S賞の無い世界なんて確実に低評価! ~異世界行ってもガチャは生きがいなのでやめられません~

紅柄ねこ(Bengara Neko)

文字の大きさ
8 / 9

戦闘経験ゼロ

しおりを挟む
「ふぅむ……私も長いこと師を務めて参ったが、二回りも歳の違う幼子に本気で戦えと言われるとはな」
 40近いおじさん剣士との模擬戦をさせられることになったローマ。

 リズが父に『完膚なきまでに叩きのめして生意気な性格を矯正してやろう』とでも言ったのではないだろうか?
 そうとでも考えなくては、街で有数のAランク冒険者が本気で戦うことなどあり得ないだろう。

「ま、まぁ良いよ……
 僕だって、別に怠けてたわけじゃないからさ」
 強がりを言ってみせるが、正直言って勝ち目などほぼほぼ皆無。

 試合開始の合図を受けて、まずは魔剣炎帝の曲刀フランバリュザを大きく振りかぶる。
 魔剣を扱うために小さな頃からコツコツと魔力の鍛錬は欠かしていないのだから、そのくらいはお手のものである。

「ローマのやつ、まさか魔剣を使いこなせるのか?!
 儂はてっきり収集癖が治らんだけかと思っておったわ!」
 そりゃあ何も知らないはずの幼児の頃から毎日コツコツと魔力を使い切って、最大量を増やし続けていたから。
 同じ歳で魔剣をマトモに使える者など世界中に数人もいないだろう。

「ほう、威勢のいいだけあって、やりおるわ。
 ではこちらからも参ろうか!」
 ブンと大剣を振る有名冒険者ポルティエッカ。
 その可愛いらしい名前とは裏腹に、豪剣使いとも呼ばれるほどの剛力っぷり。

 風魔剣サイファーを操り、込めた魔力の分だけ力強く放たれる真空波がローマを襲う。
「いやいや! そこまでやらんでもいいんじゃないか?!
 別に我が子を殺せと言うてるのではないんだぞ!」
 焦る父だが、ここは任せて欲しい。
 防御ならば負けるつもりはさらさら無い。

玄武の指輪アミュレット!」
 一口2000ゴールドの神話ガチャで手に入れたS賞景品。
 流石に持っているのもバレたくなくて隠し持っていた秘密兵器。
 こちらも込めた魔力に比例して強力なバリアを作り出す秘宝級の指輪である。

 さすがにリズもそれには驚いたようである。
「坊っちゃん?! そんな物まで、いつの間に……」
「なぁリズよ……あれは盗品ではないのだよな?」
「おそらく。いつものように街のガチャで手に入れたものかと……」
「な、なんという……我が子の末恐ろしさよ……」

 外野はなにかと騒がしいが、防御一辺倒で敵う相手ではないことはよくわかる。
「凄いねポルティエッカさん! じゃあこっちはどうかな?
 闇蛇龍の大鎌ヒュヅァンザよ、刈りとれ!」
 闇属性は幻影魔法とも。
 実態はないが、外傷ではなく心にダメージを与える使い勝手の悪い武器だ。

 見た目はチェーンの腕輪ということもあり、万が一のことを考えて常に身につけていた逸品。

『クォォォンンン……』
 影が弧を描きポルティエッカの胸を切り裂く。
 ズガン、と大きな音は聞こえてももちろん怪我など一切ない。
 効果は戦意喪失がメインなのだが、やはりAランク冒険者ともなると簡単にはやられてくれないようだ。

「ふふ……まさかここまで武に長けておるとは……
 では私も出し惜しみはやめようではないか!
 至上の光剣レーヴァテイン!」

 そもそもポルティエッカの適性は光属性なのだ。
 だから光属性の魔剣を使用するまでは本気ではないということ。
 そんなことはわかっていたのだが、勝てるかもしれないなんて一瞬の慢心が勝負の結果を導いたのだろう。

「あ……アミュレットが負けるとか……」
 バリアは光の剣によって呆気なく打ち砕かれた。
 その時点ですでにローマの戦意の方が無くなってしまったのだ。
 バリアを張るために全ての魔力を注ぎ込み、今その全てが弾け飛んだ。

「ちぇっ……あれだけ自信満々に言ったのに、リズに笑われちゃうなぁ……」
 ローマは泣いた。
 世界は自分が思った以上に広いのかもしれない。
 強い魔剣と多くの魔力があれば、なんでもできると思っていた。

 ……翌朝。
「お前はもう好きに生きるが良い。
 街のことも考えていないわけではないのだろう?」
「え?! お父様、突然なぜですか?」
「……ポルティエッカ殿に言われてな。
 お前を籠の中に閉じ込めるには我が国の損失でしかない、とな」

 その隣ではリズが不満げな表情を見せていた。
 かくして、ローマは冒険者になることを許された。
 しかし、それでも全くガチャ欲は消えてはいないのである。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

処理中です...