【完結済】龍人に救われた女子高生が、前提条件の違う異世界で暮らしていくには

天知 カナイ

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69 龍人の役割と照り焼き

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談話室に行ってジャックが入れてくれたお茶を啜りながらいろいろな話をした。マヒロが街で仕入れてきた情報やアーセルたちの異生物退治の話。そしてハルタカがどういうところに行ってどんな仕事をしてきたか。
ハルタカは、カルカロア王国がある大陸とその傍にある島嶼国をいくつか回るのが一応仕事になっているらしい。そういう割り当ては龍人タツトの最長老が何となく決めるのだそうだ。ハルタカのシンシャに当たるヒトは少し離れたところに住んでいるらしく、百年くらいは会っていないと言っていた。
「回るってどういう感じの事をするの?」
「そうだな。まずは為政者に会って話を聞くことがある。後は普段の暮らしをしているような民たちの間を回って様子を見ることが多い。そして森や川、山や海の様子も見る。大きな災害が起こりそうな兆候が見えればそれに対して対処をする」

やっていることが何か神様っぽいんですけど‥
「それって全部龍人タツトがやらなきゃいけない事なの?」
そう尋ねるマヒロは、ハルタカは少し考えこむように眉を寄せて顎に手を当てた。
「‥実際に我々が直接手を下すことは少ない。その時の流れを見て、どうしても介入した方がいい、と思われることにだけ、直接かかわる。龍人タツトの力は大きいから、できるだけヒトの力、自然が持つ本来の力で対応できるように調整するんだ」
「ああ、だからハルタカは自分たちの事を『調整者』って呼ぶんだね」
ハルタカは少し驚いて目を瞠った。
「私はそんなことをマヒロに話していたか?」
「ん?うん、調整者なのに自分を律せない、みたいな話をしてたことがあるよ」
ハルタカは、その話を聞いて顔を赤くした。そんなハルタカの顔を見たのは、マヒロはおそらく初めてだったので思わずじっと見つめてしまった。
「‥‥未熟で恥ずかしいな。あまり見ないでくれ、マヒロ」
「ちょっと可愛い、ハルタカ」
マヒロがそう言って小さく笑うと、ハルタカはますます顔を赤くして自分の大きな手で顔を覆ってしまった。
そんな様子も珍しくて、かわいいな、と思った。

そして今ハルタカは少し忙しいらしく、今日だけアーセルの屋敷に泊まってまたどこかに視察に行かねばならないらしい。そもそも龍人タツトとはそのようにして世界を見守る役目があるから、各地に住処を持っているほど忙しいもののようだ。ハルタカ自身も全部で十か所ほどの住処を持っていると言っていた。
家令にお願いしておいた客室へハルタカを案内してから、今日は一品、マヒロも料理を作ろうと思い立った。
ハルタカには談話室でくつろいでもらうことにして、厨房を訪ねた。
「カッケンさん、忙しいところごめんなさい。出来たら今日、ハルタカのために一品作りたいって思ったんだけど、そういう余裕ってあるかな?無理ならいいんだけど‥」
カッケンは肉の筋取りをしていた手を休めて笑った。
「全く問題ありませんよ、マヒロ様。今日は正餐方式じゃなくて大皿料理にしようと思ってたところだったんでね。一品増えてくれたら賑やかになっていいや」
「わ、ありがとう!何か使ってほしくない材料ってある?」
「ああ。食後のデザートに使いたいんでルコは残しといてください。今日はあまり数買えなかったんでね」
「うん、果物系は使わないから大丈夫!でもルコ珍しいね、売ってたんだ」
ルコは日本でいうところの苺のような果実である。大きさは梨ほどもあるのだが、中まで真っ赤で甘酸っぱく美味しい。ただ、なかなかヒトの手では栽培が難しく森の奥まで分け入らないと滅多に穫れない果実だ。
カッケンは満足そうに頷いた。
「だんだんマヒロ様も色々食材のことがわかってきなすったね。‥このルコは栽培品なんです。ずっとルコの栽培を試みていた農家がいて、ようやく幾つか実ったっていうんで特別に持ってきてくれたんですよ。だから、マヒロ様がおっしゃってた、あの、しょーとけーきってやつを作ってみようと思って」
この国にある甘いお菓子はもう色々と食べていたが、未だにいわゆる生クリームを泡立てたホイップクリームを食べたことがなかった。そう思ったマヒロがカッケンに生クリームの説明をした。やはりそういう食べ物はなかったようで、色々と探し羊に似た生物の濃い目の乳を手に入れて辛抱強く泡立ててみたのだ。その泡立てるための泡立て器も一から作ったので結構時間がかかった。しかしホイップクリームはできたのだ。
カッケンはこれに大喜びで、色々とホイップクリームを使って料理や菓子を試していた。
「わ、ショートケーキかあ!楽しみ!」
マヒロは思わず手を叩いて喜んだ、ルコなら本当に苺のショートケーキに近いものができるだろう。
「マヒロ様は何を作るんです?」
「ん~‥照り焼きっぽい奴にしようかな」
カッケンはははっと笑った。
「肉料理はまだ決めてなかったからちょうどいいや。いい砂糖もあるから使ってください」
マヒロは前掛けを締めて、よし、と包丁を握った。
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