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淡い夢
1.3
しおりを挟むあまりの激痛に目を覚ましたのは、深夜3時の事。
真っ暗な部屋で、誰かが私の手を握る。
朋美は結局帰らなかっただろうか?
そう思いながら上半身を起こすと、立花さんが手を握り眠っていた。
「なんで立花さん…?てか寝顔もイケメン…」
ふと窓から外を見ると、澄んだ星空が広がっている。今日は新月だ。
起こさないようにそーっと台所へ行き水を飲んでいると、物凄い音と共に痛いという声が聞こえてきた。
「あっ!皐月ちゃん動いちゃ駄目だよ!」
バタバタと一階に降りて来てすぐに、大袈裟な程慌てながら心配する立花さん。
その姿に私はゲラゲラと笑う。
「そんなに心配しなくても、私頑丈なんで!ほら!」
軽やかにサンバを踊ってみせると、表情が緩みニコニコと笑って座り込む。
「なんでサンバなの」
御馳走様です、と言わんばかりの美しい笑顔を見せられる。
すると慌てて立花さんが何処かに行った時、興奮しすぎてなのか、殴られすぎてなのかは分からないが鼻血が大量に出始めた。
バタバタと戻ってきた立花さんにトイレットペーパーごと鼻に押し当てられ、私はまた笑う。
「立花さん見てたら鼻血出ちゃった」
「勘弁してよもう…」
耳まで赤くなる立花さん。
勘弁してほしいのはこっちだ。
「一目惚れって、信じます?」
無意識にそう口にすると、立花さんは少し曇った表情をして私を見る。
その表情はやり終わった後の男達の表情と同じで。
「君も外見で好きになるの?」
冷たく私に言い放つ言葉は、どこか寂しげだった。
「これから中身を知っていきたいんですけど、駄目ですか?」
飲み終えた水を冷蔵庫にしまい、床に立花さんを座らせる。
目線を合わせてじっと見つめると、俯いていた立花さんとようやく目が合った。
「じゃあ試しに付き合ってみればいいよ、きっと君も幻滅するだろうけどね」
「それはお互い様ですよ、私の中身を知ってしまえばきっと誰も私の顔なんか見たく無くなりますから」
これ以上何も言葉を交わす事無くベッドに行き、肌を重ね合わせる。
今までの男達よりも丁寧で、本気で私を好きなのかも知れないと淡い夢を抱く程、優しかったんだ。
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