノーパン状態にはならなくてすみそうで、マヒロはほっとした。
12
あなたにおすすめの小説
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。
真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。
狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。
私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。
なんとか生きてる。
でも、この世界で、私は最低辺の弱者。
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。
和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。
黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。
私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと!
薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。
そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。
目指すは平和で平凡なハッピーライフ!
連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。
この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。
*他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる