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3巻
3-3
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「クロ、この階層から先には行かせちゃダメだからねっ!」
『ミャッ!』
リリアは、他の個体よりもいくぶんか毛並みのツヤツヤした黒猫にそう言って、勇者の来るであろう方向に走らせた。
僕たちは三又に分かれた通路で様子を窺っていたが、しばらくは声も聞こえてこない。
次第に魔物との戦闘音が聞こえてきて、どうやらクロ相手に勇者たちは苦戦しているようだった。
「くそっ、一階層下っただけで魔物がこれほど強くなるとは!」
姿は見えないが、勇者と思しき声が響く。
数度の攻撃音の後に、『ここは一旦引きましょう!』という兵の声も聞こえた。
上手いこと追い払うことができそうで安心したが、気になったのは『クロケットモールか、厄介な魔物だ』という一言。
それって、つまり――
通路の奥から黒猫が一匹、こちらに顔を覗かせた。
まるで『僕が出るまでもなかったみたいニャんだが……』とでも言いたげだ。
「なぁんだ、ただ魔法が不得意で苦戦してただけかぁ」
リリアが九階層の魔物を倒しながら呟く。
クロケットモールは水に弱く、ケットリーパーは風に弱い。
僕たちは一度でも魔物を倒したら『世界樹辞典』でそれを調べることができる。特に前者については物理耐性が高いことも載っていた。
勇者たちだって、色々な属性の魔法を試せばすぐに気づけるはずだが、きっと相性が悪かったのだろう。
「おかえり。勇者はどうだったの?」
テセスの待つ十階層に戻ると、食事が用意されていた。野菜炒めとスープだ。
「うん。なんか普通に魔物に苦戦してて、私たちが何もしないうちに引き返しちゃった。せっかくクロが活躍できると思ったのにねぇ」
『ミャ~』
クロは一鳴きすると、ポンッと姿を消してしまう。
「そうだったんだ。じゃあまたすぐに来るかもしれないね」
話もそこそこに、せっかく作ってくれた料理が冷めないうちにと、僕たちは食事にすることにした。
料理をするテセスなんて昔は想像もつかなかったが、まさかスキルを習得するくらい、のめり込んでいるとは思わなかった。
とね屋の女将さんほどではないけれど、十分美味しいと思う。
できたら味付けはもう少し濃いほうが良かったが、それは調味料を持ってこなかったかららしい。
自分の家で料理することがなかったため、調理器具すら持ってなかったみたい。
さすがにとね屋から借りてくるわけにもいかないし、買いに行かなければと言っていた。
しかし、調味料や調理器具がないのに、どうやって野菜炒めとスープを作ったのだろうか?
器は僕とリリアが合成した『小瓶』という名のボウル形状のものが使われているが、むしろそれしか見受けられない。
「この料理って、どうやって作ったの?」
素直に『美味しいよ』とだけ言えばよかったのだろうけれど、つい気になると聞いてしまうのは僕の悪い癖だ。
「え? ごめん、何か変なものでも入ってた?」
そんなつもりで聞いたわけではなかったが、僕の一言でテセスは不安になり、それを耳にしたリリアも質問する。
「なになに? これって普通の食材じゃないの? すっごく美味しいんだけど、もしかしてグールの『腐肉』だったり?」
ついさっきまでそのアイテムを見ていたから出た発言だろうか?
