朧月

淡い夢

1.4

次の日、私と朋美は休みになって
朋美と朋樹は泣き腫らした顔で私の元へとやってきた。

「ははっ、ブサイクな顔して～！」

傷だらけの顔で口を大きく開けて笑う皐月に泣きながら抱き付く朋樹。
もう３日もろくに眠れていなかった朋樹の目の下はクマが出来ていて、気が付いたら朋樹は眠ってしまっていた。

「あれから社長がお母さんとお父さんに話をしてくれたんだけど…ダメだった」

「ならここに居れば良いよ」

「また迷惑かけちゃうから駄目だよ」

「迷惑かけてなんぼでしょ！私が良いって言ってるんだからどんどん迷惑かけて！カモン！」

両手を大きく広げてドヤ顔の皐月に、私はまた泣いてしまった。
泣き止むまでひたすら横で携帯を触り、これで良しと微笑む。

「朋美、明日から毎日勉強しよう！」

「何で…？」

「自分のためにだよ！両親とも高卒認定ってやつ受けたら文句も言えないし、自分のやりたい事が見つかったら武器になるでしょう？」

頑固な朋美も流石に折れたのか、小さく頷く。
今日は2人を寝かせて、私はシャワーで傷を綺麗に洗い流す。
ヒリヒリと染みて、一人で騒ぎながらなんとか洗い終わった。

外に出ると、澄み切った晴天。
暖かさと少し肌寒い風が身体中に染み渡る。

『はーい』

「皐月でーす！遊びに来ましたー！」

ドタバタと音を立てながら勢い良く開かれた扉の先にいるのは、朋美のお母さん。

「なんで来たの…？」

「私の家に2人とも来させたんです、勉強もさせるし朋美と一緒に高卒認定？受けます、朋樹も学校に行かせて卒業させますから、安心して下さい！んじゃバイバーイ」

大きく手を振り去って行く朋美の友人。
嵐のように去って行く彼女の後ろ姿が見えなくなるまで見つめ続けた。

私だって、子供達と離れたい訳が無い。
だが昨日、娘が勤め出したという会社の社長さんから話を聞き、私の教育の仕方が間違っていたと気付かされてしまった。

『いい人生かを決めるのは親じゃ無い
レールの上を歩かせるのは、それはもう子供の人生では無い、貴方達の人生になってしまう』

旦那は怒りを剥き出しにして追い返してしまったが、図星を突かれたと分かっているからなのだろう。

いつの日か思い描いていた家族の形とは随分と形を変えて行ってしまった。
その原因は私達なのだ、無力な自分にただひたすら泣く事しか出来なかった。