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「B賞出ちゃったかぁ……」
引き換え景品の中でめぼしいものはリザードの皮で、加工すると鎧になるのだが正直子供には必要のない素材。
12歳になったローマは冒険者になることも考えていたが、一応は貴族の息子なのでそれも簡単ではない。
だから、魔道具や武具は集めているが、使うことは滅多にない。
毎日かかさずと言って良いほど店に向かうため、足腰はそこそこ鍛えられてしまっているから、なおのこと冒険者も気になってしまう。
そんなローマが気になってしまったガチャが『勇者ガチャ』である。
スキルや魔法の習得は教会でお布施を支払って授かるものなのだが、通常は大人になってから財産のほとんどを失って行う儀式という認識である。
だからスキルもなく冒険者をやっている人は多く、教会での儀式は一種のステータスであるとされているのだ。
そんな一撃大逆転な景品がS賞に入っている勇者ガチャだが、カプセルのサイズが非常に小さいため総数は全く不明である。
1回300ゴールドと安いわけでもなく、さらにはA賞からC賞の当たり枠のいずれも大した景品ではない。
そして、儀式を受けるには100万ゴールドともいわれるハイリスクハイリターンなガチャが稼働して約1ヶ月。
金額的にはおそらくすでに100万以上使われているし、残数も最初から比べると4割程度には減っている。
さすがにこの量を買い占めるわけにもいかないので、当たりが確実に入っている保証は無いのだが、それでもやはり気になって回してしまうローマであった。
その日も雑貨ガチャでハイポーションを獲ったものだから、その代わりに部屋に保管していた安い方のポーションを5つばかし売却した。
その帰り道に5回だけ、と思い回し始めたのである。
1回目はハズレ。
ハイリスクと知って回すのだが、ハズレの場合の景品は何も用意されていないのは寂しすぎる。
さすがに法律に触れるんじゃないかと思っても、ここは異世界なのだから確かめようもない。
2,3回目もやはりハズレであり、その当たりにくさがよくわかる。
ところが4回目。
「あ……引換券入ってる。
やば、マジでS賞だったらどうしようかな……」
他の人が回しているのを見ても、9割以上がハズレだった。
その1割以下の確率を引き当てて、おそらく一個しか入っていないS賞であったなら。
意を決して引換券をめくると、そこには……
『B賞』
人生そううまくはいかない。
まぁB賞でも勝ちは勝ちである。
おそらく数百ゴールド程度の利益でしかないが、勝った時点でやめるという選択肢も時には重要なのである。
「ほら、これが前言ってたやつ。
勇者ガチャ。ねぇやってみようよ」
「うぇ……これカプセルいくつ入ってるんだよ。
当たるわけねぇよ」
そう。今B賞を出したばかりなのだから、そう簡単に当たるはずがない。
ローマも景品の引き換えを行いながら二人の若者の様子を眺めていた。
「一回だけだぞ。って、一回300ゴールドかよ。
100ゴールドじゃねえのかよ……」
もし100ゴールドならば誰かが買い占めているだろう。
ざっと見3000個、30万ゴールド程度であれば儀式を受けたいという者はいても不思議ではない。
渋々金を取り出して筐体に入れる男と、それを見ながら期待している女。
『ガコンッ』
何の変哲もない普通のカプセルを取り出し、男はため息をつきながら開封する。
「お、なんか入ってるぞ」
その言葉がローマの背筋を凍らせた。
本来5回プレイしようと思いまわし始めたのだ。
しかし4回目で当たりが出てしまい、5回目はあえてやめてしまった。
「なんて書いてあるんだ? S……賞?」
「へぇー、とりあえず当たりなんだね、すっごーい」
『すっごーい』ではない。とんでもないのだ。
しかもちゃんと当たりが入ってて、まだカプセルは大量に残っている。
……帰り道、放心状態で雑貨屋に向かうローマ。
「防具に加工するなら2000ゴールド、素材の買取りなら1500ゴールドだね」
「買い取りでお願いします……」
もはや1500ゴールドなど、どうでも良くなってしまうのであった。
