朧月

淡い夢

0.9

会社に行ってすぐに連れて行かれた場所は、東京ドームくらい大きい金持ちの言家。

中から出てきた女の人は着物を着て髪を結い、とても気品あるべっぴんさん。
立花さんが見惚れてしまうんじゃないか、と2人で焦ってしまう程に。

「あら、今日は可愛い子達を連れて来られているのですね」

「そ、そんなに褒められると鼻血が出ちゃいますでございまする」

皐月は緊張しすぎて挙動不審になり、様子のおかしい人になっていた。
その姿に少しだけ緊張もほぐれる。

「ふふ、ではよろしくお願いします」

べっぴんさんに連れられて玄関の扉の前に立った時、その光景に思わず絶句した。

「よし、じゃあ片付けて行こうか」

扉を開けると雪崩れの様に崩れ落ちてくるゴミの山。
べっぴんさんは夕方に帰りますと言い残して何処かに去って行く。

「立花さぁん…これウジ虫…」

「何食べてきたのあのべっぴんさん！異臭が凄い！！」

強烈な匂いと大量のウジ虫に発狂しながら、ゴミ袋にゴミを捨てて行く。
社長は大型のダンプに乗って家の前に車を停めて、慣れた手つきでゴミをダンプに乗せ始める。

「初日から的場さんの家に当てちゃってごめんね、昨日の夕方に気がついてしまって」

社長は苦笑いを浮かべ、外に出てきたゴキブリを手で掴んでゴミ袋に詰め込む。
その姿だけで吐き気が一気に頂点に。

「吐く…うぉえ！！」

新品のゴミ袋に朋美はゲロをぶち撒け、私も貰いゲロをしてしまった。
立花さんドン引きしたよね…と思いながら振り返ると、ちょっと待っててねといって水を買ってきてくれて。

「大丈夫、僕も最初は吐いてばかりだったから気にしないで。落ち着いたらまた掃除しようね」

ニコッと笑ったその表情はまるで天使が舞い降りた時の様で。
丁度、立花さんが立っている位置は太陽の位置と同じだった為、後光が差していた。

「ありゃ神様だ…人間に化けた神様だ…」

「はぁ…好き…」

「ともちゃん、私女に興味は無いよ…」

１０分程水を飲んでから仕事に戻り、強烈な匂いを立花さんのスマイルでかき消しながら仕事に励んだ。