さすがにそれは使われていない……と、信じたいが。
腐肉の一言でコルンが噴き出してしまい、場は大変なことになっていく。
『美味しければ素材がなんだっていいじゃない』とリリアは言うが、その発言だと腐肉が使われているのだとも捉えられそうだ。
慌てふためくテセスと僕。
テセスは何度も謝るが、悪いことなど一切していない。変な聞き方をした僕が悪かったのだ。
まぁリリアの発言も問題ありだったが、グレイトウルフでもグールの腐肉でも試してみようという彼女のことだから、全く悪気はなかったのだろう。
落ち着いてから改めて素材の話を聞くと、なんの変哲もない普通の食材だった。
「ごめん。僕が気になったのは素材じゃなくてさ、焼いたり煮たりってどうやったのかな? って思って」
「なんだぁ、そうならそうとハッキリ言いなさいよね」
リリアに怒られてしまったが、僕は『リリアはハッキリ言いすぎなんだよ』と心の中で呟いた。
【料理】スキルの使い方は、別に難しいものではなかった。
僕とリリアの持つ【合成】スキルと同じく、素材同士を合わせて一つの料理にするだけのこと。
僕たちはアイテムや武具が作れるが、テセスは料理が作れる。それだけの違いらしい。
「インベントリの中を見ながら、この素材とあの素材でこんな料理ができるなぁって考えると、スキルを使うことができるのよ。前にセンが教えてくれた、メインとサブって考え。あれのおかげで凄くわかりやすかったわ」
テセスは、メイン食材とサブ食材、そこに調味料と調理工程をイメージしてスキルを使ったらしい。
僕が頑なに所持を拒否した腐肉もテセスは持っていて、それも使おうと思えば使えるそうだ。
僕の【合成】スキルで同じことをやってみようとしたけど、選んだワイルドボアの肉には何の変化も起きない。
「セン、今自分にもできないか試してみたでしょ? ざんねーん、すでに私が挑戦済みよっ」
リリアもノーズホッグの肉を持ち帰った際に実験したらしく、色々と試した結果、『集魔の香』という魔物を集めるアイテムしか作れなかったそうだ。
今だから効き目もアイテム名もわかるけれど、完成したアイテムを使ってみた時は、効果の程がわからなかったらしい。
そういえば以前、コルンに『ノーズホッグがちょっと多い気がする? 弓の練習するのにはちょうどいいじゃないのよ』なんてリリアが言っていた記憶が蘇ってきた。
しかし、それとは別に僕はテセスの発言の中に気になる言葉があった。
『インベントリの中を見ながら』――料理用の素材をインベントリから出そうとすると、一つや二つではない。五つ六つは当たり前だろうし、それを並べるのも大変だろう。
「もしかして、【合成】スキルもインベントリの中で作れるんじゃないかな?」
「え? あ、そっか。私もそれは試したことなかったわ」
木材に金属、魔物素材だと大きいものでは一メートルを超える大きさ。
部屋ではなかなか試せなかった大きな素材も、インベントリ内で合成できるのなら問題ない。
それに、『世界樹辞典』に載っている場所も手間がかかりそうなアイテムでも、取り出して並べる必要がなければ生み出せそうだ。
「ちょっ、ちょっと私試してみるっ!」
ちなみにリリアの【合成】スキルでは、魔物素材でもボスから得たものは扱えない。
それができるのは僕の【マスター合成】で、さらにいえば特性を付与できるのも【マスター合成】の特権だ。
僕はインベントリ内で合成できるのか確かめてみた。
結果は……成功だった。
手軽だし、でき上がったアイテムの名前なんかが面白かったので、余っている素材を合成してみる。
その数分後には、じゃがいもから作った《ポテトボム:攻撃アイテム・威力20》がいくつもインベントリ内にあった。
特性も色々あったが、特に『はじける旨さ』をつけたら攻撃アイテムから回復アイテムに変わったのは面白い。
投げると一定範囲に回復効果がある爆弾なんて、変なアイテムだ。
三人に見せたら、テセスからは『食べ物で遊んじゃダメだよ』って怒られた。
でもまぁ、作っちゃったものは仕方ないから、大いに活用させてもらおう。
5話
「ねぇ、今日も勇者が来てるわよ。最近ちょっと来すぎじゃないかしら?」
勇者はいつものように村の外に転移してきて、そこから徒歩でエメル村へ。
それにいち早く気づいたリリアが、依頼所に来て僕とアッシュの雑談に割って入る。
雑談といっても、まぁ【合成】スキルに関することなのだけど。
『何か必要そうなアイテムある?』とか『村の依頼で役に立てそうなことあるかなぁ?』とか。
他にはアメルさんとの関係の進展なんかを聞いてみたりするけど、忙しくてそれどころじゃないみたい。今も交代で休憩をとっているくらいだし。
「また勇者か。地図作成には大いに助かってるんだが、他の冒険者たちが……な」
アッシュに言われなくとも気にはなっていた。
以前に比べると、明らかに冒険者の数が減っているのだ。
理由は様々で、兵に難癖をつけられて持ち物を没収されたり、魔物の情報を聞き出すために詰め寄られたり。
中にはそれに文句を言った冒険者もいたが、アッシュがその場を収めなければ危うく反逆罪で捕まるところだったとか。
オドオドして気弱という最初の印象は吹き飛び、勇者という名を振りかざしてやりたい放題しているようにも見える。
一度来たことのある階層へは入り口の転移石から一瞬で移動ができるため、毎回到達した最下層へひとっ飛びらしい。
素材集めをしている風でもないので、目的はダンジョンの最下層なのだろう。
もしくは、ダンジョンという未知の場所を調査するとかいう名目なのかな?
