隠しスキルを手に入れた俺のうぬ惚れ人生

紅柄ねこ(Bengara Neko)

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第1章 異世界

《ある晴れた日、いつもの街の片隅で》

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 時は戻り、いつもの街リキングバウト。

 街に入り、歩く一人の男がいる。

 俺の名前は【ヤード】この冒険者の街リキングバウトで【銀狼亭】のおやじとかマスターとか呼ばれている。

 この街を拠点として多くの冒険者が魔物退治やクエストへと出かけるので、生きて戻ってきたやつに美味い飯を出してやっている。

 まぁ、冒険に出かけもせずに朝っぱらから呑んだくれてるやつもいるのだが。
 そいつにだって昔は人一倍頑張っていた時期もあるのだから勘弁してやってほしい。

 そうだな、なにを伝えるべきか…そうそう、営業時間はとくに決めていない。
 ウルフを目的に朝帰りの冒険者、傷を受け早々に引き返してくる者、ランチと井戸端会議目的の者、依頼を達成し満足げな者、夜更けまで酒盛りが行われることもしょっちゅうだ。

 当然一人では身体がもたないし、美味い飯はこんなオッサンじゃなく美女に提供してもらいたいものだろう。
 そんなわけで、ピルスルのつてで獣人族の【エルン】と【ベルジャン】が働いてくれているのだ。
 あぁ、ピルスルってのは俺の古い友人でこの街のギルド長をやっている。

 どうにも俺にはギルド長の関係の者が『酒の名前』のように聞こえるんだがな。あまり気にしてはいけないのだろう。

 この店の名物はなんて言ったって【ウナルエス肉の香草包み】だ。
 南の山岳を越えたところにウナルエスという大きいやつがいて、こいつの赤身が柔らかく非常に美味いので、時々俺が直接仕入れに行っている。
 仕入れって言ってもアレだ、ウナルエスは魔物だからな。片っ端から倒していく簡単な作業だ。

 まぁ山岳を越えられる冒険者なぞ数えられるほどしかいないからな、この街じゃその存在はあまり知られていない。

 いつもなら一緒に大量の『塩』と香草、スパイスもを買って帰るんだが、今日は【塩】は無しだ。

 最近、毎日のように顔を出す冒険者が、近くの洞窟で【仄めく岩塩】を大量に持ってきてくれたからな。
 こいつはウナルエスには最適なんだ。

 俺が直接この岩塩を取りに行ってもいいんだが、なんせ俺は物理専門なんでな。
 あ、あぁそうか…この話はまたにするか。

 まぁそんなわけでしばらくの間は最高の【ウナルエス肉の香草包み】が提供できるってわけだ。
 機会があったら食べにきてくれや。
 ちなみに『肉!』で注文は通るからな、この街の冒険者はみんなそう言いやがる。

 そろそろ店に着く、おぉ今日も賑わってやがるな。

 ざっと覗き見たところ30人はいるだろう、これだけ多いと厨房を任したエルンも大忙しだろうからさっさと戻ってやるか。

 厨房に入るなりエルンのやつ、俺に『さっさと12人前作れ』と言ってきた。
 仕方ねぇ、3日も店を空けちまったんだからちょっと張り切るとしよう。

 店がひと段落ついたところでエルンとベルジャンに一皿出してやった。
 もちろん酒もな。これが無いと美味さは半減だ。

 【仄めく岩塩】に変えただけで普段よりずっと肉の甘みが感じられる。何度食べてもこれは美味い。

 この肉は前回仕入れに行った時のものなのだが、最低でも1週間は低温で寝かせないとこの甘みは引き出せない。
 これはもう3週間寝かせている。最高の食べ頃だ。

 エルンとベルジャンも至福の表情をしている。まぁ食べ終わったらもうひと頑張りだけどな。
 おっと、冒険者御一行様のお帰りだな。

「おぉドルヴィン達か、今日の肉は一味違うから期待しておけよ」
「それは楽しみだな、じゃあ肉と酒を頼む」

「あいよっ、…お、ちょうどいい所にシュウも来やがったじゃねぇか」
「よぉ、一緒に食おうぜ、こっちに座れよ」
「おやっさん、俺も肉と酒ね!」

「あいよっ!」
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