隠しスキルを手に入れた俺のうぬ惚れ人生

紅柄ねこ(Bengara Neko)

文字の大きさ
47 / 87
第2章 精霊王

14話 旅路と問題

しおりを挟む
「なぁー、まだ着かへんのー?」
 唐突にローズがボヤく。

 そうは言っても、リキングバウトの街で俺のインベントリに蓄えられた食料は約10日分。
 まだ出発して2日目だというのに、着くはずなかろう。

 まぁ、食料がこれだけ準備されている事を知っているのは、俺とピルスルだけなんだが。

 レギは何か言いたそうにそわそわしていて、時々タマをなでなでしていた。

「なんかさぁ、タマでかくなってないか?」
 いや、気のせいかもしれないよ?でもやっぱり…。
 初めて見た時はサッカーボールくらいだと思ったのに、今はバスケットボールくらいに感じるんだよなぁ。

「え?やっぱりそう思いますか?」
 レギも思っていたみたいだ。

「私と一緒にレベルが上がるので、きっとそれに合わせて大きくなってるんだと思うのですが。
 今までそんな風には感じなかったんだけどなぁ…」

 きっと、今回は急激にレベルが上がったからなのだろう。レベル100にもなったらもしかしたら俺たちより大きくなるかもしれないな。

「お主ら、良いのぅ…儂がレベル25になったのはつい一年ほど前の事だというのに」
 ピルスルもさすがに今回の出来事は想定外のようで、まだまだひよっこと思っていた者達に急にレベルが追いつかれたものだから悔しがっていた。

 そうです大精霊様様です!
 まさか話を聞いてくれるだけでなく、その溢れんばかりの力を分け与えてくれるとは思っていなかった。

「ウチはあの綺麗な石が忘れられへんわぁ…」
 まぁ俺もあの石は気になって仕方がない、もちろん別の意味でだがな。

「でも本当凄いですよね、あの街でレベル20以上って僕たち以外いないんじゃないですか?」
 レギが聞くのだけれど、それは間違いだ。存在するのである、みんなが知っている約一名。

「「「ヤード(さん)がいる(わよ)」」」

 誰って?あの人だよあの人。
 銀狼亭のマスターだよ。

 あのマスター、ある時血塗れになって帰ってきたから聞いたんだよ『大丈夫なのか?』って。
 そうしたら『これは魔物の血だ』なんて言ってな、料理の腕だけじゃなくて剣の腕も相当なものらしい。

「あのマスターって…何者だ?」
 そんな話をしながら歩いて、時折戦闘して。

 戦闘といっても矢を射つか、魔法の練習台にするか、他にはタマの実力を見てみたりしていただけなのだけど。

 戦闘シーンが見てみたいって?じゃあダイジェストに。

「あ、向こうに一角兎(ホーンラビット)発見」
 街道を歩き始めて4日目、ローズは索敵の練習をしていた。優れた者なら半径100mは魔物の気配が探れるらしい。
 これはピルスルに勧められてやっていることだった。
「やったぁ、30mまでできたで」
 そう言ってローズが喜ぶ。

 この簡単そうに見えるものが意外と難しく、全方向を確認するのは相当な修練が必要だそうなのだそうだ。
 ローズはそれを練習し始め、すぐに音をあげたのだ。

 じゃあ何故できるのかと言うと、【全方向】をやめたからである。
 ある程度の範囲を残して一方向に絞っていたので多少はわかるようになっていった。

「まだあっちの方見とらんから待ってなー」
 全方向の確認を4つに分けて行なっていたのだが、途中で魔力が尽きるもんだから回復を挟んだり前だけでやめたりと何度か繰り返していた。
 まぁ出来ることからやるのは良いことだと思う。
 いきなり高みを目指すというのは、どうしても挫折と隣り合わせになってしまうのだから…。

 ん?その後?矢を射っただけだよ、いやマジで。
 放たれた矢の爆炎で複数の魔物を消し去るだけだった。

「…なぁピルスルはん…まだ着かへんのかぁ…?」
 流石に4日間も歩き続けていると、疲れだけではなく色々と問題が生じてくる。

 食事だって本来は水と乾物などを大量に準備して進むものなのだが、インベントリに色々と入っているのだから普段と変わらない食事も取れている。
 それが無いだけでも俺たちは楽な旅と言えるのだろう。

 だが女の子にとってはどうしても許しがたいこともあった。

「あーもー嫌やウチ早よお湯に浸かりたいわ!ええ加減にしてやもぅ!」
 流石にお風呂なんか用意できない。
 用意できるとも考えていなかったし、やろうとも思わなかった。
 いや、用意したところで多分ローズは入らない、入れない…。俺たち男三人がいるのだし。

「もー…ウチを綺麗にしてや!クリーン!」
 ローズが急に魔法を使った、しかしイマイチの効果のようだった。
「ふ…ふふ…何度かて使つこてやんでぇ…クリーン!クリーン!クリーン!」

 …。

「ふっふふふ…」
 そこには魔力をほとんど消費しきって、誇らしげにたたずんでいるローズがいるのだった…。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...