朧月

寂しさを埋めるモノ

0.5

「応募してくれてありがとう」

社長の立花さんというお爺ちゃんはとても優しく、私達を即採用してくれた。
この時程、誰かが仏様に見えた事はないだろうと言う程に心の中で拝みまくった。

「じゃあ、明日から来てくれるかな？」

社長の息子の晃さんは優しい笑顔で私と朋美に話しかけてくる。
もう私達はメロメロで、体から湯気が出るんじゃないかと思うくらい全身が火照りまくっている。

「ありゃ～…抱かれてぇ…」

「あわよくば愛人になりてぇ…」

帰り道、2人でそんな話ばかり繰り返し呟いていた為、きっと不審者に見えた事だろう。

「次こそはシンデレラになれるかなぁ」

皐月はのぼせきって、緩みまくった顔でニヤニヤしている。
私もきっと、同じ顔をしているだろう。

「シンデレラなんかなれないよ、だってガラスの靴も綺麗なドレスも持ってないんだもん。私達って」

「だよねぇ～、そもそも美女だから一目惚れされたって話しだしねぇ…。精子からやり直したい」

「わかる…」

そのまま歩き続ける事1時間半。
私達はファミレスに入ってメニューを開き、何を食べるかで20分も悩んでいた。

「私はハンバーグ定食のご飯大盛りで」

「えー！なら半分こしよ！私オムライスの大盛りで！あとドリンクバー２つ！」

皐月も私も食に貪欲で、食べ過ぎて絶対動けなくなるのにご飯はいつも大盛り。
決まって半分ずつ分け合って食べている。

「ともちゃん何飲む？」

「私コーラ！ありがと」

ドリンクバーでコーラとメロンソーダを注いで席に戻ると、携帯と睨めっこしている朋美の真剣な表情。

「すんごい真面目な顔しててウケる」

「美菜からメールきたんだけどさぁ…これどー思う？」

パッと見せられた画面には
【杏果から話し聞いたんだけど、そんなに男が好きなら紹介してあげよーか？人の男に手出しちゃダメでしょ笑】
と、書かれていた。

「えー、誰の事なんだろ？分かんないけど杏果の彼氏と朋美がヤッちゃったの？」

「てか杏果って彼氏いたっけ？」

どうなんだろうと言いながら
お待たせしましたと置かれたハンバーグ定食とオムライスを口に入れて流し込む。

だが、どれだけ食べても何処か満たされないでいた。