朧月

カフェ・オーレ

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容赦の無い人

1.7

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朋美が帰ってこないまま、1ヶ月という時間が流れた。
職場では一切話さず、立花さんだけが週に2回のペースで私の元へと通いに来る。

朋樹も外泊が増えてはいったが、学校にはちゃんと通っていると写真付きで毎日送られてきてはいた。

「寂しいね、こんな広い部屋に1人って」

立花さんは挿入しながら私の頭を撫でる。

「もう寂しいとか寂しく無いとか、どーでもいいや」

そっか、と言いながら腰を振り私の奥を突く。
彼は優しい、精子を出す時は必ず私にキスをしてからだ。

だが1つだけ変わった事がある。

事が済むと、すぐに携帯を持ってお風呂に1人で入りに行く事。
なんでなのか?と考えるのも面倒だ。

「生まれ変わったらパンダになりたいなぁ~、」

ボーッとベッドから窓の外を眺める。
しばらくすると、ガチャっと玄関の扉が開く音。
何も告げずに帰って行った立花さんを、窓の外から見えなくなるまで眺めていると、携帯が何回も何回も鳴り響く。

非通知からの電話だった。

『久しぶり』

聴き慣れた女の声。
何処かで聞いたことあるような…無いような…

「だれー?」

『朋美だけど。』

突然の連絡にガバッと起き上がり
興奮しながら奇声を上げると、うるさいなぁと静かに言われる。

「どこにいるの!?元気なの!?」

『晃さんから聞いてない?さっきまでヤッてたんでしょ?』

「何で知ってるの?てか晃さんって…」

皐月は少しだけ黙った後、大きな声で『付き合えたの!?』と叫ぶ。
電話越しでも部屋に響く程の声量は、私の鼓膜を破りにかかった。

「そうだよ、だからもう晃さんとは合わないで」

『うん!分かった!もう合わないね!』

なんて単純な女なのだ。
話しかけていたが強制的に電話を終了させて、チェーンの掛けられた部屋で晃さんの帰りを待つ。

「あ…朧月だ…。」

人は普通、澄み切った満月を好む。
なのに皐月は何故か、霞んだ朧月を好む。

もう春も終わるから、見れるのはこれが最後だろうな…

しばらくするとチェーンが開けられ、晃さんは私の左手首にかけた手錠を、繋げられていた机から外した。
もうどれだけ時間が経っただろう。

駅で待ち合わせて告白をした後から、ずっと知らない場所に閉じ込められている。

「…あれ?これ、皐月ちゃんに電話したの?」

消し忘れた携帯の履歴を見た晃さんは、携帯を何処かに持っていく。
大きな音を立てて壊される音が、部屋中に響き渡る。

ただ好きになっただけなのに、どうしてこんな事になってしまったのだろう…
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