35歳ニートがテストプレイヤーに選ばれたのだが、応募した覚えは全く無い。

紅柄ねこ(Bengara Neko)

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15話

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「すぴー……ん、んぐぁ?」
 なんというモンスターの寝相なのだ。
 というか、モンスターも普通に寝るものなんだな……
 魔法効果で、とかではなくごく普通に。

「まぁ、そういうゲームもあるっちゃあるよな……」
 寝ているモンスターとエンカウントして先制を取られてしまう主人公たち。
 うん、まぁ確かにそういうゲームもプレイしたことはある……

「なぁ、寝ている内に倒しちまおうぜ」
「そうですよ、こんな凶暴なモンスター、駆逐するに限りますっ」
 御者のおっちゃんは極端だけど、アランが言う通りさっさと倒すべきだろう。
 気がかりなのは、奥の部屋にもう一つの寝息の発生源があることなのだが……
 まぁ起きてきたところで、問題は無いだろう。

「いくぞっ……」
 慎重に長剣を喉元に突き立てるアラン。
 一気に力を加えると、オークは大きな叫び声と共に絶命した。
「ぶぉっ⁈」
 その声に驚いた奥のオークが起きてしまったようだ。
 だが、屋敷の構造的にはそこが最後の部屋。
 この一体を始末したら、もうこの廃墟にはおそらく一体もいなくなるだろう。

「来るぞっ、おっさんは離れてろっ」
 アランが構えると、僕も剣を持って戦闘に備える。
 今更なのだが、僕って短剣なんだよな。
 初期装備のまま、といえばそれだけが理由なのだけど、軽いし扱いやすいし子供だからその方が合っているのだろうし……

「ぐぉぉ……ぐがぁ……」
 ガンッガンッ、と壁に何かが当たる音がする。
 通路の先から見えたオークの手にはこん棒が握られており、それが狭い部屋の壁にぶつかっているのだ。
 ん? こん棒を持っているのはまぁ分かる。
 しかし、パッと見でどこかに違和感を感じてしまうのだ。

 大きさ……は、やや大きい。
 口に生えている牙がオークには無かった。
 そして下半身に着けている装備はおそらく金属製。

「アラン、ボジョレっ! ダメだ、二人とも逃げてっ!!」
 以前出会ったはぐれ者とは違う気がする。
 こいつは多分エリアボス。
 名前を付けるのならオークキングとか、そんな名前に違いない。
【BOSS:オーク2とエンカウントしました】
 ……
 うん、きっと期待を越えてくると思っていたよ。
 いやいや、そんなことより早く戦う準備をしなくっちゃ……

 僕は二人よりも前に出て、手を大きく広げる。
 きっと言葉だけでは退こうとはしないだろうから、身体で阻止する方がいいと考えたのだ。
「うがぁぁぁ!!」
 ボスは棍棒を大きく振りかぶり、強く地面を叩きつけた。
「や、やばっ⁉」

 まさか衝撃波が飛んでくるとは思わなかった。
 細い通路で逃げ道もなく、僕の身体に衝撃が走る。
「大丈夫かスノウっ!」
 すぐにアランが僕を抱きかかえ、御者のおっちゃんと共に下の階へ避難した。
 防御力がわずかにでもあって助かった。
 残りHPはわずかだが、死ななければ回復はするだろう。

 二階から、キィン……キィンと剣の当たる音がする。
 棍棒で防がれているのか、それとも防具に当たる音か。
 結構な頻度で聞こえることから、ボジョレが優勢というわけでもなさそうだ。
「ぼ、僕が行くよ……」
 少しばかし身体が痛いけれど、ボジョレだけでは勝てそうにはない。
 市販のポーションを初めて試してみたのだが、これは気休め程度の回復薬のようだ。
 安かったものな……

「ダメだっ、ここはボジョレに任せるんだ!」
 どうしてこの男は、こういう時だけはカッコいいセリフを吐けるのだろうか?
 廃墟に来てから『俺はスノウの荷物持ちだから』なんてことばかり言っていたくせに。
「いいかよく聞け……」
 アランが真剣な表情で僕に向かって言う。
「う、うん……」

 ごくっ、と唾をのんでしまう。
 一体この男は僕に何を言わんとするのか……
「お前が……お前がケガをすると俺たちがアイズに殺されるんだ!
 すでに一撃もらってしまったが、今なら半殺しで済まされるだろう。
 頼むから俺たちがアイズに殺される未来だけは……」

 『くっ……』なんて言いながら、ほろりと涙を流すアランだが、さすがにちょっとどうかしてると思ってしまった。
「じ、じゃあ行ってくるよ……止めても無駄だからね……」
 呆れて僕は二階へ上がる。
「待ってくれスノウー!」

 そこまで冗談を言える余裕があるのは、まださっきのボスを普通のオークだと思っているからなのだろう……
 二階に上がった僕が見たのは、何度も棍棒で殴られて胸を抑えながら戦うボジョレの姿だった。

 追いかけて上がってくるアランも、さすがにその姿を見て冗談は言えなくなったようだ。
「お、おいボジョレ……さっさと倒しちまえよそんな雑魚……」
 雑魚なんかじゃないんだよアラン。
 こいつは、全身全霊をかけて戦わなくてはいけないほどの実力を持った、この廃墟のボスなんだ……
 そりゃあ見た目はオークとあまり大差は無いように感じるかもしれないけれど……

「うわぁぁぁぁ、でぇりゃぁぁ!!」
 勢いよくボスの頭に飛びかかる僕。
 接近してしまえば衝撃波など怖くはない。
 何度も何度も斬りつけるのだが、さすがはボスだけあって体力が多い。
「お、俺も戦うぞっ!」
 アランが一歩前に出る。
 だが、近くに来られては邪魔でしかない。
 攻撃を避ける時に障害物はなるべくいてほしくないのだ。

「来ないでっ! もうすぐ倒せるから大丈夫!!」
 実際のところ、ボスのHPがどれだけ減ったのかはわからない。
『あとどのくらいだ……』『まだ倒れないのか……』
 そんなことを思いながら、ひたすらに攻撃を繰り返したのだった。

【スノウはレベル27に上がった】
【BOSS初討伐報酬:知恵の指輪】
【エリア殲滅報酬:ミスリルソード】
【スノウはスキル:解析1を習得】

「っとに、見た目が同じとかずるいよなぁ」
「……全然違ったと思うけど?」
 馬車に揺られながら、アランはぼやく。
 やはり普通のオークと同じだとばかり思っていたそうだ。

「そうですよ、どう考えても普通のオークじゃ……痛ったたた……
 おっさん、揺らさないでくれよっ」
「そりゃ無理だよあんちゃん。
 早く街に帰って医者に見せるべきだぁ、全速力で帰るからなぁ」
 揺れるたびに『痛い痛い』と叫ぶボジョレ。
 僕の方は痛みも引いて、どうにかアランの半殺しは免れたようだが……

「この剣……どうやって持って帰ろうかな……」
 微妙に大きすぎて空間収納に入らないミスリルソード。
 使いたいのだけど、アイズが許してくれるかどうか。
 帰り道、僕はオークから入手した皮を何度も空間収納に出し入れして、少しでもレベルが上がらないかと期待したのだった。
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