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03 ハートマーク100個
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03 ハートマーク100個
僕はバス通学をしているので、よく県外生徒と間違われるけれど市内に住んでいた。あまり体が丈夫ではないと母親が心配して高校はバス通学になった。父がバスの中で読むようにと室生犀星の詩集をプレゼントしてくれたが、さっぱり読む気になれず、見栄っ張りな父のことだから、きっとこの詩集をプレゼントしたかっただけだろうと思った。
バスの中で読む本も音楽も僕には必要なかった。意外に僕はバスと相性が良くて乗っているだけ楽しかった。バスからの景色は僕をワクワクさせた。親の車から見る景色とも全く違って目線がぐんと上がったところから見ると幼い頃から知っている風買いが違って見えた。パトカーの屋根に数字が書いてあるのを僕と同じ高校一年生がどのくらいの確率で知っているだろうか。通行人の特に自転車に乗っている人は意外に無防備だ。こっそり笑っている人を毎日数人見かけて僕も一緒に笑った。朝の通学時に学生が一斉に並んで自転車を漕ぐ横を僕はバスから眺めて同級生がいたら手を振った。
ある日、いつものようにバスに乗って外を見ているとスポットライトで照らし出されたようにひかり、浮かび上がる彼を見つけた。その凛々しい表情の彼に僕は一目惚れをした。ついでに言うとたぶん僕の初恋。なんでたぶんかと言うとクラスの女子が幼稚園の恋は初恋にカウントしてはいけないと言っていたので、だったら僕の初恋は朝の彼。彼の名前を知らなかったから勝手に「朝くん」と読んだ。
朝くんとは毎朝会えるわけではなくって、週に2,3回見かけられたらいい方だった。僕の住んでいる地域は県立高校の男子はもれなく学ランだったので、朝くんが県立高校の男子だって事しかわからなかった。いつも見かける朝くんは四丁目あたりを自転車で走っていた。今朝は朝くんに会えなかったとしょんぼりしていたら、僕の乗るバスの前を朝くんが自転車で走っていて自転車の後ろに貼られたステッカーの色が水色だったので朝くんが工業高校の生徒だってことが分かった。工業高校とか朝くんにとても似合う。機械とか詳しいのだろうか?
それから数日後に朝くんがあろうことか僕に向かって笑顔で手を上げた。信号待ちのバスには学生は僕しか乗っていなくて、それでも一応バスの中を僕は見渡した。みな本かスマホをいじって下を向いている「僕??」僕は咄嗟に下を向いてしまったので姿勢を正して、はにかみながら顔を上げた。朝くんの笑顔。口の横に縦に出来ているあれは、笑い皺?長細いエクボなのかな? かっこよかった。朝くんのその笑顔が反対側の歩道にいた友人に向けられてものだと気づいても、僕は落胆しなかった。そのくらい朝くんの笑顔はとびきりだった。ちょっぴり恥ずかしかったけど…。
おかげで僕はもっと、もっと、朝くんのことが大好きになってしまった。工業高校に行った中学の同級生も何人かいたけれど勝手に探るようなことは朝くんに失礼だと感じてやめた。なぜなら、僕という存在が回り回って朝くんに万が一にも知られたらと思ったら怖かった。そういう噂って高校生のあいだでは意外に広まった。ちょっと自信のある女の子なんかは逆にそれを活用して他校の男子に粉を掛けたりしているようだ。「一本釣りだぁ!!」なんて言っている女子を見るとつくづく逞しいとため息が出る
やがて季節は冬に向かって朝晩ひんやりするようになった。僕は相変わらずバスの中から朝くんを毎朝探していた。三丁目あたりから気を付けて四丁目で朝くんに会えた日はラッキー☆冬に弱い僕だけど今年は風邪をひかないような気までしてきて、もはや朝くんの存在って偉大。恋って偉大。朝くんと少しでも仲良くなれたらなんてこの頃少し考えるようになったりして。名前も知らないのに……。
ふうう―っと、ため息をついたらほんのりバスの窓が曇って、そういう季節なのだ。寒いと余計に人恋しくなるから僕もちょっぴりもの寂しいのだろうと思った。もう一度窓に息を吹きかける。ちょっぴり曇ったガラスに急いでハートマークを書くけど書いてるそばからそれは消えた。これでいい。僕の恋はこういうやつでいいと独りごちた。
それから四丁目の信号に差し掛かるたびに僕は窓に息を吹きかけてハートマークを書いた。そのハートマークがだんだん自然に消えていかないようになって僕は書いたそばからそれを自分で消すようになった。あまりにそれが毎日続くので、これが100日続いたら…。いつしかそれが願掛けみたくなった。
100日続いたら…僕はどうしようというのだろうか?朝くんに話しかける?四丁目のバス停で降りて朝くんの名前と学年を聞こうか?でも聞いた後僕は遅刻してしまうけど…、一世一代の勝負だからいいよねと言い訳してみるが、そんなことを僕は自分が絶対にしない事も知っていた。通学ラッシュにバス通の他校生の男子から話しかけられる工業高校の男子って、あっという間に噂になって僕は朝くんに嫌われる自信があった。