とにかく勇者が再びやって来たということは、九階層の魔物対策ができたということだ。
強力な魔法媒体を入手したか、コルンみたいに物理攻撃でゴリ押しする気なのか。
「で、やっぱり待ち伏せするんだね?」
コルンもやって来て、リリアと僕の三人で再び九階層に。
「あったりまえじゃねーか。今日こそはギャフンと言わせて、二度と来れねぇようにしてやろーぜ!」
「そうね。ドロップ品は全部持ち帰っちゃうし、冒険者が怖がって村から離れていくし、全然いいことないんだもん」
せめてドロップ品を依頼所に納めてくれれば、その手数料で村が潤って、村の施設の補修依頼なんかも出すことができる。
魔物からのドロップでも欲しい者は大勢いるのだから(主に僕かもしれないけれど)、依頼所としてはどんどん買い取りたいものなのだ。
勇者はお金には困っていないようだし、冒険者として動いているわけじゃないから納品する気はさらさらないと見える。
そんなことを話しながら待ち構えていると、勇者の気配を感じた。
装備品の擦れる音に、何かを斬ったであろう剣の音。あとは、魔物に避けられて剣が地面に当たったのか、カキンという金属音も聞こえた。
しばらく待つとゆらゆらと光が動き、薄暗いダンジョン内で人影がハッキリと見えてくる。
「来たぜっ!」
「行ってらっしゃいクロっ!」
『ミャウッ』
クロまで小声になって会話をするなんて、どれだけ賢いのかと思う。
周りに合わせるのが上手いのか、リリアから生まれているから考えが一緒なのか。
クロは勢いよく飛び出して、出会い頭に鋭い爪を振り抜いて威嚇した。
『ミャッ!』
「うおっ!? く……くそっ、ファイアーランス!」
奇襲を受けた勇者は反撃の魔法を放ったのだが、それが直撃した当のクロは『ミャッ』と鳴きながら軽快なステップを踏んでいる。
ダメージは……ほとんどないようだ。
さらにクロは接近し、勇者の首についていた転移のアクセサリーを瞬時に破壊する。
全く無駄のない動きだ。
そしてよく考えたら装備品に頼るのって怖いかもしれない。
強い装備に身を包めば当然強くなるけれど、素の自分は変わらないのだ。
普段からいつも強い装備を身につけているわけじゃないし、僕も今だって『これが最強!』ってものではなく単に動きやすい格好をしているだけ。
装備が整っていない時に危険な目に遭って、命を落としてしまう可能性もある。
やはり自分自身を鍛えないとダメだな、なんて考えているうちに、クロは勇者の剣を弾き飛ばした。
バリエさんに売った魔銀の剣が、僕たちの足元まで飛んでくる。
しかも後ろにいた兵は怖くなったみたいで、尻尾を巻いて逃げ出してしまった。
さらに追い討ちをかけるように、クロは勇者の身ぐるみを剥いでいく。
勇者も負けじとインベントリから攻撃アイテムや回復薬みたいなものを出しているけど、仰向けに倒されて押さえつけられているのだから、まともに使えるわけがない。
小さな黒猫に、なす術のない勇者。
助けたほうがいいかと迷ったが、今出て行ったらどういう風に見られるのだろうか?
リリアはあれでも一応手加減してやっているとは言っていたけど、心配になってしまう。
「ねぇリリア、あれ、どうやって終わらせるの?」
「うーん、私も悩んでいるのよねぇ。急に魔物が逃げ出すのもおかしいし、今出て行ったら、私たちが勇者よりもダンジョンの奥にいたってことがバレちゃうじゃない?」
クロにもまた、そんなリリアの思いが伝わっているのか、殺さず逃さずの状態を保ち続けている。
理想としては、最初にアクセサリーを破壊して力の差を見せつけた時点で、勇者に撤退してほしかった。
それがどういうわけか、装備を剥ぎ取られ、仰向けで押さえつけられている勇者ができ上がってしまったのだ。
そしてこの膠着状態である。
「ちょっと、普通の魔物も来てるよっ。早くなんとかしないと危ないよ」
「あっちにもいるぜ、なんとかモールってやつだ」
「わ、わかってるわよ。魔物くらいならクロで対処できるから、ちょっと待ってよ」
僕とコルンの言葉に若干焦り始めたリリア。
