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獣人と人化
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マナの暴走は止まることを知らなかった。
各地で魔物は発生していたし、最初は地表にダンジョンコアが発生した。
謎の球体は人々を不安に陥れ、国は確認できている全てを破壊することを決断した。
そしてそれは間違ってはいなかったのだ。
ダンジョンコアが起動していることも不思議でならなかったが、それは魔界とつながる転移装置であり、マナが溜まった時、それは突如として牙を剥くことになったのだ。
転移装置から発せられる濃いマナは、周囲に発生する魔物に大きな影響を与えていた。
見たことのないUM……いや、もうそれは純粋に魔物だと言うしかないのだろう。
大きく凶暴な魔物は、次々と周囲の建物を破壊した。
軍もこの報告を受けた直後に行動を開始したらしいのだが、結果は酷いものであったそうだ。
そのような報道がなされると、人々の多くは別の国へ逃げるか隠れるべきだと判断したのだろう。
テレビもスマホも役にはたたなくなったようで、フィリアの怒りが余計に増したのをパルティナは感じていた……
この時点で外界の情報はほぼ完全に絶たれてしまったのだ。
わかっていることは、ダンジョンコアを放置し続ければ大変なことになるということ。
幸いマナに関する知識はあり、フィリアはついに行動を開始することにした。
『2人とも……これを着けてみて頂戴』
何やら黙々と作業を開始して数日。
フィリアは2人にお手製の魔道具を手渡した。
さまざまな素材があり資料が揃っている研究所とは異なり、相当苦戦していたことはパルティナも見ていたのだ。
少し前だったら疑心に満ちて断ったと思う。
しかし、ヴァリルが何も言わずにその錆びた指輪を小指に嵌めたのだ。
ザラザラとした錆が肌に傷をつける。
感染症などの危険もあるが、それでも身につけるほどヴァリルはフィリアのことを信頼したのだろう。
フィリアの行動を見ていたのは、パルティナだけではなかったのだ。
『未完成ね……これじゃあマナの制御能力まで失っちゃうみたいね……』
『ううん……私はこれでいい。
パルティナはどうかわからないけど、姿を隠せるのは嬉しいわ……』
嬉しいと言いながらも、全く笑みは作らない。
だが、ヴァリルのそんな冷めた表情を見て、パルティナも指輪を嵌めることにしたのだ。
打算的……とでも言えばいいのだろうか?
別に着けたいわけではないが、これは憎しみを共有するための儀式であり、互いに同じ目的を持って進むという意思表示。
魔族特有の鱗や羽は、自分たち魔族が自然と発する自衛魔法の一種だということらしいのだ。
そう言われてみれば、興奮した時に姿が変わる大人たちの姿も見たことがある。
元は地球に住む人とほとんど同じ姿。
しかもツノや牙だけでなく、身長まで縮んでしまう。
これが本来の自分の姿なのだと知った時、少しだけ悲しい気持ちになってしまったのは言うまでもない……
こうして地球人と同じ姿を手に入れたわけだが、こともあろうにフィリアはギルドを立ち上げると言い出した。
マナの暴走は放置してはいけない。
それはわかるが、自らをアベンチャーだのと名乗る男たちに協力をしようと言い出したのだ。
全く何を考えているのかわからない。
幸い新たに発生するダンジョンコアは、多少の誤差があるものの現在いる周辺に集中しているようだった。
放棄された役所を陣取ることに決めたフィリアは、自らをアビルマと名乗ると言い出した。
『どうして……?