ハートマークは70番台に突入していて冬休みが入るから100個描くのは年明けかなとか考えたらお腹がキューっと痛くなって、もうこんなの書くのは止そうって思いながら四丁目の信号が近づくと窓に顔を寄せた。今朝は朝くんがマフラーをして白い息を吐いて信号待ちをしていた。唇が少し荒れていてリップクリームを貸してあげたいと思った。ガラスに息を吹きかけて僕はハートマークの中に朝くんを収めた。朝くんがこっちを見たような気がして慌ててそれを消した。
僕はバス通学をしているので、よく県外生徒と間違われるけれど市内に住んでいた。あまり体が丈夫ではないと母親が心配して高校はバス通学になった。父がバスの中で読むようにと室生犀星の詩集をプレゼントしてくれたが、さっぱり読む気になれず、見栄っ張りな父のことだから、きっとこの詩集をプレゼントしたかっただけだろうと思った。
バスの中で読む本も音楽も僕には必要なかった。意外に僕はバスと相性が良くて乗っているだけ楽しかった。バスからの景色は僕をワクワクさせた。親の車から見る景色とも全く違って目線がぐんと上がったところから見ると幼い頃から知っている風買いが違って見えた。パトカーの屋根に数字が書いてあるのを僕と同じ高校一年生がどのくらいの確率で知っているだろうか。通行人の特に自転車に乗っている人は意外に無防備だ。こっそり笑っている人を毎日数人見かけて僕も一緒に笑った。朝の通学時に学生が一斉に並んで自転車を漕ぐ横を僕はバスから眺めて同級生がいたら手を振った。
ある日、いつものようにバスに乗って外を見ているとスポットライトで照らし出されたようにひかり、浮かび上がる彼を見つけた。その凛々しい表情の彼に僕は一目惚れをした。ついでに言うとたぶん僕の初恋。なんでたぶんかと言うとクラスの女子が幼稚園の恋は初恋にカウントしてはいけないと言っていたので、だったら僕の初恋は朝の彼。彼の名前を知らなかったから勝手に「朝くん」と読んだ。
朝くんとは毎朝会えるわけではなくって、週に2,3回見かけられたらいい方だった。僕の住んでいる地域は県立高校の男子はもれなく学ランだったので、朝くんが県立高校の男子だって事しかわからなかった。いつも見かける朝くんは四丁目あたりを自転車で走っていた。今朝は朝くんに会えなかったとしょんぼりしていたら、僕の乗るバスの前を朝くんが自転車で走っていて自転車の後ろに貼られたステッカーの色が水色だったので朝くんが工業高校の生徒だってことが分かった。工業高校とか朝くんにとても似合う。機械とか詳しいのだろうか?
それから数日後に朝くんがあろうことか僕に向かって笑顔で手を上げた。信号待ちのバスには学生は僕しか乗っていなくて、それでも一応バスの中を僕は見渡した。みな本かスマホをいじって下を向いている「僕??」僕は咄嗟に下を向いてしまったので姿勢を正して、はにかみながら顔を上げた。朝くんの笑顔。口の横に縦に出来ているあれは、笑い皺?長細いエクボなのかな? かっこよかった。朝くんのその笑顔が反対側の歩道にいた友人に向けられてものだと気づいても、僕は落胆しなかった。そのくらい朝くんの笑顔はとびきりだった。ちょっぴり恥ずかしかったけど…。
おかげで僕はもっと、もっと、朝くんのことが大好きになってしまった。工業高校に行った中学の同級生も何人かいたけれど勝手に探るようなことは朝くんに失礼だと感じてやめた。なぜなら、僕という存在が回り回って朝くんに万が一にも知られたらと思ったら怖かった。そういう噂って高校生のあいだでは意外に広まった。ちょっと自信のある女の子なんかは逆にそれを活用して他校の男子に粉を掛けたりしているようだ。「一本釣りだぁ!!」なんて言っている女子を見るとつくづく逞しいとため息が出る
やがて季節は冬に向かって朝晩ひんやりするようになった。僕は相変わらずバスの中から朝くんを毎朝探していた。三丁目あたりから気を付けて四丁目で朝くんに会えた日はラッキー☆冬に弱い僕だけど今年は風邪をひかないような気までしてきて、もはや朝くんの存在って偉大。恋って偉大。朝くんと少しでも仲良くなれたらなんてこの頃少し考えるようになったりして。名前も知らないのに……。
ふうう―っと、ため息をついたらほんのりバスの窓が曇って、そういう季節なのだ。寒いと余計に人恋しくなるから僕もちょっぴりもの寂しいのだろうと思った。もう一度窓に息を吹きかける。ちょっぴり曇ったガラスに急いでハートマークを書くけど書いてるそばからそれは消えた。これでいい。僕の恋はこういうやつでいいと独りごちた。
それから四丁目の信号に差し掛かるたびに僕は窓に息を吹きかけてハートマークを書いた。そのハートマークがだんだん自然に消えていかないようになって僕は書いたそばからそれを自分で消すようになった。あまりにそれが毎日続くので、これが100日続いたら…。いつしかそれが願掛けみたくなった。
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ハートマークは70番台に突入していて冬休みが入るから100個描くのは年明けかなとか考えたらお腹がキューっと痛くなって、もうこんなの書くのは止そうって思いながら四丁目の信号が近づくと窓に顔を寄せた。今朝は朝くんがマフラーをして白い息を吐いて信号待ちをしていた。唇が少し荒れていてリップクリームを貸してあげたいと思った。ガラスに息を吹きかけて僕はハートマークの中に朝くんを収めた。朝くんがこっちを見たような気がして慌ててそれを消した。
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