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第1章 異世界
1話 異世界への旅立ち
しおりを挟む「あれ?俺はいったいどうしたんだ?」
先程までスマートフォンを操作していた青年は、電車を待っていたのだが、その青年を待ち受けていたのは人がごった返した箱庭ではなく…。
ただ一人、何もない空間であった
「やぁ、待たせてすまないねタカハシ シュウジ君」
何も無いはずの空間から…。
まさにフワっといった感覚だろうか? まるで幽霊でも現れたかのように、そこには立派な白髭の蓄えた…。
まごうことなき神様が立っていた。
「は…はい!」
何が起きたのかは全く理解できていないが、俺の目の前にいる存在は十分すぎるほどの威光を放つ。
それが俺には恐怖に感じられて仕方がなかったのだ。
「実はな、若いのに意図せず死んでしまった君に…いや殺してしまったと言うべきなのか」
神様は一瞬口ごもって、続けてこう言うのだった。
「そちらの世界で言うところの儂の部下がな、お主を間違えて殺めてしまったのじゃよ
本来あってはならぬ事なのじゃが、時を戻すことはできまいて。
…お主には申し訳ないのじゃが、改めて別の人生を歩んではもらえないじゃろうか?」
俺は仕事に生きていた、特に楽しかったからではなくただ居場所が無かったからだと思っていた。
毎日電車にゆられ、共に暮らす存在もいたわけではない。
生前、妻と子と別れ友人付き合いもなく、一人意味もなく暮らしているような生活だったのだから、俺が死んだとしても困る者も誰もいないだろう。
そんな事を考えていた。
「実はな、お主ゲームは好きだったじゃろ?
今度の世界では世界中に地球とは違う力が流れていて魔法なんかも使えるんじゃぞ?
…興味ないか?」
神様は親切に、それ以外にも地球と違う点をいくつかあげてくれる。
「あ、はい。結構興味あります。
地球から離れるのは寂しくないと言えば嘘ですが、自分の人生ですし…。
元妻や娘には元気で暮らしていてくれればいいかと」
素直な気持ちである、楽しいこと辛いことひっくるめて未練が無いわけがない、だけれどそれ以上に新しい生活に興味があったのだろう。
「まぁお主の気持ちもわからんでもない、しかし手違いで死んでしまった者を同じ世界に戻すというのは歯車を狂わすようなものじゃて。
悪いのじゃが、失態を犯した部下の能力もお主に渡すことにするので新しい世界で楽しく生きてまいれ」
「インベントリマイグレーション…」
神様はポツリとなにやら言葉を発すると、光が俺に向かって飛んできて身体に入ってきた。
ふむ、といったような面持ちで神様は俺を眺めている。
「うまくいったようじゃな、まぁただの空間収納じゃよ
訳あって【チートスキル】みたいなものを授けることはできんのじゃが
これだけでも回復薬持ち放題とか上手く使えば安全に生活はできるじゃろ」
簡単な説明の後に、神様はゴソゴソと袖口に手を入れている。
「そうじゃな…実際に使ってみればわかるじゃろうから、これでも入れてみるがいい」
そう言って、神様は取り出した小瓶を俺に向かって投げたのだ。
『インベントリは、思い浮かべれば使えるからな…試しに開いてみよ』と言われ、渡された小瓶を握りしめて収納されるイメージをする。
パッと手のひらから小瓶が消える感覚はなんとも言えない、これは気持ちいい。
とりあえずはどう使っていいか、あまり思いつくものでも無かったのだが、荷物が減るのは非常にありがたい。
配達屋とか、そんな生活もありだなぁと考えてしまったのだった。
俺は素直に神様に感謝の気持ちを述べる。
「あ、ありがとうございます」
なにか抜きん出ていれば、生活はそれだけ楽になるのが常だ。
生前飛び抜けた才能も無かった俺には非常に羨ましく思えた存在が…。
今、手に入ったのだ!
「では、そろそろ時間じゃて行って参れよお主…元気でな」
フッっと俺の姿は別の場所に移された。
一人、神様はつぶやいていた。
「しかし、心優しい青年よのう…部下からは慕われておったようじゃし
あの青年が言っておった娘…か、失態を犯し能力を預かった部下には
この娘の様子を見させておくか、これも彼奴の修行じゃな…」
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