フィリアはフィリアじゃん。名前を変えるって……』
『アビゲイル……ルマンド……
私はあの2人を生涯赦さないわ……
憎いのよ。可愛い子供たちを失い魔界を放棄しなくてはならなくなった原因を作った奴らのことを……』
静かにフィリアは怒っていた。
それはパルティナやヴァリルの怒りとは比べ物にならないほど深く、異議を申せばこちらが処分されるほどだと感じてしまった。
それゆえにパルティナとヴァリルはフィリア……いやアビルマを信頼してしまったのだ。
そして町に移り住み、数年の間は金策に走っていた。
紙幣や貨幣は価値を失い、金銀銅や宝石での取引が多くなっていたのだ。
マナをよく知るパルティナには都合は良いものだったが、子供の姿ではなかなか相手にされることはなかった。
裏方に徹してアビルマ……いや、その名を口にするのも正直気分は良くなかった。
普段はあーちゃんと呼びながら自分を誤魔化し、長い年月をかけてお金を貯め続けたのだ。
ヴァリルもまた魔物を狩っては生活の糧にしていた。
持ち前の運動神経は小さくなっても変わらないものだったのだ。
パティはそれが羨ましかったが、逆にヴァリルもまた、マナをよく知るパルティナを羨ましく感じていたのだった。
そして異変が起きた。
町に、魔族に近い赤ん坊が誕生してしまったのだ……
各地で魔物は発生していたし、最初は地表にダンジョンコアが発生した。
謎の球体は人々を不安に陥れ、国は確認できている全てを破壊することを決断した。
そしてそれは間違ってはいなかったのだ。
ダンジョンコアが起動していることも不思議でならなかったが、それは魔界とつながる転移装置であり、マナが溜まった時、それは突如として牙を剥くことになったのだ。
転移装置から発せられる濃いマナは、周囲に発生する魔物に大きな影響を与えていた。
見たことのないUM……いや、もうそれは純粋に魔物だと言うしかないのだろう。
大きく凶暴な魔物は、次々と周囲の建物を破壊した。
軍もこの報告を受けた直後に行動を開始したらしいのだが、結果は酷いものであったそうだ。
そのような報道がなされると、人々の多くは別の国へ逃げるか隠れるべきだと判断したのだろう。
テレビもスマホも役にはたたなくなったようで、フィリアの怒りが余計に増したのをパルティナは感じていた……
この時点で外界の情報はほぼ完全に絶たれてしまったのだ。
わかっていることは、ダンジョンコアを放置し続ければ大変なことになるということ。
幸いマナに関する知識はあり、フィリアはついに行動を開始することにした。
『2人とも……これを着けてみて頂戴』
何やら黙々と作業を開始して数日。
フィリアは2人にお手製の魔道具を手渡した。
さまざまな素材があり資料が揃っている研究所とは異なり、相当苦戦していたことはパルティナも見ていたのだ。
少し前だったら疑心に満ちて断ったと思う。
しかし、ヴァリルが何も言わずにその錆びた指輪を小指に嵌めたのだ。
ザラザラとした錆が肌に傷をつける。
感染症などの危険もあるが、それでも身につけるほどヴァリルはフィリアのことを信頼したのだろう。
フィリアの行動を見ていたのは、パルティナだけではなかったのだ。
『未完成ね……これじゃあマナの制御能力まで失っちゃうみたいね……』
『ううん……私はこれでいい。
パルティナはどうかわからないけど、姿を隠せるのは嬉しいわ……』
嬉しいと言いながらも、全く笑みは作らない。
だが、ヴァリルのそんな冷めた表情を見て、パルティナも指輪を嵌めることにしたのだ。
打算的……とでも言えばいいのだろうか?
別に着けたいわけではないが、これは憎しみを共有するための儀式であり、互いに同じ目的を持って進むという意思表示。
魔族特有の鱗や羽は、自分たち魔族が自然と発する自衛魔法の一種だということらしいのだ。
そう言われてみれば、興奮した時に姿が変わる大人たちの姿も見たことがある。
元は地球に住む人とほとんど同じ姿。
しかもツノや牙だけでなく、身長まで縮んでしまう。
これが本来の自分の姿なのだと知った時、少しだけ悲しい気持ちになってしまったのは言うまでもない……
こうして地球人と同じ姿を手に入れたわけだが、こともあろうにフィリアはギルドを立ち上げると言い出した。
マナの暴走は放置してはいけない。
それはわかるが、自らをアベンチャーだのと名乗る男たちに協力をしようと言い出したのだ。
全く何を考えているのかわからない。
幸い新たに発生するダンジョンコアは、多少の誤差があるものの現在いる周辺に集中しているようだった。
放棄された役所を陣取ることに決めたフィリアは、自らをアビルマと名乗ると言い出した。
『どうして……?
フィリアはフィリアじゃん。名前を変えるって……』
『アビゲイル……ルマンド……
私はあの2人を生涯赦さないわ……
憎いのよ。可愛い子供たちを失い魔界を放棄しなくてはならなくなった原因を作った奴らのことを……』
静かにフィリアは怒っていた。
それはパルティナやヴァリルの怒りとは比べ物にならないほど深く、異議を申せばこちらが処分されるほどだと感じてしまった。
それゆえにパルティナとヴァリルはフィリア……いやアビルマを信頼してしまったのだ。
そして町に移り住み、数年の間は金策に走っていた。
紙幣や貨幣は価値を失い、金銀銅や宝石での取引が多くなっていたのだ。
マナをよく知るパルティナには都合は良いものだったが、子供の姿ではなかなか相手にされることはなかった。
裏方に徹してアビルマ……いや、その名を口にするのも正直気分は良くなかった。
普段はあーちゃんと呼びながら自分を誤魔化し、長い年月をかけてお金を貯め続けたのだ。
ヴァリルもまた魔物を狩っては生活の糧にしていた。
持ち前の運動神経は小さくなっても変わらないものだったのだ。
パティはそれが羨ましかったが、逆にヴァリルもまた、マナをよく知るパルティナを羨ましく感じていたのだった。
そして異変が起きた。
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