22 / 41
19話
しおりを挟む「なかなか良い情報をくれる冒険者だったじゃねぇか」
「しかしブータ様、あの者たちは私に剣を向けたのですよっ!」
「うるせぇ! どうせ話も聞かずに先に手を出したのはテメェだろうが!」
ブータは傭兵の性格をよく知っていた。
そして、その通りだった傭兵は何も言い返せないでいる。
具体的な日時は知らされなかったが、遅くとも二日後には500近い数が入るらしいのだ。
それも買い占めて、騒ぎになったところで一気に捌いてやろう。
一枚3000Gで売っても、ざっと150万Gの利益。
品薄だとなれば、どいつもこいつも買い占めに動くはずだ。
そんなことを考えていたブータ息子なものだから、二日後には予想通りに手下たちは荷馬車を待ち伏せていたそうだ。
「どうして売れねぇんだ!
市場はオークの皮が不足してるんじゃねぇのかよっ!」
タイミングを見計らって、生産職の者にはシルクをオークの皮と交換してもらった。
豚息子の考えてそうなことを話したら、意外とみんな協力的になってくれるもので、研究用のオークの皮はすぐに余剰在庫となったのだ。
「どうなってるんだジジイ!」
豚息子がギルドに直接やってきたのだから驚きだった。
カウンターに詰め寄るが、構わず通常業務を行う親父さん。
「さぁてねぇ?
そういや最近、市場では婦人用の服が人気だと聞いているが。
なんでもシルクという生地を使って肌触りがとても良いらしいじゃないか」
『ほれ、そこのお嬢ちゃんが着ているやつだよ』なんて言って親父さんが僕を指差す。
誰が『お嬢ちゃん』だよ、誰が!
表情を引きつらせながら様子を眺めていると、豚息子が近付いて僕の服を触る。
「うぬぬ……確かに最高の肌触りだ……
うん? それによく見れば、なかなか可愛らしいお嬢ちゃんではないか……」
豚息子のその言葉に、僕は背筋に冷たいものが走る。
「どうだい? 私の屋敷で働く気は無いかい?
もちろん、夜はしっかりと可愛がってあげるからね」
もう本当に勘弁してほしい……
僕の見た目って10歳にも満たないはずだよね?
そりゃあゲーム内では可愛い少年かもしれないけれどさ。
というか、本当にゲームのイベントなのか?
リアルな子供には絶対に販売できないやつじゃないか。
「お……お金には困ってないので遠慮いたします……」
「ふむ、そうか……
まぁ高級な衣装に身を包んでいるのだ。
もしやどこぞの貴族の令嬢か?」
「そんなんじゃないですけど、ごめんなさいっ」
僕はさっと立ち上がって外に出る。
男とバラしても良かったのだけど、先日屋敷を訪れた冒険者に混じった少年だと、そうは思われたくなかったのだ。
その点、女物の衣装を着ただけで性別を間違えられるのだから都合は良かったとも言える。
【スノウはスキル:変装1を習得】
シルクの製造方法は、まだよく知られていない世界だった。
おかげで市場は独占し放題。
そんなことをするつもりは無かったから、ギルド内の製造部門には安価で卸してあげた。
そんな部門があるのかって?
そりゃあモノを作って売るための団体はある。
冒険者たちと分けるより、一つの建物に集約した方が色々と都合が良かったのだろう。
ちゃんとオークの皮の件もギルドから通達はあったはずだが、そこに加入していない豚息子が知らなくても仕方ない。
数日して全く騒ぎにならなくなると、豚息子は在庫を売り払いに来た。
当然ギルド価格でしか買い取らないし、まぁ半額くらいにはなったと思う。
「今度からは常に余剰在庫を持っておくよ」
「うん、暮らしに必須なら少しは置いておいた方がいいかもね。
さすがに少しは懲りただろうけど、次もやらないとは限らないし」
ギルドで親父さんと会話をしている。
街の外に出なくなって一週間は経っただろうか?
「街の中でも大人しくできないんなら、もう好きにしていいわよ。
ハァ……私が間違っているのかなぁ……?」
アイズはカウンターで項垂れながらため息を吐く。
僕はアイズから『見た目は大人しそうなお嬢様なのに……』なんて言われていた。
そう、意外と女装が気に入ってしまったのだ。
だって、防御力が高いのだし、みんないつも以上に優しくしてくれるのだもの。
「スノウちゃんいるー?
美味しいケーキを焼かせたんだけど、屋敷に遊びに来ないかしら?」
あの豚息子が、僕目当てにギルドに来ることがなければ……ではあるが。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。
大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。
そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。
しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。
戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。
「面白いじゃん?」
アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
異世界転生してしまった。どうせ死ぬのに。
あんど もあ
ファンタジー
好きな人と結婚して初めてのクリスマスに事故で亡くなった私。異世界に転生したけど、どうせ死ぬなら幸せになんてなりたくない。そう思って生きてきたのだけど……。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる