【ダンジョン公社、求人のお知らせ】 勤務地、72号ダンジョン。 オープニングスタッフ募集中。 未経験OK、アットホームな職場です。

小倉ひろあき

文字の大きさ
23 / 132

23話 上 ワシは焼き味噌がほしい

しおりを挟む
「変なヤツら……たしかに挙動がおかしいな」

 ゴルンにうながされ、皆がモニター前に集まる。
 そこには5人で固まり、なにやら壁面やオブジェクトを調べている冒険者の姿があった。

「レベルも高いぜ。アベレージ23だ」

 改めて分析結果を見ると1番強いのが26レベル、弱いのが19レベルのようだ。
 レベルにバラツキがあるパーティーらしい。

「前衛が2人、両方とも盾役寄りです。斥候が2人、レベル19の女性は看破のスキルがあります。あとは回復役が1人、こちらも偵察スキルはあるようですが初級ですね」

 看破とは少し珍しいスキルで、嘘や幻術を見破るスキルだ。
 これが中級あるらしい。

「偏った編成だな。探索特化というか……」
「もしくは臨時で組んだか。どちらにせよ面白くねえ動きではあるな」

 俺とゴルンは不審な冒険者の動きを注視した。
 明らかに他の冒険者とは違う意思を持った動きだ。

「これは、あれですかね?」
「知ってるのか? リリー」

 俺はリリーがこぼした言葉に食いついた。
 ダンジョンについての知識があるのは彼女なのだ。

「あ、いえ、知ってるかと言われれば……」
「間違っていても構わない。教えてくれ」

 リリーは少し遠慮したが、トラブルの芽は早めに摘んでおきたい。
 俺はリリーの発言をうながした。

「今まで、いくつかのダンジョンでマスタールームを人間に破壊された事例があります。それは大半が偶発的な事故なのですが、マスタールームには人間の社会では作れない魔道具や魔石――コアですね。それらがありました」

 リリーは少し言葉を切り、チラリとマスタールームの隅に目をやった。
 外からは確認できないが、そこには大きな円柱型の魔石、ダンジョンコアが収められている。

「初期モデルのダンジョンはマスタールームの隠蔽自体が甘く、事故が起きやすかったのは否めません。それらの成功体験は冒険者にマスタールームを探させる動機には十分でした。いくつかのダンジョンの障壁が突破され、廃棄が報告されています」
「なるほど、コイツらもその手合か」

 たしかにマスタールームを探っているのならば、この不審な動きには説明がつく。
 いちいち看破で探りながら移動しているのだろう。

「ですが、それはかなり前の……それこそ初期モデルのダンジョンの話です。今では認識阻害も2重ですし、ヒューマンエラー以外の侵入は戦後では1件のみのはずです」
「それでも1件あるわけだな。コイツらがその1件の可能性は?」

 俺の疑問にリリーが「うーん」と考えこんでしまう。
 アゴに手をあて目をつぶり、記憶を掘りおこしているらしい。

「ほとんど看破中級くらいでは見つけられないはずです。もちろんゼロとは言えませんが……それはごく低い可能性です。今の様子を見るに、彼らが特殊な魔道具などを使用する可能性も考慮する必要はないと思います」

 リリーの言葉に俺は「なるほど」とうなずいた。
 たしかに認識阻害を突破する特殊な魔道具があるなら、いちいち壁を調べたりはしないだろう。

「だが、他に思い当たることもないし、彼らはマスタールームを探っていることを前提に監視しよう」
「そうですね。誰かがボス部屋に侵入したらアラームが鳴るように設定しましょう」

 リリーは端末を操作し、設定を変えているようだ。
 この辺は俺とゴルンは弱いし、外部職員のタックには触らせづらい。
 まさにリリー専任の仕事である。

「ん? なんだかいい匂いがするな」

 少し気がゆるむと、しょう油が焦げる香りに気がついた。
 見ればキッチンでアンが調理を始めたようだ。

「今日は皆さんお急がしそうなので焼きおにぎりとか、玉子焼きとか、軽く摘めるものを作りました。お時間のある方は召し上がってくださいね」

 すでに大きな皿には炒めたウインナーや生春巻きが盛りつけられ、爪楊枝が刺さっている。

「あっ! 焼きおにぎりは味噌もできるっすか!?」
「ワシは焼き味噌がほしい」

 どうやらガリッタ家は味噌派らしい……というかゴルンの焼き味噌はただのツマミだな。

 だがアンは「はい、できますよ」と笑顔で対応している。
 できた娘さんだ。

「お姉様もいかがですか?」
「ありがとう、作業が一息ついたらいただくわ」

 今まで弁当派だったリリーも、最近はアンの作る昼食を食べることにしたらしい。

 ちなみにこのダンジョン食堂、1食200魔貨だ。
 これは食材購入費の一部となる。
 社食に利益は不要だ。

「エド、2階層のモンスターですけど、私に心あたりがあります。企画書にまとめてみますので、数日中にでも提出したいのですが、よろしいですか?」
「本当か? 別に口頭でもかまわないが……」

 作戦の立案などを書面にするのは軍みたいな大所帯で責任の所在を明確にするためだ。
 このダンジョンにおいては必要ない気もするのだが、リリーは首を振った。

「私も自信がないので確認したいこともあります。まだまとまってなくて……」
「そうか。何か手伝えることがあったら遠慮なく言ってくれよ」

 そんな会話をしているうちに焼きおにぎりがテーブルに並ぶ。
 俺とリリーは不審な動きをする冒険者を確認し、食事をとることにした。

 5人組は夜半までウロウロとした後、ダンジョン回復の泉の近くでキャンプを張ったようだ。
 少し気になるヤツらではあるが、滞在でDPが入るのならばありがたい。

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

異世界に召喚されたおっさん、実は最強の癒しキャラでした

鈴木竜一
ファンタジー
 健康マニアのサラリーマン宮原優志は行きつけの健康ランドにあるサウナで汗を流している最中、勇者召喚の儀に巻き込まれて異世界へと飛ばされてしまう。飛ばされた先の世界で勇者になるのかと思いきや、スキルなしの上に最底辺のステータスだったという理由で、優志は自身を召喚したポンコツ女性神官リウィルと共に城を追い出されてしまった。  しかし、実はこっそり持っていた《癒しの極意》というスキルが真の力を発揮する時、世界は大きな変革の炎に包まれる……はず。  魔王? ドラゴン? そんなことよりサウナ入ってフルーツ牛乳飲んで健康になろうぜ! 【「おっさん、異世界でドラゴンを育てる。」1巻発売中です! こちらもよろしく!】  ※作者の他作品ですが、「おっさん、異世界でドラゴンを育てる。」がこのたび書籍化いたします。発売は3月下旬予定。そちらもよろしくお願いします。

七億円当たったので異世界買ってみた!

コンビニ
ファンタジー
 三十四歳、独身、家電量販店勤務の平凡な俺。  ある日、スポーツくじで7億円を当てた──と思ったら、突如現れた“自称・神様”に言われた。 「異世界を買ってみないか?」  そんなわけで購入した異世界は、荒れ果てて疫病まみれ、赤字経営まっしぐら。  でも天使の助けを借りて、街づくり・人材スカウト・ダンジョン建設に挑む日々が始まった。  一方、現実世界でもスローライフと東北の田舎に引っ越してみたが、近所の小学生に絡まれたり、ドタバタに巻き込まれていく。  異世界と現実を往復しながら、癒やされて、ときどき婚活。 チートはないけど、地に足つけたスローライフ(たまに労働)を始めます。

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

処理中です...