隠しスキルを手に入れた俺のうぬ惚れ人生

紅柄ねこ(Bengara Neko)

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第1章 異世界

21話 炎と風の合体魔法(ユニゾン)

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「ところであんた、レベルはもうだいぶ上がったんか?」
 何時間経っただろうか、上級霊薬を作りながらローズが問いかけてきた。

 ついこの間までレベル10だった俺は、ウィスプを大量に狩ったものだから14まで上がっている。
 次の15になれば、また新しいスキルを会得することができるってわけだ。

 と言っても必殺技!みたいなものではない。この世界、必殺技や魔法は実力で身につけるものである。

 『火の魔法をつかいたい!』と強い気持ちを込め続けることで、すぐにとはいかないものの誰しもがつかう事ができるようになるのだそうだ。

 もちろん得手不得手はあるし、能力に見合わないものはいくら頑張ったところで習得することはできないそうなのだが…。

 ちなみにローズは【火】と【風】の魔法を中心に練習しているそうである。
 一度に2種類の魔法を使って、『ファイアーストリーム!』みたいなのを想像したから必死に練習したそうで、その流れで今でもその2属性ばかり使っているのだそうだ。
 合体魔法というのは実際にはなかなか難しいらしく成功した試しは無い、それでも毎日練習していたそうで、それぞれの魔法の腕だけはメキメキと上達したんだとか。

 ちなみに、ドルヴィンと出会ったころ、半ば無理やり回復魔法も習得させられたこともあったと言っていた。

「この間ウィスプを大量に倒したからな、今レベルは14になってる」
「あぁ、やっぱりこのアイテム、あんさんが狩ったんか。
 そりゃレベルも上がるわな、しっかし悔しいわほんま」
「んなもん、ローズだって凄い魔法バンバン使えて羨ましいよ、俺は魔法なんて何一つ使えやしないしさ」

 ローズがレベル15に達したのは冒険を始めて7年が経ったころ、その歳15歳だと言う。

 聞けば、両親ともに病に倒れたもんだから、生活に困って城下町近くの草原で薬草採取をして暮らしていたそうで…。
 ところがある日、薬草が思ったほど集まらない時期があり、空腹で倒れていたところ荷馬車に助けてもらったのだそうだ。

 冒険者の街なら仕事も多いし、スライム討伐や雑務などでも食いっぱぐれやしないだろうと。
 そのまま荷馬車に乗せてもらって、ここ【リキングバウト】にやってきたのだった。

 それから約1年、ドルヴィン達と討伐や依頼をこなすのだけど、未だレベルは16だという。
 聞けば多くの冒険者はここらが頭打ちで、この冒険者の街でもレベルが20を超えるものは【バトルマスター:ピルスル】【ヤード】の二人だけだという。聞いたことのあるような名前なんだけれど…

 バトルマスターは上級職と呼ばれていて、レベルが20に達した際に、再びランダムで【職業】と【スキル】が与えられるらしい。
 しかもレベル25では前職、上級職の2つのスキルが与えられるのだというから驚きである。

 まぁ上級職がそもそも少ないのだから、本当かどうかもわからない。冒険者はそういう話が大好物だから酒のつまみにでも交わされたただの噂でしかないのかもしれないのだが。

「よっしゃ終わったで!はぁー…ものごっつぅ疲れたわ。
 こんだけ大変なんやでもう2、3個ポンポンっとレベル上がらへんかなぁ?」
 冗談を言うローズはとても可愛い。

 いや青年っていってもほら、俺もまだ20代前半だし。
 16歳の女の子に可愛いって言ったって犯罪じゃないでしょ?

「ほなら、狩りに行こや」
 さっそく、ローズがサッと傍によって手を出してきた。
 どうやら久し振りに手に入ったこのアイテムで経験値稼ぎに行こうということなのだ。

「もう2時間もすれば日が暮れてまうでな、そやな…近くの洞窟にしよか」

 ローズが選んだのは聞き覚えのある洞窟だった。
「まぁウルフらが出てきてもあんさんならちゃっちゃとヤってくれるんやろ?頼りにしてるわ」

 正直ウルフとは戦ったことも無いのでわからないというのが正直。
 あいつらは集団で襲うことが多い、だからどんなに優位であれ油断は絶対にしてはいけない魔物なのだ。

 ギルドを出て、俺たちは洞窟へと向かった。片道20分といったところだろうか、帰りのことも考えても1時間は狩りができる。
 ちょうど霊薬の効果6回分といったところだ。

 その霊薬を各々一本使って、さて、と構えると…。
「そや!なぁ、あんさん、こないだの真っ赤な矢持っとる?」
 ローズが閃いたように問いかけるのだった。

「ん?まぁ主力でもあるからな、ストックなら十分に」

 『よっしゃ』と言った感じで『洞窟に入る前に中に向かって射ってくれ』と頼まれる。

 ここからは魔物は見えないのだけれど、構わないということは『音でおびき寄せる』という感じなのだろうか?

