隠しスキルを手に入れた俺のうぬ惚れ人生

紅柄ねこ(Bengara Neko)

文字の大きさ
14 / 87
第1章 異世界

14話 空の王者《後》

しおりを挟む
 隊形を組み直した俺たちは、まず空を警戒する、それは至極普通の行動であろう。

 だが、いくら視界が悪かったとはいえ(俺のせいでもあるんだが)、飛び立つワイバーンを視界に捉えられないとは考えにくい。

 それでも奴は空の王者、およそ高度1500m誰よりも高いところから全てを見下ろし制圧すると言われているのだから警戒せずにはいられないのだ。

 この街は東に大きな平原が広がっており、その北側には俺の行っていた森。
 今俺たちのいる南側よりさらに南にはちょっとした山岳地帯となっている。

 これだけ見回して見つからないのだから、山の住処に逃げ帰ったと考えるのが普通だろう。
 それでも当初の目的は達成なのだから良いのだけれど、姿が見えないことが不穏で仕方ないのだ。

 30分ほど経っただろうか…。

『もう戻ろや?』そうローズが周りに声をかける。
 ずっとここにいても仕方ない、一旦進路を北にとって他のワイバーンがいないか確認しながら、街へと向かって行った。

 他の5組のパーティー達も街のすぐ東まで戻ってきていた、その姿を見るに、どうやらしっかりとワイバーンを退治できたようである。

 前衛を担う重装備の男の盾は、所々に深い傷が付き、ローブの男は限界まで魔法を使ったようで、隣の男に肩を貸してもらっていた。

 2組、3組のパーティーであたってこれほどに疲弊する戦いなのだから、2体も3体も相手取るわけにはいかず、目標の一体を討伐したのならさっさと街へ戻ってしまうべきなのだ。

「なんや結局うちらだけ報酬少ないんかー、残念やわ」

 緊急クエストの場合は一定の報酬が貢献度に応じて振り分けられる。
 今回の場合は銀貨70枚。
 8組で25人のメンバーが集まっているので、一人当たり2、3枚の振り分けなのだけれど、当然討伐の証を持つものの方が報酬が多くなる。

 倒した17人にはそれぞれ銀貨3枚と銅貨50枚、俺たち8人はそれぞれ銀貨1枚。
 残りは傷だらけの大盾の修理費ということで重装備の男のものになった。

 報酬が目的ではなく街の安全のため、なのだけれど報酬は大事だ、働きに見合わない報酬は治安の維持のためにはならない。
 仕方のない事なのだけれど銀貨1枚ずつが俺たちへの正当な報酬なのだった。

 報酬を受け取って、今日は解散しようという時になって、俺はギルドのヴァイツさんに呼び止められる。

「ちょっとシュウさんいいかしら?ギルド長が部屋に来て欲しいそうなのだけれど」
 ギルド長が?なんの要件なのだろうか。

 『後で銀狼亭で呑もうか』とドルヴィン達と別れ、俺はギルド長の部屋へ向かった。

「冒険者のシュウです、失礼します」
 俺が部屋に入るとギルド長はくだけた感じで話しはじめる。

「どうじゃった?お主ならワイバーンごとき余裕だったじゃろ?で、何匹ほど倒したんじゃ?」
 なぜそう思われたのだろうか、とても不思議だった。

「なんじゃ、お主は矢を当てるのが下手なのか?特訓してやろうか?」
 ワイバーンに逃げられた事を話したら、なぜか俺の弓の腕のせいということになってしまった。

 よくわからないが、矢を外しまくったとも考えにくい。事の詳細を話していると、ギルド長は一つ考えついた答えを言う。

「お主、実は討伐した証を持っているんじゃないのか?」

 へ…?

 確かに確認はしていなかった、他の冒険者達が無い無いと騒いでいるので、当然ドロップしていないものだと思い込んでいたのだ。

「…あ、ありました【翼竜のカケラ】8個あります…」

「隠しスキル持ちとは思っていたが、お主珍しく空間収納も持っておるとはな。
 しかし勝手に収納されるなんて聞いたことが無いわ、やはり面白い男じゃのお主」

 ギルド長の言う空間収納というのは、インベントリと同じなのだろう。
 今更ありましたと言うのも心苦しい、取り出して全てギルド長に預けることにする。

「まぁ今回は仲間達には知らせん方が良いかも知れんな、特に仲の良さそうなドルヴィン達には、時期を見て儂から話しておいてやろうか。
 しかし、そうなるとお主…しばらくパーティーは組めんな、はっはっは」

 このレベルからは、ソロではなかなか経験値が得られない。強い魔物と戦うためにパーティーでの行動が基本なのだ。
 だけどギルド長はソロでも問題ないと言う、この武器ならば、と。

 ワイバーン討伐の報酬はこれ以上は出せないのだけれど、代わりに鉄で作られた胸当てなどの装備をいくつか譲ってくれた。
 ギルド長の昔使っていたものらしく、しっかり手入れがされていた。

 銀狼亭へ向かう足が重く感じる…さっさと打ち明けてしまうべきだろうかと…。ドルヴィンは許してくれるかもしれないが、他の二人はどうだろうか。

 結局、話すことはできなかった。
 明日はやはりパーティーは組まずに、一人で山岳地帯にある洞窟へと向かう事にしたのだった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...