引き換え景品の中でめぼしいものはリザードの皮で、加工すると鎧になるのだが正直子供には必要のない素材。
12歳になったローマは冒険者になることも考えていたが、一応は貴族の息子なのでそれも簡単ではない。
だから、魔道具や武具は集めているが、使うことは滅多にない。
毎日かかさずと言って良いほど店に向かうため、足腰はそこそこ鍛えられてしまっているから、なおのこと冒険者も気になってしまう。
そんなローマが気になってしまったガチャが『勇者ガチャ』である。
スキルや魔法の習得は教会でお布施を支払って授かるものなのだが、通常は大人になってから財産のほとんどを失って行う儀式という認識である。
だからスキルもなく冒険者をやっている人は多く、教会での儀式は一種のステータスであるとされているのだ。
そんな一撃大逆転な景品がS賞に入っている勇者ガチャだが、カプセルのサイズが非常に小さいため総数は全く不明である。
1回300ゴールドと安いわけでもなく、さらにはA賞からC賞の当たり枠のいずれも大した景品ではない。
そして、儀式を受けるには100万ゴールドともいわれるハイリスクハイリターンなガチャが稼働して約1ヶ月。
金額的にはおそらくすでに100万以上使われているし、残数も最初から比べると4割程度には減っている。
さすがにこの量を買い占めるわけにもいかないので、当たりが確実に入っている保証は無いのだが、それでもやはり気になって回してしまうローマであった。
その日も雑貨ガチャでハイポーションを獲ったものだから、その代わりに部屋に保管していた安い方のポーションを5つばかし売却した。
その帰り道に5回だけ、と思い回し始めたのである。
1回目はハズレ。
ハイリスクと知って回すのだが、ハズレの場合の景品は何も用意されていないのは寂しすぎる。
さすがに法律に触れるんじゃないかと思っても、ここは異世界なのだから確かめようもない。
2,3回目もやはりハズレであり、その当たりにくさがよくわかる。
ところが4回目。
「あ……引換券入ってる。
やば、マジでS賞だったらどうしようかな……」
他の人が回しているのを見ても、9割以上がハズレだった。
その1割以下の確率を引き当てて、おそらく一個しか入っていないS賞であったなら。
意を決して引換券をめくると、そこには……
『B賞』
人生そううまくはいかない。
まぁB賞でも勝ちは勝ちである。
おそらく数百ゴールド程度の利益でしかないが、勝った時点でやめるという選択肢も時には重要なのである。
「ほら、これが前言ってたやつ。
勇者ガチャ。ねぇやってみようよ」
「うぇ……これカプセルいくつ入ってるんだよ。
当たるわけねぇよ」
そう。今B賞を出したばかりなのだから、そう簡単に当たるはずがない。
ローマも景品の引き換えを行いながら二人の若者の様子を眺めていた。
「一回だけだぞ。って、一回300ゴールドかよ。
100ゴールドじゃねえのかよ……」
もし100ゴールドならば誰かが買い占めているだろう。
ざっと見3000個、30万ゴールド程度であれば儀式を受けたいという者はいても不思議ではない。
渋々金を取り出して筐体に入れる男と、それを見ながら期待している女。
『ガコンッ』
何の変哲もない普通のカプセルを取り出し、男はため息をつきながら開封する。
「お、なんか入ってるぞ」
その言葉がローマの背筋を凍らせた。
本来5回プレイしようと思いまわし始めたのだ。
しかし4回目で当たりが出てしまい、5回目はあえてやめてしまった。
「なんて書いてあるんだ? S……賞?」
「へぇー、とりあえず当たりなんだね、すっごーい」
『すっごーい』ではない。とんでもないのだ。
しかもちゃんと当たりが入ってて、まだカプセルは大量に残っている。
……帰り道、放心状態で雑貨屋に向かうローマ。
「防具に加工するなら2000ゴールド、素材の買取りなら1500ゴールドだね」
「買い取りでお願いします……」
もはや1500ゴールドなど、どうでも良くなってしまうのであった。
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