朧月

寂しさを埋めるモノ

0.4

朝９時に求人応募の電話をすると、履歴書不要の為、その日のうちに2人して面接が決まった。

「イケメンがいたら良いなぁ…」

「マッチョがいたら良いなぁ…」

2人でニヤニヤと笑いながらくだらない妄想を朝から繰り広げる。
一睡もしていないのにアドレナリンが放出されまくっていて、サンバの練習を突然始め出す程頭がおかしくなっていた。

「てかともちゃん何時から面接ー？私は11時からなんだけど」

「私は10時半だね…、サンバ踊ってる場合じゃ無いじゃない！急がないと！」

2人でバタバタと準備を済ませて、10時に家を出た。
皐月の自転車にまたがり、皐月を後ろに乗せて猛スピードで３０分の距離を突っ走る。

着いたのはギリギリ５分前。
セットした髪はボサボサで、朋美はつけまつげが片方無くなっていた。

「嘘でしょ…どこ行ったの私のつけまつげ…」

「ともちゃんに着けられたくなくて逃げちゃったねぇ」

うーん、と伸びをすると
朋美は私の横髪を思い切り引っ張る。
ブチブチと抜ける音が耳元で聴こえた。

「何すんの！薄毛で悩んでる子の大事な毛根に向かって！！」

「私のまつ毛、皐月のその薄い髪の毛が盗んでたのよほら！」

パッと見せられたのは、私の髪の毛とこんがらがっていたつけまつげ。
絡まりすぎて芋虫の様になっていた。

「あはは！気持ち悪ー！」

「こっちのつけまつげも貼りつけてやる！」

ギャアギャアと店の前で騒いでいると、中から1人の人が出てきた。
その姿に思わず見惚れてしまう程…

「元気が良いね、もしかして今から面接する子達？」

「…はい」

マッチョで、色白だが高身長で。
ナニも大きそうな膨らみ方をしている股間部分。

私と朋美のドストライクなイケメンは、まさかの社長の息子で何でも屋の社員をしているという。
私も朋美も身体中から鼻血が出そうな程ドストライクな人だった。