やりすぎたことは自覚していても、うまい切り抜け方が見つからないようだ。
「もうこうなったら、普通に助けるフリをすればいいじゃん。これだけやっちゃったんだから、バレたって仕方ないよ。別に殺されるわけじゃないだろうしさ」
僕は観念した。
それに、もともと勇者とはちゃんと対話して、仲間になってもらうつもりだったのだし。
なぜか追い返す流れになっちゃっていたけれど……
クロは近寄ってくる魔物をことごとく瞬殺する。同種族のケットリーパーだろうとお構いなしだ。
ただ、それでも絶対に勇者を逃しはしないのだから、勇者とのレベル差はかなり大きいのだろう。
まるで『僕の獲物を横取りするニャ』とでも言っているかのような振る舞いだ。
「うー……そうよね、別に殺されるわけじゃ……いや、殺されるくらいだったら殺しちゃうのも……あ、そうだ!」
殺すだの殺されるだの不穏な言葉を連呼するリリアはちょっと怖い。
しかもそれで何かを思いついたっぽいから余計に恐怖が高まる。
「リリア、俺は殺人は嫌だからな」
横にいたコルンも、リリアの不穏な雰囲気は感じ取ったようだ。
僕も殺人はしたくない。このダンジョンの一階層でたまたま襲われた時も、相手を殺さずに逃したくらいだ。
思い出すのはその時の強盗集団のこと。
今、犯人たちはアッシュの代わりに村の依頼をこなしている。
冒険者たちがダンジョンに夢中で人手不足だったから、指名依頼と言いつつ雑務を押し付けてやったのだ。
報酬が良いからだろうか、全然嫌がらずにこなしているらしい。
本当に処罰なしで良かったのか、僕たちのことをバラさないかと心配していたのだが、アッシュが何か釘を刺してくれたのか、今のところ特に問題はない。
それで……だけど。
さすがに勇者にそういう扱いができるわけがないし、加えて僕たちのことを村の人や国王などに言いふらされたくもない。
「助けて仲間に引き入れちゃいましょう。それっぽい設定を考えるから、ちょっとだけ待ってちょうだい」
今にもクロが勇者を喰い殺しそうな勢いになっている中、リリアは頭を捻り、勇者救出のシナリオを考えていたのだった。
◆ ◆ ◆
僕――アステアがダンジョンに潜るのは何度目だろう。
八階層まではそれほど苦戦しなかった。グールには斬撃が効くし、スケルトンには打撃が有効みたいだ。
エメル村で手に入れた魔法媒体は、魔力の消費が少なく使い勝手は良かった。
だが威力は普通で、バリエさんから預かっている剣のほうがまだ強い。
バリエさんは上司に、剣を持つに相応しくなったらギルド長就任、そしてその時に結婚式も挙げてやろう……と言われたとか。
恵まれているよ、バリエさん。僕もそういう幸せな人生を歩みたかった。
それと、ごめんなさい……剣はしばらくお返しできそうにないです……
僕の父は先月殺されてしまった。
勇者の僕を国に引き渡し、大金を得たはいいが、それと引き換えに母は愛想を尽かして出ていった。
父は荒れて酷い生活を送った挙句、酒に酔った勢いで街の外に抜け出してダンジョンに向かい……魔物に殺された。
馬鹿だとは思うが、それでも僕の親だ。父の命を奪った魔物を憎く思うし、そもそも魔族や魔物さえ存在しなければ、僕が勇者の使命を負うことも、母が出ていくことも、父が亡くなることもなかったのにと考えてしまう。
僕の得たスキルがあれば、魔族や魔物に復讐することだって容易い。
そう思っていたのに、実際はどうだ。手強いとは思ったが、決して力で劣っていたつもりのないクロケットモールからは万全を期すために一時撤退。
兵は僕よりもずっと弱く、戦力にならない。
数で押されては危険性がグンと増してしまうので、退却は仕方なかった。
そして二度目の挑戦。今度こそと思ったのに、圧倒的な強さのケットリーパーに、なす術もなく蹂躙されてしまった。
転移魔法の使えるネックレスは真っ先に破壊され、剣も失う始末。
そして今、僕を食べるためなのか、鎧や籠手までもケットリーパーによって外されている。
どう見ても理性のある動きで、他の魔物とは一線を画しているが、きっと城で教わった希少種とかいう奴だったのだろう。
