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23話 上 ワシは焼き味噌がほしい
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「変なヤツら……たしかに挙動がおかしいな」
ゴルンにうながされ、皆がモニター前に集まる。
そこには5人で固まり、なにやら壁面やオブジェクトを調べている冒険者の姿があった。
「レベルも高いぜ。アベレージ23だ」
改めて分析結果を見ると1番強いのが26レベル、弱いのが19レベルのようだ。
レベルにバラツキがあるパーティーらしい。
「前衛が2人、両方とも盾役寄りです。斥候が2人、レベル19の女性は看破のスキルがあります。あとは回復役が1人、こちらも偵察スキルはあるようですが初級ですね」
看破とは少し珍しいスキルで、嘘や幻術を見破るスキルだ。
これが中級あるらしい。
「偏った編成だな。探索特化というか……」
「もしくは臨時で組んだか。どちらにせよ面白くねえ動きではあるな」
俺とゴルンは不審な冒険者の動きを注視した。
明らかに他の冒険者とは違う意思を持った動きだ。
「これは、あれですかね?」
「知ってるのか? リリー」
俺はリリーがこぼした言葉に食いついた。
ダンジョンについての知識があるのは彼女なのだ。
「あ、いえ、知ってるかと言われれば……」
「間違っていても構わない。教えてくれ」
リリーは少し遠慮したが、トラブルの芽は早めに摘んでおきたい。
俺はリリーの発言をうながした。
「今まで、いくつかのダンジョンでマスタールームを人間に破壊された事例があります。それは大半が偶発的な事故なのですが、マスタールームには人間の社会では作れない魔道具や魔石――コアですね。それらがありました」
リリーは少し言葉を切り、チラリとマスタールームの隅に目をやった。
外からは確認できないが、そこには大きな円柱型の魔石、ダンジョンコアが収められている。
「初期モデルのダンジョンはマスタールームの隠蔽自体が甘く、事故が起きやすかったのは否めません。それらの成功体験は冒険者にマスタールームを探させる動機には十分でした。いくつかのダンジョンの障壁が突破され、廃棄が報告されています」
「なるほど、コイツらもその手合か」
たしかにマスタールームを探っているのならば、この不審な動きには説明がつく。
いちいち看破で探りながら移動しているのだろう。
「ですが、それはかなり前の……それこそ初期モデルのダンジョンの話です。今では認識阻害も2重ですし、ヒューマンエラー以外の侵入は戦後では1件のみのはずです」
「それでも1件あるわけだな。コイツらがその1件の可能性は?」
俺の疑問にリリーが「うーん」と考えこんでしまう。
アゴに手をあて目をつぶり、記憶を掘りおこしているらしい。
「ほとんど看破中級くらいでは見つけられないはずです。もちろんゼロとは言えませんが……それはごく低い可能性です。今の様子を見るに、彼らが特殊な魔道具などを使用する可能性も考慮する必要はないと思います」
リリーの言葉に俺は「なるほど」とうなずいた。
たしかに認識阻害を突破する特殊な魔道具があるなら、いちいち壁を調べたりはしないだろう。
「だが、他に思い当たることもないし、彼らはマスタールームを探っていることを前提に監視しよう」
「そうですね。誰かがボス部屋に侵入したらアラームが鳴るように設定しましょう」
リリーは端末を操作し、設定を変えているようだ。
この辺は俺とゴルンは弱いし、外部職員のタックには触らせづらい。
まさにリリー専任の仕事である。
「ん? なんだかいい匂いがするな」
少し気がゆるむと、しょう油が焦げる香りに気がついた。
見ればキッチンでアンが調理を始めたようだ。
「今日は皆さんお急がしそうなので焼きおにぎりとか、玉子焼きとか、軽く摘めるものを作りました。お時間のある方は召し上がってくださいね」
すでに大きな皿には炒めたウインナーや生春巻きが盛りつけられ、爪楊枝が刺さっている。
「あっ! 焼きおにぎりは味噌もできるっすか!?」
「ワシは焼き味噌がほしい」
どうやらガリッタ家は味噌派らしい……というかゴルンの焼き味噌はただのツマミだな。
だがアンは「はい、できますよ」と笑顔で対応している。
できた娘さんだ。
「お姉様もいかがですか?」
「ありがとう、作業が一息ついたらいただくわ」
今まで弁当派だったリリーも、最近はアンの作る昼食を食べることにしたらしい。
ちなみにこのダンジョン食堂、1食200魔貨だ。
これは食材購入費の一部となる。
社食に利益は不要だ。
「エド、2階層のモンスターですけど、私に心あたりがあります。企画書にまとめてみますので、数日中にでも提出したいのですが、よろしいですか?」
「本当か? 別に口頭でもかまわないが……」
作戦の立案などを書面にするのは軍みたいな大所帯で責任の所在を明確にするためだ。
このダンジョンにおいては必要ない気もするのだが、リリーは首を振った。
「私も自信がないので確認したいこともあります。まだまとまってなくて……」
「そうか。何か手伝えることがあったら遠慮なく言ってくれよ」
そんな会話をしているうちに焼きおにぎりがテーブルに並ぶ。
俺とリリーは不審な動きをする冒険者を確認し、食事をとることにした。
