隠しスキルを手に入れた俺のうぬ惚れ人生

紅柄ねこ(Bengara Neko)

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第1章 異世界

22話 喰らう者

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 ゴブリンだけでなく、ロードも仕留めることができたのだから大収穫だ。
 報酬を分け合いながらギルドで酒を一杯飲んでいたのだ。まぁそんな感じで色々あってローズとも随分打ち解けた(と思いたい)

 あの後、ワイバーンの事を説明すると、『ウチら信用ないんやな』と悲しそうに言われたのだけど、後には『終わった事やし許したる』と言ってくれる。
 俺もローズ達とは仲良くやっていきたいと思っているのだから、知らなかった事や言えなかった事、しっかり謝っておいたのだった。

「なんやぁ今日はえらい楽しいわ、レベルも1個上がったし、ほんまシュウのおかげやわ」
ローズの魔法が思い通り以上の効果を齎した事が、彼女自身を上機嫌でしかいられなくするのだった。

 実は俺もレベルが上がっている、ただあれだけのゴブリンとゴブリンロードを倒して、それでも1レベルしか上がらないのがこの世界。
【ざっと100万以上…】

 なんの数字かって?
 この世界でレベル15になるための数字だよ。

 低レベルのうちはスライムぐらいしか相手にできないし、コボルトだって草原のあちらこちらにいるもんだから数を相手にはしづらい。
 ゴブリンやウィスプ、ゴブリンロードに喧嘩を売った日には自分の命が消えるかもしれない。

 そりゃ何年かかってもレベル上げなんてできるわけがない。
 きっと頭打ちなんじゃなくて、【ただの経験値不足】なんだろうと思いを巡らせていたのだった。

 ともあれ、俺はついにレベル15になった。これで新たなスキルを得られるわけなのだが…。

 鑑定を使い説明文を読むと、聞いていた通りのスキルだった。
 せっかくレベルが上がったと言うのに、得られたものは非常に恩恵の少ないハズレスキルなのだ。

【ハイレベルボーナス:自身の実力が一定以上の者との戦闘で得られる経験値・ドロップアイテムの強化】

 何度も言うように、この世界で強者を相手取ることは『死』を意味することだと教えられているのだ。
 このようなスキルを入手したとて、自ら死地に赴く馬鹿者などいない、どれほどの効果が有るのかも分からぬと言うのに。

 ゴブリンロードなら?と腕に覚えのあるパーティーが試した事もあるのだけれど、『まったく…実感がない、たぶんスキル発動してないっぽい…』だそうだ。

 感じないだけなのか、はたまた自身のレベルが高かったからスキルが発動しなかったのかはわからないが。
 もし事実ならこれ以上の実力者とは、一体何を指すのだろうか?

 『これに関しては、何年後に会得できるかは知らんがあまり期待はしないようにな』と、ドルヴィンが言っていたのを思い出し『クスクスッ』と笑っていた。

 あれから、まだ1ヶ月も経っていないのだから。

 翌朝、ギルドで俺は、討伐に向かう事を伝える。
「そういえばシュウさん、レベル上がったとお聞きしたのですが?」
 情報が回るのが早いものである。ヴァイツから聞いたのだろうか。

「はい、昨日15レベルになりました」「え?」
 あぁ、またこの感じだ。何度も味わった『何言ってるの?』感。

 キョトンとした後、モルツが続けた。
「あ、すいません。実は依頼も随分こなしてくださってますし、レベルが10になり次第ギルドランクを上げておきましょうとお伝えしたかったのですが…。」
 俺のレベルが10になったのをギルド長から聞いての事だったようだ。

 そこから僅かな期間でさらに5レベルも上がっているなど、誰が思うのだろうか…。

「【ランクE】に上がれば、武器や雑貨などの購入できるものも増えますし。
 ちょっと今、お時間大丈夫ですか?」

 時間なら腐るほどある。何も計画などしていないのだから。
 モルツにギルドカードを渡すと、何故かちょっと悩んでから奥へと走っていった。

 2分ほどしてモルツが戻ってくる。
「すいません、今から手続きいたします」

 ん?何しに行っていたのだろうか?

 さらに数分、受付で作業を終えたモルツから『お待たせいたしました』とギルドカードを受け取ると、カードには【ランクD】の文字が刻まれていた。

「あの…特例…というわけではないのですが、レベル15というのが、その…ランクDの条件でして。
 今ギルド長からも許可を得ましたので、上げさせていただきました、すいません…」

 謝ることではないと思うのだけど、むしろごめん。ちゃんと報告してればよかったんだねきっと…。

 【ランクD】になるとダンジョンへの許可が降りるそうだ。

 『じゃあさっそく!』と行きたいところなのだが、ダンジョンは基本パーティー攻略。
 あと、俺の武器がダンジョン攻略に合っていない。他の冒険者達も多いし被害がすごいことになりそうだ。と、別のところへ向かうことにする。

「どこか他の冒険者がいなさそうなところとかってわかります?」
 俺はモルツに尋ねてみた。

 こないだ冒険者名簿で管理している事を知ったので、だったら周りの動向もある程度聞けるんじゃないかと思ったけれど。
 『どこに誰がいるか』など、他の冒険者の事情までは教えてはくれないようだ。それでも誰もいなさそうな場所は教えてくれた。

「今日はー…そうですね、おそらく北東にある砦周辺には冒険者がいないんじゃないかと思われます、絶対じゃないですけどね
 それで、今日はどなたと向かわれます?」

「え、と一人で」
「でしたら危険ですのでおススメできません、東の草原でのコボルト狩りが良いと思います」

 北東には向かったことがない。聞けば砦周辺には猪豚族、オークの出現するエリアなのだとか。
 ゴブリンよりも強く、下劣で獰猛で、人や動物を見ると襲いかかる。
 それらを食い散らかし、辺りに散らかったものをハイエナが貪りに来る。
 その醜悪な姿はもはや見るに堪えないのだと、もっともっと細かく…具体的な描写で説明してくれたモルツの表情には、えらく憎しみのこもったような一面が感じられるのだった。

 とにかく…まぁ…雑貨屋で赤い矢を作るアイテムを購入して、準備を始める。
 昨日作ってくれた霊薬もあることだし『ちょっとは試してみたくなるよなー』なんてうずうずして街を出るのだった。

 門番が『よぅDランク』と声をかけてくる。なんとまぁ早い伝達ぶりなのだ。
 顔を覚える役目でももってるに違いない。これで俺の呼び名は【変な服装】【スライムマニア】【爆弾魔(ボマー)】【少女に捨てられた子犬ちゃん】に続き5つ目だ。

 なにか恨みでもあるのだろうか…?
 
 北東へ向かった俺は何組かの冒険者と出くわしたのだけど、砦が見えてみた頃を境に一切の人影を見なくなってしまった。

「そろそろオークのテリトリーってことかな」
 慎重に周りを見回しながら近づくと、一つの赤い光が漂っているのが見えたのであった。
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