「わかった、いくぞ!」
『ヒュンッ…』
 俺は赤い矢を射った。それと同時に、

「ウィンド!」
 ローズが簡単な風魔法を使う。
 少し強い程度の風は、魔物にダメージを与えるものとは違い、赤い矢を優しく包むように洞窟の奥へと運んでいった。

『……ドゴーーーン!!……』
「よっしゃもう一発いこか!」

 赤い矢は奥に見える曲がり角をうまく左に、その後も2、3秒飛び続けていたようだった…。
 この子…恐ろしいことを考える…。

 もはやハメ殺しだった、5秒感覚で矢を射続け、2束60本が無くなったら一旦休憩。
ウィンドも多少なり魔力は消費していて、ローズは魔力回復エーテルポーションを使っている。
しばらくして霊薬効果が切れると、再度霊薬を使い、繰り返す。

 次第に手前の方では爆発しなくなっていき、遠くの方で爆発が聞こえるようになってくる。
矢はどんどん奥まで運ばれていくようだ。

 そんなことを6セットおこなって、俺はとんでもないことに気付いてしまう。

「なぁ…、この洞窟って…他の冒険者入ってないのか?」

「…」

「…」

「あ…」
 俺もローズも、真っ青な表情になり大急ぎで街に帰っていった。

「そうですね、今のところ洞窟へ向かうといった冒険者はおりませんし、先程出ていかれた2組のパーティー以外はもう皆さん戻られていますよ」
 ヴァイツが冒険者名簿を取り出して確認してくれたので、俺たちはホッと胸をなで下ろすのだった。

「しまったなー!大丈夫なら洞窟入ってアイテム拾ってくれば良かったわー!
 あーもう、誰かさんが余計なこと言うさかい」

 余計とは失礼な、ぷんぷん。

『ドロップアイテムならきっとインベントリにあるだろうけど、渡さないでおいてやろうか』
 なんて心の中で冗談の相手をする。

「なぁローズ、ちょっと話があるんだけど時間いいか?」
「なんやプロポーズか?」
 まだ冗談を言うか?!

 ギルドでは目に付きやすいので、銀狼亭とは違う静かな感じの食堂へと向かった。
 個室タイプではないけれど、カーテンのようなもので空間を仕切っており、それでも賑やかな店内である。
 こちらの名物は野菜や山菜がメインのものらしい。

 『目立たない場所』と言ったらローズが案内してくれたのだけど、男女2人で入ることが余計に目立ちそうな雰囲気の店だった。

「でな、話なんだけど、ちょっと他には言わないでいてほしいんだ」
「そら難しいな、言わんとって欲しいんなら、そもそもウチにも言わん方がええんちゃう?」

 そりゃあそうなのだろうけれど、せっかく共に戦った仲間に黙っているのは嫌だった。
「まぁ、言うか言わんかは任せるわ、報酬貰ったら『少しくらい黙ってても良いだろう』って思ってくれるよう…期待することにするわ」
 そう言ってからインベントリからゴブリン討伐の証【邪鬼のカケラ】を取り出す。

「ん?これがどないしたんや?」
「さっき洞窟で手に入れたやつ」

「…へ?」
「うん」

 簡単に俺のスキルを説明すると、またも『へ?』といった表情。
 そんな表情もローズなら可愛いのだ。

「えーっと…つまり、パーティーだろうがソロだろうが倒した魔物のドロップは全部あんさんのその『いんべんとり』に勝手に入るってことかいな?」
「せや」

 『ありえない』だの『馬鹿じゃないか』だの罵られた気もするけど、この報酬は全部ローズに渡そうと思ってる事を言うと『半分や!』と強く言い返された。

 ちなみに今回の報酬は次の通り
 邪鬼のカケラ:763個
 支配者のカケラ:51個
 ダガー:38個
 棍棒:34個
 短剣:41個
 水晶の錫杖:6個
 ゴブリンスリンガー®️:3個

 じゃあ半分、というわけでそれぞれ半分取り出したのだけど、『カケラ以外はいらんわ』といわれてしまった。

 杖なんかはレアじゃないものの魔法攻撃力はけっこう良さそうだったのに。
 『んなダッサい武器持ちとぉない』と断られたのだ。
 『だったらカケラだけでも全部もらってくれないと合わないだろう』と話をしていたのだけど…。

 最中に入ってきた店員が『料理を置く場所が無いので…』と困っていたので、一旦片付けることにしたのだった。

 まぁ結局ローズが折れてくれて、カケラはローズに、それ以外は俺がもらうことになった。

しばらく食事をしながら沈黙は続いた。
鳥の肉を熱した油で揚げた料理、いわゆる唐揚げが出て来た時に、ローズは思い出したように問いかけるのだった。

「なぁ…シュウ、翼竜のカケラはどないしたんや?」
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