隠しスキルを手に入れた俺のうぬ惚れ人生

紅柄ねこ(Bengara Neko)

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第1章 異世界

2話 森のスライム

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 さて、と振り向いて何か考える神様、何かを考えている様子である。
「いきなり村じゃ怪しまれるしのぅ…
お、そうじゃ…あの村の近くの森にアレが…」

 そんなことはつゆ知らず、俺は生前の姿のまま森の中に送り込まれたのだった。

「っあいったーっ!」
 送り込むにしても高さとかさ、ほら…普通ちゃんと送るじゃん!
「なんで1m近く落とされちゃうわけ?!」

 しかもスライムのような魔物の上にピンポイントで落とすもんだからゲル状のもので衣類が汚れるし…神様、俺のことなんか恨んでるの?
 なんて思ってしまうのだ。

「ひっどいな神様、もっとちゃんとしたところに送ってくれれば良いのにさ…」

 ぶつくさ言いながらお尻を叩いていると、スライムらしき魔物がいた場所が光っているようだった。

 確か神様が言うには、この世界では採取や魔物からのドロップアイテムは魔素の力によって姿が見えず光となっているそうだ。
 手にとってその魔素が身体に馴染み、ようやく本来の形と為す…。

「…とか言ってたっけなぁ、まぁ試しに拾ってみるか」
 僕は目の前の青い光に手を伸ばし、触れた。

 瞬間、パッと目の前の光が一つの巻物にと変わる。
 そして取得した瞬間に、頭にアイテム名が浮かぶのだ。

「スキル…の巻物?あぁ読むと覚えられるってやつなのかな?
 しっかし腹減った…朝飯抜いて来たからなぁ」
 朝飯などまともに食べた事も無い、いつもは会社の近くでコーヒーを飲んでから出社しているのだから何か腹に入れたくなるのだ。
 そんな事を思いながら、俺はインベントリにスキルの書を収納した。
 基本一個しかないアイテムなどは、溜め込んでしまう性格なもので…。
 だからラストポーションなど、生前一度も使ったことは無かったわけだが。

「尻が痛い…」
 右手でさすりながら山を下っていた。
 自身のステータスも意識する事によって見ることができた。
 さまざまな項目の並ぶ中、幸いHPが減っていることは無かった…が、痛いことは痛いのだった。

「うゎ、またいるよスライム…」
 痛い思いをした以上こんなものを相手にする気は起きない。
 左奥に見えるスライムを避け右へと進路を切ったのだが、その瞬間、そこに足場は無く崖下へと転げ落ちてしまう。

「うわぁぁ、や、やべぇぇぇー」

 不運な事に、目線の先にプルプル蠢うごめくのが4体ほど見えるのだからたまったものではない。

 プキュゥゥ…プチっ…ドーン!…。

 ……。

 途中に生えていた木に引っかかり崖下まで落ちることは免まぬがれた。
 しかし、またもスライムを2匹ほど潰してしまい身体中粘液で酷い有様だったのだから、またも神を恨んでしまう事になったのだ。

 ゲームの世界のHPってどういう意味なんだろうなどと考えたことはあるのではないだろうか?
 HPが1でも普通に戦えるし、復活出来るのにイベントで死んだら復活できなかったり…。
 今自分の現状を見て、それらをなんとなく理解した気になっているのはとても不思議な感覚だった。

「あれだけ転げ落ちてHP減ってないって変だよなぁ…戦いじゃないからなのか?」

 そう、結構ダメージは受けていた。
 木に打ち付けた左腕はまだ痺れているし歩きたいけれどまだ足も痛い。
 HPとは魔素によるダメージを数値化したもので0になることは魔素耐性の枯渇を意味する。
 つまりこの魔素に溢あふれた世界では、耐性を失うことは何もできなくなるということ。

 たしかに神様は説明してくれたと思う、その時は全く話が理解できていなかったのだから仕方ないのだけれど。

 しかしダメージはダメージ、特殊な状況を除けば、通常は限界を越えれば死んでしまうだろう!

「…じゃねぇ!痛いんだよ!回復薬無いの?」

 インベントリを開き何か取り出そうとすると、入っているもの一覧が頭に映像となって浮かぶ。

「スキルの書と小瓶があるんだったな…小瓶はポーションか?」

 そう思って取り出す、たいていのRPGはポーション5個ほどを持ってスタートしていたりするものなのだからかなり期待していたんだ。

「小瓶…うん、小瓶だな」

 小瓶だった、中身は無い
神様が試してみろと言って渡した小瓶には中身は何も無いのだ。

 はぁぁ、とため息をつくと崖のちょっと上にいくつか青い光が見える。

「あぁ、そうだった…なにか役に立つものだといいんだが…」

 そう呟き、痛みのある足と腕を引きずりながら登り手を伸ばす。

【薬草】【スライムの核】
 よくやった!

 心の中でガッツポーズをした、そしてそのまま薬草を口へ放り込む。

 強烈な苦味と独特の香りが口いっぱいに漂い、思わず表情まで歪んでしまう。
 しかしながら、全身からわずかばかり痛みが抜けるような感覚を伴い…。
 無意識に…。

 再度近くの青い光へと手を伸ばしていた!
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