……黒猫一匹が乗っているだけだというのに、まるで大岩に押し潰されているような感覚だ。
徐々に体力を削られていて、きっともう助かりはしない。
荷物を持たせていた兵は逃げたし、こんな奥深くの階層まで来る冒険者もいやしないだろう。
すごく……時間がゆっくりに感じる。
もう十分以上はこうしているのではないか。
このケットリーパーはジッとこちらを見つめていて、時間が止まっているような感覚に陥る。
しばらくして、ようやくその鋭い爪が僕の喉元に突き立てられた。
もう『痛い』という感覚すらない。
やっと、このふざけた人生から解放されるのか。
なぜ魔族と戦わなくてはいけないのだ。
国で勝手にやればいいだろう。僕を巻き込むな。
こんな目に遭わせた国が憎い。
父の命を奪ったダンジョンが憎い……
全てを消し去ってくれる『神』は存在しないものか……
そして僕の意識はプツリと途切れてしまった。
『ミャッ!』
リリアは、他の個体よりもいくぶんか毛並みのツヤツヤした黒猫にそう言って、勇者の来るであろう方向に走らせた。
僕たちは三又に分かれた通路で様子を窺っていたが、しばらくは声も聞こえてこない。
次第に魔物との戦闘音が聞こえてきて、どうやらクロ相手に勇者たちは苦戦しているようだった。
「くそっ、一階層下っただけで魔物がこれほど強くなるとは!」
姿は見えないが、勇者と思しき声が響く。
数度の攻撃音の後に、『ここは一旦引きましょう!』という兵の声も聞こえた。
上手いこと追い払うことができそうで安心したが、気になったのは『クロケットモールか、厄介な魔物だ』という一言。
それって、つまり――
通路の奥から黒猫が一匹、こちらに顔を覗かせた。
まるで『僕が出るまでもなかったみたいニャんだが……』とでも言いたげだ。
「なぁんだ、ただ魔法が不得意で苦戦してただけかぁ」
リリアが九階層の魔物を倒しながら呟く。
クロケットモールは水に弱く、ケットリーパーは風に弱い。
僕たちは一度でも魔物を倒したら『世界樹辞典』でそれを調べることができる。特に前者については物理耐性が高いことも載っていた。
勇者たちだって、色々な属性の魔法を試せばすぐに気づけるはずだが、きっと相性が悪かったのだろう。
「おかえり。勇者はどうだったの?」
テセスの待つ十階層に戻ると、食事が用意されていた。野菜炒めとスープだ。
「うん。なんか普通に魔物に苦戦してて、私たちが何もしないうちに引き返しちゃった。せっかくクロが活躍できると思ったのにねぇ」
『ミャ~』
クロは一鳴きすると、ポンッと姿を消してしまう。
「そうだったんだ。じゃあまたすぐに来るかもしれないね」
話もそこそこに、せっかく作ってくれた料理が冷めないうちにと、僕たちは食事にすることにした。
料理をするテセスなんて昔は想像もつかなかったが、まさかスキルを習得するくらい、のめり込んでいるとは思わなかった。
とね屋の女将さんほどではないけれど、十分美味しいと思う。
できたら味付けはもう少し濃いほうが良かったが、それは調味料を持ってこなかったかららしい。
自分の家で料理することがなかったため、調理器具すら持ってなかったみたい。
さすがにとね屋から借りてくるわけにもいかないし、買いに行かなければと言っていた。
しかし、調味料や調理器具がないのに、どうやって野菜炒めとスープを作ったのだろうか?
器は僕とリリアが合成した『小瓶』という名のボウル形状のものが使われているが、むしろそれしか見受けられない。
「この料理って、どうやって作ったの?」
素直に『美味しいよ』とだけ言えばよかったのだろうけれど、つい気になると聞いてしまうのは僕の悪い癖だ。
「え? ごめん、何か変なものでも入ってた?」
そんなつもりで聞いたわけではなかったが、僕の一言でテセスは不安になり、それを耳にしたリリアも質問する。
「なになに? これって普通の食材じゃないの? すっごく美味しいんだけど、もしかしてグールの『腐肉』だったり?」
ついさっきまでそのアイテムを見ていたから出た発言だろうか?
さすがにそれは使われていない……と、信じたいが。
腐肉の一言でコルンが噴き出してしまい、場は大変なことになっていく。
『美味しければ素材がなんだっていいじゃない』とリリアは言うが、その発言だと腐肉が使われているのだとも捉えられそうだ。
慌てふためくテセスと僕。
テセスは何度も謝るが、悪いことなど一切していない。変な聞き方をした僕が悪かったのだ。
まぁリリアの発言も問題ありだったが、グレイトウルフでもグールの腐肉でも試してみようという彼女のことだから、全く悪気はなかったのだろう。
落ち着いてから改めて素材の話を聞くと、なんの変哲もない普通の食材だった。
「ごめん。僕が気になったのは素材じゃなくてさ、焼いたり煮たりってどうやったのかな? って思って」
「なんだぁ、そうならそうとハッキリ言いなさいよね」
リリアに怒られてしまったが、僕は『リリアはハッキリ言いすぎなんだよ』と心の中で呟いた。
【料理】スキルの使い方は、別に難しいものではなかった。
僕とリリアの持つ【合成】スキルと同じく、素材同士を合わせて一つの料理にするだけのこと。
僕たちはアイテムや武具が作れるが、テセスは料理が作れる。それだけの違いらしい。
「インベントリの中を見ながら、この素材とあの素材でこんな料理ができるなぁって考えると、スキルを使うことができるのよ。前にセンが教えてくれた、メインとサブって考え。あれのおかげで凄くわかりやすかったわ」
テセスは、メイン食材とサブ食材、そこに調味料と調理工程をイメージしてスキルを使ったらしい。
僕が頑なに所持を拒否した腐肉もテセスは持っていて、それも使おうと思えば使えるそうだ。
僕の【合成】スキルで同じことをやってみようとしたけど、選んだワイルドボアの肉には何の変化も起きない。
「セン、今自分にもできないか試してみたでしょ? ざんねーん、すでに私が挑戦済みよっ」
リリアもノーズホッグの肉を持ち帰った際に実験したらしく、色々と試した結果、『集魔の香』という魔物を集めるアイテムしか作れなかったそうだ。
今だから効き目もアイテム名もわかるけれど、完成したアイテムを使ってみた時は、効果の程がわからなかったらしい。
そういえば以前、コルンに『ノーズホッグがちょっと多い気がする? 弓の練習するのにはちょうどいいじゃないのよ』なんてリリアが言っていた記憶が蘇ってきた。
しかし、それとは別に僕はテセスの発言の中に気になる言葉があった。
『インベントリの中を見ながら』――料理用の素材をインベントリから出そうとすると、一つや二つではない。五つ六つは当たり前だろうし、それを並べるのも大変だろう。
「もしかして、【合成】スキルもインベントリの中で作れるんじゃないかな?」
「え? あ、そっか。私もそれは試したことなかったわ」
木材に金属、魔物素材だと大きいものでは一メートルを超える大きさ。
部屋ではなかなか試せなかった大きな素材も、インベントリ内で合成できるのなら問題ない。
それに、『世界樹辞典』に載っている場所も手間がかかりそうなアイテムでも、取り出して並べる必要がなければ生み出せそうだ。
「ちょっ、ちょっと私試してみるっ!」
ちなみにリリアの【合成】スキルでは、魔物素材でもボスから得たものは扱えない。
それができるのは僕の【マスター合成】で、さらにいえば特性を付与できるのも【マスター合成】の特権だ。
僕はインベントリ内で合成できるのか確かめてみた。
結果は……成功だった。
手軽だし、でき上がったアイテムの名前なんかが面白かったので、余っている素材を合成してみる。
その数分後には、じゃがいもから作った《ポテトボム:攻撃アイテム・威力20》がいくつもインベントリ内にあった。
特性も色々あったが、特に『はじける旨さ』をつけたら攻撃アイテムから回復アイテムに変わったのは面白い。
投げると一定範囲に回復効果がある爆弾なんて、変なアイテムだ。
三人に見せたら、テセスからは『食べ物で遊んじゃダメだよ』って怒られた。
でもまぁ、作っちゃったものは仕方ないから、大いに活用させてもらおう。
5話
「ねぇ、今日も勇者が来てるわよ。最近ちょっと来すぎじゃないかしら?」
勇者はいつものように村の外に転移してきて、そこから徒歩でエメル村へ。
それにいち早く気づいたリリアが、依頼所に来て僕とアッシュの雑談に割って入る。
雑談といっても、まぁ【合成】スキルに関することなのだけど。
『何か必要そうなアイテムある?』とか『村の依頼で役に立てそうなことあるかなぁ?』とか。
他にはアメルさんとの関係の進展なんかを聞いてみたりするけど、忙しくてそれどころじゃないみたい。今も交代で休憩をとっているくらいだし。
「また勇者か。地図作成には大いに助かってるんだが、他の冒険者たちが……な」
アッシュに言われなくとも気にはなっていた。
以前に比べると、明らかに冒険者の数が減っているのだ。
理由は様々で、兵に難癖をつけられて持ち物を没収されたり、魔物の情報を聞き出すために詰め寄られたり。
中にはそれに文句を言った冒険者もいたが、アッシュがその場を収めなければ危うく反逆罪で捕まるところだったとか。
オドオドして気弱という最初の印象は吹き飛び、勇者という名を振りかざしてやりたい放題しているようにも見える。
一度来たことのある階層へは入り口の転移石から一瞬で移動ができるため、毎回到達した最下層へひとっ飛びらしい。
素材集めをしている風でもないので、目的はダンジョンの最下層なのだろう。
もしくは、ダンジョンという未知の場所を調査するとかいう名目なのかな?
