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貴族の生活

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「ローマ、お前というやつは……
 また街で遊びまわって、少しは剣術でも磨いてみたらどうだ。
 兄のフレックは来年から騎士校が決まったというのに、お前は一体何になるつもりなのか……」
 父に呼び出されて部屋に向かうと、また小言を聞かされることになった。

 兄が騎士の道に進むのは知っていたし、その実力ならば間違いなく受かると思っていた。

「坊っちゃまも勉強なさったらどうですか?
 私も拝見しましたが、フレック様の魔剣さばきはなかなかのものですよ?」
「えー、僕は騎士って性格じゃないしなぁ。
 好きな時に好きな魔物を狩って気ままに生活したいっていうかー」
 メイドのリズにまで言われると、さすがに少し面倒である。
「ですが、冒険者という職はそれこそ剣術に長けていないと容易に命を落としますよ?
 そんなことを言うくらいでしたら、さぞかし腕に自信がおありなのでしょうか?」

 そりゃあもうゲームで得た知識は満載だからな。
 伊達にガチャでゲームソフトを獲ってプレイしているわけじゃない。
 最初の頃はとにかくレベル上げと武器と聞き込みが大事なのだろう?

「僕ならSランク冒険者も目指せるね。
 そうしたらこの街だって魔物の被害は少なくなるし、街道が通れるようになれば流通も増えるし財政も潤うじゃん。
 これって貴族のやりたい国作りってことじゃない?」
「まったく……難しい言葉を並べたらそれっぽく聞こえるとでも思っているのですか?
 貴族の仕事はそんな簡単なものじゃありませんよ」

 正直小難しいことは兄のフレックに任せておきたいと思うローマ。
 前世を含めて約30年、今更政治の話をされても頭に入ってこないのだ。
 というよりも、ガチャ欲に抗えない。

「わかりました。
 そこまで仰るなら試験をしてみたらいいじゃないですか?
 自分は強いんだぞーって見せつけてやってくださいよ。
 そうしたら私も御主人に進言してあげますわ」
「え、本当に?!
 リズ、今の取り消すとか無しだよ?」
「そんな大人気ないことを私はいたしません。
 私もローマ様お付きのメイドですし、その時は精一杯協力してあげますよ」

 それを聞いてニンマリと笑みを浮かべたローマ。
 ガチャガチャと準備をし始めた姿を見て、不安になってしまうリズであった。
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