隠しスキルを手に入れた俺のうぬ惚れ人生

紅柄ねこ(Bengara Neko)

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第1章 異世界

16話 少女と…《前》

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 リキングバウトの東に広がる平原を通り、南へ向かうと山岳地帯へとつながる道に出る。先日ワイバーンと戦った丘のある場所だ。

 丘といっても高さ50mはあろうかという高さで、この平野と山岳地帯を分かつ存在なのだ。
 とは言っても、登る必要はない。

 丘の向こうは、はるか東まで伸びる崖が続いていて、100年前の戦でえぐられた地面がこの崖、それによって押し上げられたのがこの丘の正体だと言い伝えられている。
 そのため、登ったところで繋がる道は存在しないのだ。

 丘を西に迂回してしばらく進むと山岳地帯へ入るのだが、迂回する途中に、崖下へとつながる洞窟がある。
 ここが目的の場所、ウィスプの多く出現する【ひかりの洞窟】だ。

 ちなみに洞窟を通り抜け崖下に降りても、勇者の付けた傷痕が見れるだけらしく、意味もなく近づくものはいないそうだ。

「うーん…特に魔物の出入りがあるようにも見えないしな、まだコボルトしか見かけていないし」

 少し遠目に洞窟の様子を観察していたのだけれど、目立った動きどころか魔物1匹現れない。
 問題が無さそうなら『念のため中も少し見ておいて欲しい』と言われているので、白い矢を取り出し、首元にはライトの代わりとなる魔法石付きのネックレスをつけ、恐る恐る進み始めたのだった。

 洞窟の中は思っていた以上に広い通路で、足元も悪くない。
 しかもウィスプがいる周りは、ウィスプ自身が発つ光で随分と明るく感じられるのだった。

 まぁ倒してしまえば暗くなるのだから、灯りを絶やすことはできないのだけれど…。

「何匹もいる、と言われているわりには少ないような…」
 このウィスプ、襲って来るような存在では無いそうなのだが、経験値稼ぎに丁度いいからと勧められた。
 もちろんこちらが攻撃すれば反撃が返ってくるのだけど、一撃で仕留めてしまえるのだから反撃も何も無いのであった。

 ウィスプはあちらこちらにいるはずだったのだから、視線の先にわずか1匹というのはどうもおかしいような気がする。
 それでも気にしすぎなのかもしれないと思うことにして、少し奥へと進んでいったのだ。

 1時間…以上は歩いたと思う。慎重に歩いたせいでかなり長いこと歩いていたのだ。
 ほとんど魔物がいないせいで、俺は洞窟をかなり下ってきてしまったのだけれど…。
 やはり何かおかしいような気がして仕方ない、ここまで倒したウィスプはわずかに6体なのだ。

 もう戻って報告するべきなのか?いや、これで普通なのかもしれない…。
 うーん…うーん…と悩んでいるうちに、崖下へとつながる出口まで来てしまったのだった。

 光をさす出口から外を見やると、とてもひらけた場所に出ていて、両側は見たこともないほどの絶壁で覆われている。
 前方は東の果て、上方は崖の果て、丘のあった位置すらわからなくなるほどの深い谷。

「うぉー…すっげー…」
 これは見る価値はあると思った。観光名所にすれば良いんじゃないかとも思ったくらいだ。
 それくらいに素晴らしい景色が広がっていたのだ。

 それはともかく、洞窟には異常は無いという事で良かったのだろうか?
 『帰り道は登りだなぁ』なんて考えるくらいには何事も無かったのだから。
 ふと視界に何かが映ったように感じ、遠くを凝視してみると、何かがいることに気付く。

 魔物か、観光客か、いや観光客がいるわけも無いのだろうけれど、近付いて確認してみると、崖下のひらけた空間に女の子が一人立っているのだった。

 きっと強い冒険家なのだと思う、鎧も見たことのない赤く頑丈そうで。
 髪の毛…は強さに関係ないと思うけど赤髪の長髪で鎧とよく似合う。
 武器は持っていないようなのだけど、魔法でも使っているのだろう。

 『カッコいいなぁ』なんて見惚れていると、少女もこちらに気付いたようで近寄って来たのだった。

「お前は…、何しに来た?」
 こんなところに訪れる冒険者など滅多にいない、だとすれば理由があって当然。

「俺はシュウ、ギルド長に頼まれてこの洞窟を調査してたんだよ」
 そうか…と言わんばかりの面持ちで何か考え込んでいるようだった。

「シュウ…といったな、お前はこの辺りで義勇者の遺物を見ていないか?」

 何も見ていない、それどころか遺物と言われても何の事かもわからない上に義勇者とは一体…?

 困惑した表情を見せていたものだから、少女もやっぱりか…といった風であった。

 しばらく考え込んでいたようなのだけど、ふとこちらへ振り向き、両の手の間に大きな火球を作り出していた。

「まぁいい!お前には死んでもらいソフィア様の糧となってもらおう!」
 突然の豹変ぶり、またその火球を躊躇いもなくこちらに向かって打ち出すものだから、俺は踵を翻し、元いた洞窟の通路へと走っていた。
 それでも火球による爆風が襲いかかり、俺は洞窟内をかなり転がり回ることになったのだ。

 何故攻撃されたのか、少女が何者なのか。
 そんなこともわからないままに、ただ一方的に襲いかかられたのだった。
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