とにかく勇者が再びやって来たということは、九階層の魔物対策ができたということだ。
強力な魔法媒体を入手したか、コルンみたいに物理攻撃でゴリ押しする気なのか。
「で、やっぱり待ち伏せするんだね?」
コルンもやって来て、リリアと僕の三人で再び九階層に。
「あったりまえじゃねーか。今日こそはギャフンと言わせて、二度と来れねぇようにしてやろーぜ!」
「そうね。ドロップ品は全部持ち帰っちゃうし、冒険者が怖がって村から離れていくし、全然いいことないんだもん」
せめてドロップ品を依頼所に納めてくれれば、その手数料で村が潤って、村の施設の補修依頼なんかも出すことができる。
魔物からのドロップでも欲しい者は大勢いるのだから(主に僕かもしれないけれど)、依頼所としてはどんどん買い取りたいものなのだ。
勇者はお金には困っていないようだし、冒険者として動いているわけじゃないから納品する気はさらさらないと見える。
そんなことを話しながら待ち構えていると、勇者の気配を感じた。
装備品の擦れる音に、何かを斬ったであろう剣の音。あとは、魔物に避けられて剣が地面に当たったのか、カキンという金属音も聞こえた。
しばらく待つとゆらゆらと光が動き、薄暗いダンジョン内で人影がハッキリと見えてくる。
「来たぜっ!」
「行ってらっしゃいクロっ!」
『ミャウッ』
クロまで小声になって会話をするなんて、どれだけ賢いのかと思う。
周りに合わせるのが上手いのか、リリアから生まれているから考えが一緒なのか。
クロは勢いよく飛び出して、出会い頭に鋭い爪を振り抜いて威嚇した。
『ミャッ!』
「うおっ!? く……くそっ、ファイアーランス!」
奇襲を受けた勇者は反撃の魔法を放ったのだが、それが直撃した当のクロは『ミャッ』と鳴きながら軽快なステップを踏んでいる。
ダメージは……ほとんどないようだ。
さらにクロは接近し、勇者の首についていた転移のアクセサリーを瞬時に破壊する。
全く無駄のない動きだ。
そしてよく考えたら装備品に頼るのって怖いかもしれない。
強い装備に身を包めば当然強くなるけれど、素の自分は変わらないのだ。
普段からいつも強い装備を身につけているわけじゃないし、僕も今だって『これが最強!』ってものではなく単に動きやすい格好をしているだけ。
装備が整っていない時に危険な目に遭って、命を落としてしまう可能性もある。
やはり自分自身を鍛えないとダメだな、なんて考えているうちに、クロは勇者の剣を弾き飛ばした。
バリエさんに売った魔銀の剣が、僕たちの足元まで飛んでくる。
しかも後ろにいた兵は怖くなったみたいで、尻尾を巻いて逃げ出してしまった。
さらに追い討ちをかけるように、クロは勇者の身ぐるみを剥いでいく。
勇者も負けじとインベントリから攻撃アイテムや回復薬みたいなものを出しているけど、仰向けに倒されて押さえつけられているのだから、まともに使えるわけがない。
小さな黒猫に、なす術のない勇者。
助けたほうがいいかと迷ったが、今出て行ったらどういう風に見られるのだろうか?
リリアはあれでも一応手加減してやっているとは言っていたけど、心配になってしまう。
「ねぇリリア、あれ、どうやって終わらせるの?」
「うーん、私も悩んでいるのよねぇ。急に魔物が逃げ出すのもおかしいし、今出て行ったら、私たちが勇者よりもダンジョンの奥にいたってことがバレちゃうじゃない?」
クロにもまた、そんなリリアの思いが伝わっているのか、殺さず逃さずの状態を保ち続けている。
理想としては、最初にアクセサリーを破壊して力の差を見せつけた時点で、勇者に撤退してほしかった。
それがどういうわけか、装備を剥ぎ取られ、仰向けで押さえつけられている勇者ができ上がってしまったのだ。
そしてこの膠着状態である。
「ちょっと、普通の魔物も来てるよっ。早くなんとかしないと危ないよ」
「あっちにもいるぜ、なんとかモールってやつだ」
「わ、わかってるわよ。魔物くらいならクロで対処できるから、ちょっと待ってよ」
僕とコルンの言葉に若干焦り始めたリリア。
やりすぎたことは自覚していても、うまい切り抜け方が見つからないようだ。
「もうこうなったら、普通に助けるフリをすればいいじゃん。これだけやっちゃったんだから、バレたって仕方ないよ。別に殺されるわけじゃないだろうしさ」
僕は観念した。
それに、もともと勇者とはちゃんと対話して、仲間になってもらうつもりだったのだし。
なぜか追い返す流れになっちゃっていたけれど……
クロは近寄ってくる魔物をことごとく瞬殺する。同種族のケットリーパーだろうとお構いなしだ。