5人組は夜半までウロウロとした後、ダンジョン回復の泉の近くでキャンプを張ったようだ。
少し気になるヤツらではあるが、滞在でDPが入るのならばありがたい。
ゴルンにうながされ、皆がモニター前に集まる。
そこには5人で固まり、なにやら壁面やオブジェクトを調べている冒険者の姿があった。
「レベルも高いぜ。アベレージ23だ」
改めて分析結果を見ると1番強いのが26レベル、弱いのが19レベルのようだ。
レベルにバラツキがあるパーティーらしい。
「前衛が2人、両方とも盾役寄りです。斥候が2人、レベル19の女性は看破のスキルがあります。あとは回復役が1人、こちらも偵察スキルはあるようですが初級ですね」
看破とは少し珍しいスキルで、嘘や幻術を見破るスキルだ。
これが中級あるらしい。
「偏った編成だな。探索特化というか……」
「もしくは臨時で組んだか。どちらにせよ面白くねえ動きではあるな」
俺とゴルンは不審な冒険者の動きを注視した。
明らかに他の冒険者とは違う意思を持った動きだ。
「これは、あれですかね?」
「知ってるのか? リリー」
俺はリリーがこぼした言葉に食いついた。
ダンジョンについての知識があるのは彼女なのだ。
「あ、いえ、知ってるかと言われれば……」
「間違っていても構わない。教えてくれ」
リリーは少し遠慮したが、トラブルの芽は早めに摘んでおきたい。
俺はリリーの発言をうながした。
「今まで、いくつかのダンジョンでマスタールームを人間に破壊された事例があります。それは大半が偶発的な事故なのですが、マスタールームには人間の社会では作れない魔道具や魔石――コアですね。それらがありました」
リリーは少し言葉を切り、チラリとマスタールームの隅に目をやった。
外からは確認できないが、そこには大きな円柱型の魔石、ダンジョンコアが収められている。
「初期モデルのダンジョンはマスタールームの隠蔽自体が甘く、事故が起きやすかったのは否めません。それらの成功体験は冒険者にマスタールームを探させる動機には十分でした。いくつかのダンジョンの障壁が突破され、廃棄が報告されています」
「なるほど、コイツらもその手合か」
たしかにマスタールームを探っているのならば、この不審な動きには説明がつく。
いちいち看破で探りながら移動しているのだろう。
「ですが、それはかなり前の……それこそ初期モデルのダンジョンの話です。今では認識阻害も2重ですし、ヒューマンエラー以外の侵入は戦後では1件のみのはずです」
「それでも1件あるわけだな。コイツらがその1件の可能性は?」
俺の疑問にリリーが「うーん」と考えこんでしまう。
アゴに手をあて目をつぶり、記憶を掘りおこしているらしい。
「ほとんど看破中級くらいでは見つけられないはずです。もちろんゼロとは言えませんが……それはごく低い可能性です。今の様子を見るに、彼らが特殊な魔道具などを使用する可能性も考慮する必要はないと思います」
リリーの言葉に俺は「なるほど」とうなずいた。
たしかに認識阻害を突破する特殊な魔道具があるなら、いちいち壁を調べたりはしないだろう。
「だが、他に思い当たることもないし、彼らはマスタールームを探っていることを前提に監視しよう」
「そうですね。誰かがボス部屋に侵入したらアラームが鳴るように設定しましょう」
リリーは端末を操作し、設定を変えているようだ。
この辺は俺とゴルンは弱いし、外部職員のタックには触らせづらい。
まさにリリー専任の仕事である。
「ん? なんだかいい匂いがするな」
少し気がゆるむと、しょう油が焦げる香りに気がついた。
見ればキッチンでアンが調理を始めたようだ。
「今日は皆さんお急がしそうなので焼きおにぎりとか、玉子焼きとか、軽く摘めるものを作りました。お時間のある方は召し上がってくださいね」
すでに大きな皿には炒めたウインナーや生春巻きが盛りつけられ、爪楊枝が刺さっている。
「あっ! 焼きおにぎりは味噌もできるっすか!?」
「ワシは焼き味噌がほしい」
どうやらガリッタ家は味噌派らしい……というかゴルンの焼き味噌はただのツマミだな。
だがアンは「はい、できますよ」と笑顔で対応している。
できた娘さんだ。
「お姉様もいかがですか?」
「ありがとう、作業が一息ついたらいただくわ」
今まで弁当派だったリリーも、最近はアンの作る昼食を食べることにしたらしい。
ちなみにこのダンジョン食堂、1食200魔貨だ。
これは食材購入費の一部となる。
社食に利益は不要だ。
「エド、2階層のモンスターですけど、私に心あたりがあります。企画書にまとめてみますので、数日中にでも提出したいのですが、よろしいですか?」
「本当か? 別に口頭でもかまわないが……」
作戦の立案などを書面にするのは軍みたいな大所帯で責任の所在を明確にするためだ。
このダンジョンにおいては必要ない気もするのだが、リリーは首を振った。
「私も自信がないので確認したいこともあります。まだまとまってなくて……」
「そうか。何か手伝えることがあったら遠慮なく言ってくれよ」
そんな会話をしているうちに焼きおにぎりがテーブルに並ぶ。
俺とリリーは不審な動きをする冒険者を確認し、食事をとることにした。
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