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活力の源
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「そんな理由で私まで連れ出されるっておかしいんじゃないか?」
町の外に出て、パティがぼやく。
「いや、まぁ僕も一人で大丈夫だって言ってはみたんですけど」
「結果的にここに立っているんだ。
シンが何を言ったかなんて過程は関係ないよ」
「そ、そんなこと言わないでくださいよ」
素材を集め終えていざ魔道具作りにかかろうとしていたものだから、今のパティは少々機嫌が悪かった。
ピアラビットは草むらに隠れていることが多く、探すのが面倒だからという理由で冒険者たちは無視することが多い。
ギルドに持ち込まれるほとんどは、偶然居合わせたか、剣や魔道具の練習がてら倒したもの。
当然そんなものの品質が良いはずがない。
「何かアイデアってありますかね?」
「ない! ……こともないが、つまらないから教えないもん」
「もん……って、ギルドの為なんじゃないんですか?」
フェルトに頼まれ、アビルマにもお願いされたわけだから、当然パティだって協力的になるべきでは?
という思いは、どうやらパティには関係ないことにようだ。
「ハッ、苦労もせずに甘い汁を吸うのかい?」
嘲笑いながら、先日闇市で購入した結晶体に頬擦りをしているパティ。
たしかにパティが知っているのなら僕に依頼をする理由がない。
報酬まで用意され、もしかしたらパティの相手をしてやってくれ……というだけのことだったのでは?
ふと、そんなことを思うシン。
「まぁいいや。
とにかく状態が良くなくっちゃダメなんだから、罠を仕掛けて捕まえちゃうのが一番だよね」
「そうだなー。
捕まえられたら教えてくれー」
「あー……はいはい。
パティさんにやる気のないことはよくわかりましたよ」
終ぞパティは地面に寝そべってしまった。
見た目だけはあどけない少女がゴロゴロとして、なんとも愛らしいわけだが、これが夜になるとビールを片手に脂っこい肴を頬張っているのだ。
実際には一度しか見たことはないのだが、その一回の強烈な印象のおかげで、どうにもモヤモヤした気分になってしまうシンだった。
何もしないパティは放っておくしかない。
罠といえば、備蓄を食い荒らすネズミを退治する用のネズミ取りが思いつくのだが。
シンはパティを残して町に引き返す。
『歩くの面倒いから待ってるー』などと言われては仕方がないわけで、決して児童虐待などではない。
町の者が見たところで、きっと『なんだパティか……』と思われるのが関の山。
相変わらず手持ちは少ないので、小型のものを一つ手に取ってみる。
餌は何が良いのかと雑貨屋の傍にあった食料品コーナーをウロウロしていると、店主が声をかけてくる。
「ネズミ退治かい?」
「あ、はい……そんなところです」
「それなら穀類か果物がいいぞ。
この辺りに出てくるやつは大体がクマネズミだ。全く、あいつらはどれだけ退治してもいなくなりやがらねぇ。
魔物の方がよっぽどマシだぜ本当に……」
ネズミ取りで魔物を捕まえたいとは言い出せず、シンは適当にお茶を濁したわけだが。
なんとなく聞いたことのある『ネズミはチーズが好きだ』というのは間違っているのだろうか?
このような道具を使ったことなどなかったシンだが、ネズミとはそういうものだとばかり思っていた。
まぁ……今回は魔物であるピアラビットを捕獲したいのであって、ネズミは関係がない。
「じゃあ家にあるもので試してみることにします」
「あぁ。それじゃ銅貨1枚だ」
簡単に捕まえられるとは思わない。
しかしネズミ取り自体が無駄になることはないだろう。
餌を変え、何度も挑戦すればいつかは上手くいくに違いない。
お金も底をつき、若干の不安を覚えながらも、シンはパティの元へと戻るのであった。
町の外に出て、パティがぼやく。
「いや、まぁ僕も一人で大丈夫だって言ってはみたんですけど」
「結果的にここに立っているんだ。
シンが何を言ったかなんて過程は関係ないよ」
「そ、そんなこと言わないでくださいよ」
素材を集め終えていざ魔道具作りにかかろうとしていたものだから、今のパティは少々機嫌が悪かった。
ピアラビットは草むらに隠れていることが多く、探すのが面倒だからという理由で冒険者たちは無視することが多い。
ギルドに持ち込まれるほとんどは、偶然居合わせたか、剣や魔道具の練習がてら倒したもの。
当然そんなものの品質が良いはずがない。
「何かアイデアってありますかね?」
「ない! ……こともないが、つまらないから教えないもん」
「もん……って、ギルドの為なんじゃないんですか?」
フェルトに頼まれ、アビルマにもお願いされたわけだから、当然パティだって協力的になるべきでは?
という思いは、どうやらパティには関係ないことにようだ。
「ハッ、苦労もせずに甘い汁を吸うのかい?」
嘲笑いながら、先日闇市で購入した結晶体に頬擦りをしているパティ。
たしかにパティが知っているのなら僕に依頼をする理由がない。
報酬まで用意され、もしかしたらパティの相手をしてやってくれ……というだけのことだったのでは?
ふと、そんなことを思うシン。
「まぁいいや。
とにかく状態が良くなくっちゃダメなんだから、罠を仕掛けて捕まえちゃうのが一番だよね」
「そうだなー。
捕まえられたら教えてくれー」
「あー……はいはい。
パティさんにやる気のないことはよくわかりましたよ」
終ぞパティは地面に寝そべってしまった。
見た目だけはあどけない少女がゴロゴロとして、なんとも愛らしいわけだが、これが夜になるとビールを片手に脂っこい肴を頬張っているのだ。
実際には一度しか見たことはないのだが、その一回の強烈な印象のおかげで、どうにもモヤモヤした気分になってしまうシンだった。
何もしないパティは放っておくしかない。
罠といえば、備蓄を食い荒らすネズミを退治する用のネズミ取りが思いつくのだが。
シンはパティを残して町に引き返す。
『歩くの面倒いから待ってるー』などと言われては仕方がないわけで、決して児童虐待などではない。
町の者が見たところで、きっと『なんだパティか……』と思われるのが関の山。
相変わらず手持ちは少ないので、小型のものを一つ手に取ってみる。
餌は何が良いのかと雑貨屋の傍にあった食料品コーナーをウロウロしていると、店主が声をかけてくる。
「ネズミ退治かい?」
「あ、はい……そんなところです」
「それなら穀類か果物がいいぞ。
この辺りに出てくるやつは大体がクマネズミだ。全く、あいつらはどれだけ退治してもいなくなりやがらねぇ。
魔物の方がよっぽどマシだぜ本当に……」
ネズミ取りで魔物を捕まえたいとは言い出せず、シンは適当にお茶を濁したわけだが。
なんとなく聞いたことのある『ネズミはチーズが好きだ』というのは間違っているのだろうか?
このような道具を使ったことなどなかったシンだが、ネズミとはそういうものだとばかり思っていた。
まぁ……今回は魔物であるピアラビットを捕獲したいのであって、ネズミは関係がない。
「じゃあ家にあるもので試してみることにします」
「あぁ。それじゃ銅貨1枚だ」
簡単に捕まえられるとは思わない。
しかしネズミ取り自体が無駄になることはないだろう。
餌を変え、何度も挑戦すればいつかは上手くいくに違いない。
お金も底をつき、若干の不安を覚えながらも、シンはパティの元へと戻るのであった。
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