ただ、それでも絶対に勇者を逃しはしないのだから、勇者とのレベル差はかなり大きいのだろう。
まるで『僕の獲物を横取りするニャ』とでも言っているかのような振る舞いだ。
「うー……そうよね、別に殺されるわけじゃ……いや、殺されるくらいだったら殺しちゃうのも……あ、そうだ!」
殺すだの殺されるだの不穏な言葉を連呼するリリアはちょっと怖い。
しかもそれで何かを思いついたっぽいから余計に恐怖が高まる。
「リリア、俺は殺人は嫌だからな」
横にいたコルンも、リリアの不穏な雰囲気は感じ取ったようだ。
僕も殺人はしたくない。このダンジョンの一階層でたまたま襲われた時も、相手を殺さずに逃したくらいだ。
思い出すのはその時の強盗集団のこと。
今、犯人たちはアッシュの代わりに村の依頼をこなしている。
冒険者たちがダンジョンに夢中で人手不足だったから、指名依頼と言いつつ雑務を押し付けてやったのだ。
報酬が良いからだろうか、全然嫌がらずにこなしているらしい。
本当に処罰なしで良かったのか、僕たちのことをバラさないかと心配していたのだが、アッシュが何か釘を刺してくれたのか、今のところ特に問題はない。
それで……だけど。
さすがに勇者にそういう扱いができるわけがないし、加えて僕たちのことを村の人や国王などに言いふらされたくもない。
「助けて仲間に引き入れちゃいましょう。それっぽい設定を考えるから、ちょっとだけ待ってちょうだい」
今にもクロが勇者を喰い殺しそうな勢いになっている中、リリアは頭を捻り、勇者救出のシナリオを考えていたのだった。
◆ ◆ ◆
僕――アステアがダンジョンに潜るのは何度目だろう。
八階層まではそれほど苦戦しなかった。グールには斬撃が効くし、スケルトンには打撃が有効みたいだ。
エメル村で手に入れた魔法媒体は、魔力の消費が少なく使い勝手は良かった。
だが威力は普通で、バリエさんから預かっている剣のほうがまだ強い。
バリエさんは上司に、剣を持つに相応しくなったらギルド長就任、そしてその時に結婚式も挙げてやろう……と言われたとか。
恵まれているよ、バリエさん。僕もそういう幸せな人生を歩みたかった。
それと、ごめんなさい……剣はしばらくお返しできそうにないです……
僕の父は先月殺されてしまった。
勇者の僕を国に引き渡し、大金を得たはいいが、それと引き換えに母は愛想を尽かして出ていった。
父は荒れて酷い生活を送った挙句、酒に酔った勢いで街の外に抜け出してダンジョンに向かい……魔物に殺された。
馬鹿だとは思うが、それでも僕の親だ。父の命を奪った魔物を憎く思うし、そもそも魔族や魔物さえ存在しなければ、僕が勇者の使命を負うことも、母が出ていくことも、父が亡くなることもなかったのにと考えてしまう。
僕の得たスキルがあれば、魔族や魔物に復讐することだって容易い。
そう思っていたのに、実際はどうだ。手強いとは思ったが、決して力で劣っていたつもりのないクロケットモールからは万全を期すために一時撤退。
兵は僕よりもずっと弱く、戦力にならない。
数で押されては危険性がグンと増してしまうので、退却は仕方なかった。
そして二度目の挑戦。今度こそと思ったのに、圧倒的な強さのケットリーパーに、なす術もなく蹂躙されてしまった。
転移魔法の使えるネックレスは真っ先に破壊され、剣も失う始末。
そして今、僕を食べるためなのか、鎧や籠手までもケットリーパーによって外されている。
どう見ても理性のある動きで、他の魔物とは一線を画しているが、きっと城で教わった希少種とかいう奴だったのだろう。
……黒猫一匹が乗っているだけだというのに、まるで大岩に押し潰されているような感覚だ。
徐々に体力を削られていて、きっともう助かりはしない。
荷物を持たせていた兵は逃げたし、こんな奥深くの階層まで来る冒険者もいやしないだろう。
すごく……時間がゆっくりに感じる。
もう十分以上はこうしているのではないか。
このケットリーパーはジッとこちらを見つめていて、時間が止まっているような感覚に陥る。
しばらくして、ようやくその鋭い爪が僕の喉元に突き立てられた。
もう『痛い』という感覚すらない。
やっと、このふざけた人生から解放されるのか。
なぜ魔族と戦わなくてはいけないのだ。
国で勝手にやればいいだろう。僕を巻き込むな。
こんな目に遭わせた国が憎い。
父の命を奪ったダンジョンが憎い……
全てを消し去ってくれる『神』は存在しないものか……
そして僕の意識はプツリと途切れてしまった。
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