Ｓ賞の無い世界なんて確実に低評価！ ～異世界行ってもガチャは生きがいなのでやめられません～

生まれ変わり

　神様に選ばれたそうだ。
　それは宝くじに当たるよりもとてつもなく低い確率で、普段回すガチャガチャで大当たりを引き当てるよりも格段に難しい話。

　ハシモトは、新しく異世界で命を授かり今年で１２歳となっていた。
　名をロマーニュ＝ユマンディ。通称ローマ。
　ユマンディ家の次男で、いわゆる辺境伯の息子であった。

「こらっ、ローマ！　お前というやつは、またそんな！」
「いいじゃん！　僕のお小遣いで手に入れたんだからっ！」

　父親、イーオン＝ユマンディは、魔道具を持って走るローマを追いかけて部屋に押し入る。
　魔道具というのは、その名の通り魔法を使える道具であり、魔物や魔法のあるこの異世界でも貴重なものであった。
「小遣いを渡すたびに色々と買ってくるとは思っていたが、それを買えるほどの額を与えた覚えはないぞ。
　一体どこで手に入れたんだ？」
「いや、どこって普通に魔道具ミリアの店でだけど……」

　この世界、最初はいたって普通だったのだ。
　ひのきの棒５ゴールド。
　そういった普通のお店が並び、勇者や魔法使いがお金を払って買い求めていく。

　しかし、ローマとして１０年も生きた頃、娯楽もすくない世界で前世の記憶をつい漏らしてしまったのだ。
『はぁ……せめてくじ引きでもいいから、なにか無いかなぁ……』
　何度目かの小遣いでの買い物中、わずかにお金が足りなくて欲しいものが買えずにいたのだ。

　それを聞いた店主が、くじとは何だと訊ねてきた。

　……それから約３年、くじにとどまらず、ガチャやオリパまでもが異世界に広まっていく。
　そして今日もまた小遣いの１００ゴールドを持って、ローマは街に繰り出したのであった。